実物のレーシングボディパーツを入手し、23号車のクラリオンカラーをR33で再現
父親が趣味で走らせていたRCカーは、白とピンクに塗られたクラリオンカラーのル・マンマシンだった。その色を実車で再現したのが、日産「スカイラインGT-R(R33)」に乗るオーナーである。ネットオークションで落札した本物のレーシングボディパーツを組み込み、1996年のル・マン24時間を走った日産「NISMO GT-R LM」23号車の姿を、公道で走れるかたちに仕立てている。
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1996年のル・マンを走ったクラリオンカラーのNISMO GT-R LMとは
このクルマをひと目見て、ル・マン24時間耐久レースに参戦したNISMO GT-R LMだと見抜いたなら、かなりのモータースポーツ好きといえるだろう。
日産のル・マン挑戦の歴史は古い。1980年代にはグループCマシンを投入し、世界の強豪を相手に激戦を繰り広げた。1990年を最後に日産はル・マンへのワークス参戦をいったん中断し、その後、再び世界最高峰の耐久レースへ戻る機会をうかがっていた。
そして1995年、日産は約5年ぶりとなるル・マン参戦を発表する。かつてのグループCのような純粋なプロトタイプレーシングカーではなく、市販車をベースにレーシングモディファイを施したGTカテゴリーに照準を合わせた。ベース車両に選ばれたのが、当時の日産を代表する高性能スポーツモデル、スカイラインGT-R(R33)だった。
とはいえ、市販車にロールケージやレーシングパーツを追加するだけで、ル・マン24時間という過酷な舞台を戦い抜くことはできない。そこで日産はNISMOに特別なロードゴーイングカーの製作を依頼する。スカイラインGT-Rを徹底的にモディファイし、ル・マン参戦を見据えた公道走行可能なモデルとして完成したのがNISMO GT-R LMであり、公認取得用のロードカーは世界で1台だけ英国で登録された。
今回取材したオーナーの須澤 巧さんの愛車は、そんな日産のル・マン復帰を象徴するNISMO GT-R LMのフルレプリカだ。モチーフとしたのは、1996年に白とピンクの斬新なカラーリングで登場したクラリオンカラーのNISMO GT-R LMである。この年、日産は22号車の鈴木亜久里/影山正彦/近藤真彦組と、23号車の星野一義/鈴木利男/長谷見昌弘組という2台体制でル・マンに挑み、23号車は総合15位・クラス10位で完走を果たしている。
父親のRCカーがきっかけ、18歳で手に入れた日産スカイラインGT-R(R33)
須澤さんがレプリカのモチーフとして選んだのは23号車だ。その背景には、幼い頃から見続けてきた父親こだわりの「愛機」の存在が大きかった。
取材時に29歳だった須澤さんにとって、NISMO GT-R LMがル・マンで活躍した1990年代半ばは、まさに自身が生まれた頃にあたる。当時、根っからのクルマ好きだった父親は、趣味でラジコンにも熱中していた。専用コースへ持ち込んで走らせていたラジコンこそ、1996年モデルの白とピンクをまとったクラリオンカラーのNISMO GT-R LMだったのである。
父親が大切にしていたそのRCカーを見ながら、須澤さんは育った。やがて自身もクルマ好きとなり、ひとつの思いを自然と抱くようになる。
「いつか、このクルマを実車で作ってみたい」
18歳で免許を取得すると、すぐに購入したのが現在のスカイラインGT-R(R33)だった。中古車相場が高騰する前で、10代の須澤さんでも何とか手に入れられた時代である。
購入後しばらくはノーマル状態で楽しんでいたものの、頭の中にあった完成形は明確だった。それは、父親のRCカーで知ったクラリオンカラーのGT-R LMレプリカである。
オークションで落札した本物のリアフェンダーと希少なNISMO LM GT1
当初は発泡ウレタンからワイドボディパーツを成形することも考えていた。製作には膨大な時間と労力が必要となるため、なかなか実行に移せずにいた。そんなある日、インターネットオークションで、当時ユニシアジェックスのマシンに使用する予定だったという本物のリアフェンダーが出品されているのを見つける。
「まさか本物では…」
半信半疑のまま購入し、出品者に詳しく話を聞いたところ、正真正銘のレーシングカー専用パーツだった。しかも、リアフェンダーだけではない。フロントフェンダーやバンパーをはじめ、ボディパーツ一式がそろっているという。願ってもない話で、自分の最終目標である夢と仕様を説明し、粘りの交渉の末、すべてのパーツを手に入れることに成功した。
いまでは入手困難となった貴重なパーツだけに、須澤さんはそれらをそのまま装着するだけでなく、マスターとして型を起こすことを決意する。万が一破損した場合にも、複製したパーツで補修できるようにした。
ボディはフロントバンパー、ボンネット、前後フェンダー、サイドステップ、トランクなどを本物のパーツと型起こしパーツで構成しており、純正の形状を残す部分はごくわずかしかない。見た目だけでなく成り立ちまで本格的なLMワイドボディへと仕上げられている。
足元にはNISMOのホイール「LM GT1」を組み合わせる。サイズは18インチのなかでも最大のものを選択した。これも希少価値が高まり、程度のよい個体は簡単に見つからない。
クラリオンカラーの再現には、ラッピングとカッティングシートを使用した。ただ色を合わせるだけではなく、当時のスポンサーステッカーまで製作し、貼り付け位置に至るまで実車を忠実に再現している。
マフラーは実車と同じ左サイド出し、次はエアロミラーを3Dプリンターで製作
エンジンはエアクリーナーとマフラーを交換した吸排気系チューンが中心となる。とはいえ、外観だけのレプリカではない。マフラーは本物のレーシングカーと同じく左サイド出し仕様とするなど、細部にも徹底したこだわりが込められている。
今後は、純正のままとなっているドアミラーも、実際のル・マン仕様と同じエアロミラーへ変更する予定だ。ワンオフ製作が必要となるものの、いまは3Dプリンターを活用することで再現できると須澤さんは話す。
父親が作った1台のRCカーをきっかけに知ったクラリオンカラーのNISMO GT-R LM。そのクルマを追いかけるようにレースカーの世界を知り、さらに偶然の出会いから本物のレーシングカー用ボディパーツまで手に入れた。そして、それを自分のR33へと受け継いだ。
幼少期に父親のRCカーを見て抱いた憧れと、自身がクルマ好きになってから積み重ねてきた情熱、その2つが1台のR33に凝縮されている。少年時代に夢見た「いつか本物を作りたい」という思いは、長い年月を経て実車というかたちになり、いまも進化を続けている。
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みんなのコメント
元にして型をおこしたとは中々に頭脳派だなあ