フルモデルチェンジした新しい日産リーフに追加された「NISMO」は痛快なEVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
日常の移動をエキサイトメントに変えよう!──新型日産リーフB7 NISMO試乗記
新型日産リーフB7 NISMOの特徴
1.概要
2.エクステリア
3.インテリア
4.居住性
1.概要
2010年に初代モデルが登場して以来、グローバルで約70万台を販売し、電気自動車のパイオニアとして世界の市場を牽引し続けてきたのが日産リーフだ。そのリーフが2026年1月、新世代のEVプラットフォームを採用し、第3世代へとフルモデルチェンジを果たした。
航続距離の大幅な延長はもちろんのこと、洗練されたデザイン、そして最新の先進運転支援技術を搭載し、まさに新時代のインテリジェントモビリティの旗手として生まれ変わった。そして同年7月22日、この第3世代リーフをベースに、日産のモータースポーツ部門であるNISMOが、長年培ってきたEV開発技術とモータースポーツ由来の知見を融合させた最新のロードカーモデル、「リーフ NISMO」が正式に発表され、同日より発売が開始された。
NISMOロードカー共通の開発思想である「より速く、気持ち良く、安心して走れるクルマ」を追求し、ベース車の持つ走りにさらに磨きをかけた1台である。
2.エクステリア
試乗車はトップグレードの「B7 NISMO」をベースに、専用のレカロ製スポーツシートを装着した仕様。車両本体価格は¥7,227,000という設定だ。これに100V AC電源(¥66,000)、NISMO専用の特別塗装色(¥77,000)、調光パノラミックガラスルーフ(¥225,500)のメーカーオプション、さらにはフロントとフロントドアガラスの撥水処理やNISMOフロアマットなどのディーラーオプションが加わり、総額は800万円に迫ろうかという、プレミアムな価格帯の1台である。
試乗の舞台は、横浜市のみなとみらい。高層ビルが林立し、絶え間なくクルマと人が交差する喧騒の中で、果たして「駿足のインテリジェント スポーツクロスオーバー」のコンセプトを掲げる新型車は、どのような走りを見せてくれるのか? 期待に胸を膨らませながら、スマートキーを手にクルマへと近づいた。
目の前に佇む新型リーフ B7 NISMO RECARO装着車のエクステリアは、ひと目見た瞬間から標準モデルとは明らかに異なるオーラを放っており、NISMO感が溢れ出ている。
ボディカラーは、標準のリーフで設定されている4種類に加えて用意された、NISMOロードカーの専用色である「NISMOステルスグレー」と「スーパーブラック」の2トーン仕様。このステルスグレーの色彩が絶妙で、都市の風景に違和感なく溶け込むようなソリッドな質感を持ちながらも、光の当たり具合によって筋肉質なボディラインを鋭く浮かび上がらせ、サーキットの風景に馴染むような存在感を放つ。無駄な装飾を削ぎ落としたストイックな世界観を体現するカラーリングと言えるだろう。他モデルとの差別化がしっかりと図られており、所有する満足感を高めてくれる。
デザインの細部に目を向けると、単なるドレスアップではなく「性能向上のためのデザイン」というNISMOの哲学が至る所に息づいていることがわかる。ワイドで低重心な印象を与えるフロントマスクは精悍で、シャープなヘッドライトの下部に広がるフロントバンパーには、エアガイド機能を持つ専用のコーナーフィニッシャーを装着。これは前方の空気の流れを整え、ボディサイドへとスムーズに導くことで空気抵抗を低減するための空力パーツだ。フロントリップスポイラーには、ボディ全体を貫き、NISMOのアイデンティティであり電動車ならではの力強さと先進性を表現する「アルテリアマグマ」と呼ばれる鮮やかなレッドアクセントカラーが走っている。
サイドビューに視線を移すと、第3世代リーフの特徴であるクロスオーバーSUV的な少し背の高いフォルムが確認できるものの、伸びやかで低重心感を表現する専用のドアロアフィニッシャーが装着されていることで、スポーティな姿勢を強調。フロントのドアハンドルがフラッシュサーフェス化された格納式になっている点も、空力性能の向上と先進的なイメージの醸成に一役買っている。ドアミラーはベース部分がグロスブラックで仕上げられており、そこへNISMOの走りへの情熱を象徴するレッドラインが効かせられていて、エクステリア全体をピリッと引き締める見事なアクセントとして機能している。
足元を引き締めるのは、軽量かつ高剛性を誇るエンケイ製の19インチアルミホイール。グロスブラックに塗装され、スポークの一部にシルバーのアクセントが入り、NISMOのロゴが刻まれたこの専用ホイールは、機能美を想起させる。そこに組み合わされるタイヤは、235/45 R19サイズのミシュラン製「Pilot Sport 5」。高いグリップ力と優れた操縦性を両立したこのスポーツタイヤの性能を、専用のアルミホイールが引き出し、操縦性と走行安定性を向上させる設計だ。
リアに回り込むと、ルーフ後端からさらに後方かつ上方へと延長されたダックテール形状の専用バックドアスポイラーが目を引く。また、リアバンパー下部には船底の形状をした専用アンダースポイラーが装着されており、これらが協調することで、車体後方に発生する空気の渦を抑制してドラッグの低減を実現するとともに、強力なダウンフォースを発生。これらの緻密な専用エアロパーツの恩恵により、基準車から空気抵抗を悪化させることなく、スポーティな存在感と走行性能を両立しているのだ。ひと目でNISMOであることが分かる専用デザインは、見た目からも優れた走行性能や走りの魅力を直感的に感じられる仕上がりである。
