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平成の怪物くんアルファ ロメオ「SZ」と「RZ」の令和での人気を探る

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平成の怪物くんアルファ ロメオ「SZ」と「RZ」の令和での人気を探る

■バブル末期に現れた「怪物」とは?

 クラシックカーおよびコレクターズカー・オークション業界において、最大手の一角を占めるRMサザビーズ社は、2020年7月に「OPEN ROADS」と銘打ったオンライン限定オークションを、ヨーロッパ支社および北米本社の双方で相次いで展開。それぞれ「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」、「NORTH AMERICA」と名づけられた。

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 このオークションでVAGUEが注目したのは、アルファ ロメオのヤングタイマー・クラシック2台。同じ「ES30」のコードネームと「怪物」のニックネームを分け合うリアルスポーツカー「SZ」と「RZ」である。

 大西洋を挟んだふたつのRMサザビーズ社でおこなわれた「OPEN ROADS」オークションにおいて、クローズドとロードスター、2台のES30にはいかなる審判が下されたのか。また、どちらが高いプライスをつけたのだろうか。

●1994 アルファ ロメオ「SZ」

 まずは、2020年7月14日-22日まで開かれた「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」に出品された1994年型SZについて、説明しよう。

 1989年のパリ・サロンにてワールドプレミアに供されたアルファ ロメオSZは、アルファ ロメオ「75」のレーシングバージョン「75 IMSA」からシャシを流用し、アルファ社内のレーシング部門スタッフが開発した伝説のスーパースポーツである。

 車名SZの「Z」は、カロッツェリア・ザガートの頭文字である。しかし、ボディのデザインワークはフィアット・グループの「チェントロスティーレ(デザインセンター)」が手がけ、ザガートはボディ/インテリアのコーチワークのみを担当。その奇怪かつ魅力的なスタイルから「Il Mostro(イル・モストロ=怪物)」と呼ばれた。

 でもSZの真価は、外見よりも中身にある。トランスアクスルFRレイアウトや後輪にド・ディオン・アクスルを採用するなど、もともとは1972年発表の「アルフェッタ」に端を発する高度なメカニズムがもたらしたスーパーハンドリングこそが、このクルマのキャラクターを決定づけていたのだ。

 アルファ ロメオにとって、そしてザガートにとってもターニングポイントとなったSZは、1991年末までに1036台のみが、ミラノ近郊のザガート社ファクトリーにて限定生産されたといわれている。

 しかし今回のオークションに出品されたSZは、公式WEBカタログで「1994年型」を謳っている。この年式は、初登録年次に即したものである。

 シャシナンバーから、1989年ないしは1990年の生産とされるこの個体は、完成ののち長らくガレージ内に保管。1994年になって、初めてイタリア国内で登録されたという。

 しかも、その後も「箱入り娘」状態は続き、現在に至るまでの走行距離は1300kmにも満たないとのことなのだ。

 その結果として得られたのは、あたかも新車のようなコンディションである。アルファ ロメオES30系、特にSZのシートは風合いの良いソフトなレザーを使用していたせいか、長年乗っていると経年劣化が激しいことで知られている。しかしこの個体は、四半世紀以上も前に生産されたとは思えないほどに美しいコンディションが、内外装はもちろん、エンジンルームや下回りでも徹底されている。

 このコンディションと来歴によほどの自信があるのか、RMサザビーズ社と現所有者は、10万5000-12万5000ユーロという、かなり強気のエスティメートを設定していた。

 ところが実際の競売に入ると、入札価格は7万7000ユーロ(邦貨換算約970万円)まで上昇したものの、そこで競売は締め切り。オークションハウス側に支払われる手数料を合わせても、現オーナーとの協議によって設定していたリザーヴ(最低落札価格)には及ばず、「Still For Sale(継続販売)」となってしまったようだ。

■走行距離は落札価格にどれくらい影響するのか?

「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」が無事コンプリートとなった翌日、7月23日にスタートし、同月31日に締め切りを迎えた「NORTH AMERICA」オークションでは、もう一台のES30、アルファ ロメオRZが出品された。

●1993 アルファ ロメオ「RZ」

 アルファ ロメオRZは、SZのファストバック・ルーフを小さなソフトトップに置き換えるとともに、ウィンドシールドも潔くローカットした、ストイックなロードスターだ。

 アルファ ロメオ主導で開発されたSZに対し、RZの生産化についてはカロッツェリア・ザガート側の意向が強く働いたとされており、1991年に「SZの生産終了後に350台を限定生産」という生産計画とともに、東京モーターショーにて発表された。

 ところが、実際の生産台数は1993年7月までに278台(ほかにも諸説あり)で終わったともいわれている。

 デビューの段階から日本とは浅からぬ縁のあったRZだが、今回の出品車両は日本で長らく過ごした個体であることがWEBカタログに記されている。その記録によると、1993年4月30日に完成したこのRZは新車として日本に輸出されたのち、1995年9月に日本人のファーストオーナーにデリバリーされたとのことである。

 肝心のプライスだが、こちらは北米主導のオークションなので、通貨はドル建て。エスティメートの段階から、「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」のSZよりは遥かに安価な6万-8万ドルに設定されていたものの、これは現代のマーケットにおけるSZとRZの適正な評価に即した価格差ともいえよう。

 もともとの生産台数はSZよりも遥かに少なく、しかも国際マーケットではクローズドよりも評価が高い場合の多いオープンモデルながら、少なくとも現状におけるRZの人気と相場価格は、SZよりも若干劣るようなのだ。

 7月31日のオークション最終日では、5万6000ドルまで上昇したところで入札は終了。オークションハウス側に支払われる手数料を合わせれば、なんとかエスティメートに届く、6万1600ドル(邦貨換算約654万円)という落札価格となった。

* * *

 もう一台のSZは流札に終わってしまったので、直接比較するのは難しいかもしれないのだが、今回のRZにつけられたプライスは、ここ数年の相場を勘案してもかなりリーズナブルといえるかもしれない。

 ただし、この価格差にはRZとSZの人気差以外にも、重要なファクターがあったようだ。それはクラシックカーのみならず、すべてのユーズドカーにおいて価格を左右する「コンディションの差」である。

 この個体は、前述のとおり日本国内の個人オーナーのもとで2014年まで過ごし、その後は日本のディーラーを介して2018年にアメリカに移動。現在に至るまでに1万5258kmの走行距離を計上しているという。

 公式WEBオークションカタログの写真でも正直に示されているが、本革シートやコンソール周辺、あるいはステアリングホイールにも、走行距離からすれば至極当然な使用感もあり、プライスを抑える理由となっているのは間違いあるまい。でも、それは順当に乗られてきた歴史の証明……、といえなくもないだろう。

 一般的な人気ではSZに敵わないものの、個人的にはRZも「憎からず想う」筆者としては、今回のオークションにおける落札価格が、なかなかお買い得にも感じられてしまったのである。

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みんなのコメント

3件
  • 現行プリウスのデザインモチーフは多分これ、月とすっぽんだけど、
  • それぞれ30年近く前の車が、1300kmしか走っていないから「新車同様のコンディション」、15000km走っているから「順当に乗られてきた歴史の証明」とは笑わせる。前者はまともに走れる様にするのに相当手を入れる必要があるだろうし後者はまともに走れなくなったから乗らなくなった可能性が大きい。まぁ純粋にコレクターズアイテムで置物としての価値や転売目的なら動こうが動くまいが気にもならんのだろうが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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