3.インテリア
室内は、ブラックを基調としながら、エクステリアと同様にレッドアクセントを施したコーディネーションで、ドライバーが運転に集中でき、かつ高揚感を否応なしに誘う仕立ての空間が広がっていた。
まず目を引くのは、レカロ製の専用スポーツシート。赤と黒のツートーンカラーで仕立てられたこのシートは、中央部分に滑りにくいスエード調の素材を採用し、サイドサポート部分には上質なレザー調素材があしらわれている。前席シートにはレッドパーフォレーションが施され、肩口にはNISMOのクラフトマンシップを表現するロゴの刺しゅうを配置。また、背もたれにはRECAROの文字が深く型押しされている。
実際に腰を下ろしてみると、そのホールド性の高さに驚かされる。サイドサポートがしっかりと張り出しており、太ももから腰、そして肩にかけて、まるでオーダーメイドのスーツのように身体を隙間なく包み込んでくれるのだ。タイトなホールド感がありながら、クッションのストロークは適度に確保されており、決して窮屈さや底付き感を感じさせない。クルマとの一体感を向上させるために、綿密なチューニングが行われていることが肌で感じられる。かなりの横Gがかかっても身体をサポートしてくれるため、サーキットを攻めなくても、日常の交差点を曲がるだけでもその恩恵にあずかることができるだろう。前後スライドは手動式を採用して軽量化を図りつつも、リクライニング機構にはスムースかつ無段階で調整可能なパワーリクライニング機能が搭載されており、より心地よいドライビングポジションの構築をサポートしてくれる。シートヒーターも内蔵されているため、冬場でも快適だ。
高さ調整機能が省かれている点や、サイドサポートの張り出しによって乗降時に少し足を持ち上げる必要がある点は、スポーツシートの宿命として受け入れるべきだろう。むしろ、このクルマに乗り込むたびに特別な空間へといざなわれるような儀式のように感じられ、決してネガティブな要素にはならない。
運転席からの視界は良好で、インパネ周りの仕立ても良い。ダッシュボードやドアトリムには、手触りの良いスエード調の表皮が贅沢に張り込まれており、そこを走る精緻なレッドステッチが高級感を醸し出す。ステアリングホイールは、下部が直線的にカットされたDシェイプデザインの合成皮革巻きステアリングを採用。この合成皮革は「テーラーフィット」と呼ばれるもので、高い耐久性を持ちながらまるで本革のようなしっとりとした触感を持つ。握り心地は良く、知らずに触れれば本革だと錯覚してしまうほど。ステアリング上部には赤いセンターマークが、そして内周にはレッドステッチが施されており、ステアリングを切り込んだ際の舵角を直感的に把握できるよう配慮され、NISMOのクラフトマンシップが表現されている。
目の前のメーターパネルには、専用のグラフィックが用意されており、システムを起動するとNISMOのロゴとともに赤いリングをモチーフにしたパワーメーターが浮かび上がる。これまでのNISMOロードカー同様に、インストルメントパネル周りのフィニッシャーや、赤いパワースイッチなどは専用パーツが採用され、特別感に満ち溢れている。
近年、走行性能に特化したスポーツモデルの中には、軽量化やコストダウンの影響から内装のプラスチック感が目立ち、色気のない空間になってしまっている車種も散見される。しかし、リーフ NISMOは違う。素材の選び方や色使いにおいて妥協がなく、700万円を超える価格設定に見合うだけの、満足できる質感と上質な空間が確かにここにはあった。
4.居住性
ドライバーズオリエンテッドな前席から後席へと移動してみる。
全長4415mm、全幅1810mm、全高1550mm、ホイールベース2690mmのディメンションを持つボディは、身長170cmの人間がフロントシートを適切なポジションに合わせた状態でも、後席の膝元や頭上にゆとりを確保。
後席の乗員からも、前席に装着された赤と黒のレカロシートの背面が視界に入り、このクルマが特別なスポーツモデルであることを後部座席でも共有できるのが心憎い。装備面も抜かりはなく、後席用のエアコン吹き出し口はもちろんのこと、シートヒーター、USB Type-Cポート、そしてカップホルダー付きのセンターアームレストが標準で備わっており、居住性と快適性は高いレベルにある。
見上げれば、頭上には広大な調光パノラミックガラスルーフが広がっている。ボタンひとつで透明と白濁を瞬時に切り替えることができる最新の遮熱機能付き装備は、採光性を保ちながら直射日光の眩しさや熱を効果的に遮ってくれるため、夏場の強い日差しの中でも車内を快適に保つことができる。光を取り入れても車内が暑くなりすぎることがないため、実用性に優れた装備だ。
ラゲッジルームの容量も、ベースとなったリーフと遜色ない十分な広さを確保。床下には2段階に高さを調整できる便利な収納スペースが設けられており、充電ケーブルや洗車道具などをすっきりと収めることが可能だ。また、ラゲッジサイドにはオプションの100V AC電源(1500W)のコンセントが装備されており、アウトドアレジャーでの家電製品の使用や、万が一の災害時の非常用電源として役立つだろう。リアシートは分割可倒式となっており、長尺物を積載する際にも柔軟に対応できるなど、使い勝手は申し分ない。
ただし、ひとつだけ気になった点がある。それは、テールゲートの開閉が手動式である点。閉める際にはそれなりの力が必要となる。車両本体価格が700万円を超え、プレミアムな位置づけにあるモデルであることを考慮すれば、ここは電動式のパワーテールゲートを標準装備にしてほしかったのが正直な感想だ(次のページへ続く)。
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