ドライバー育成。かつてはカートや小排気量ワンメイクカテゴリーで腕を磨き、ステップアップを図るのが一般的だった。ところが、ゲームの世界からリアルの世界へ羽ばたくケースがここ数年で急激に増加。そして、ラジコンの世界からもリアルワールドに足を踏み入れる逸材までもが現れた。4月5日に本番を控えている直前、本人に直撃した。
文:ベストカーWeb編集部 鈴村朋己/写真:池之平昌信
一度は廃車寸前!? [S15型シルビア]で猛者たちに[挑戦状]! ラジコン育ちが[D1ライツ]に出るだとぉぉ!!!!!
【画像ギャラリー】S15シルビアとドリフトって相性抜群!!! D1ライツ実戦仕様を隅々までじっくり!!!!!(48枚)
タイムスリップ!? Z世代が往年のスポーツカーでドリフトに熱中
日光サーキットでキレのあるドリフトを披露していたRX-7
冬の厳しい寒さが静まり、突然暖かくなってきた。春の訪れの合図である。春は出会いと別れの季節。同時に、新しいことにチャレンジするタイミングともいえる。
花粉が舞う3月25日。ドリフトの聖地・日光サーキットでは、平日にも関わらず多くの人がドリフトを楽しんでいた。
目の前を駆け抜けるのは、昭和と平成を代表する日本のスポーツカーたち。まるで30年前にタイムスリップしたかのような不思議な感覚に陥った。
だが、ステアリングを握っているのは20代の若者たちだった。そして、参加者の多くが目をキラキラと輝かせながら会話を楽しんでいる。これぞ、日本のカーカルチャーといった素晴らしい光景だ。
日光サーキットに大勢の若者が集った理由。それは、日産栃木自動車大学校の卒業生たちが、毎年サーキットを貸切って実施しているイベント日だったからだ。
その中で、イベント主催者として指揮を取りながらも、自らもS15型シルビアで熱心に走行を重ねているひとりの青年がいた。
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人生を大きく変えたラジコンとの出会い
自らが運営として走行会の指揮を執る伊藤さん
彼の名前は伊藤充輝。日産栃木自動車大学校の卒業生で、現在は日産オートモティブテクノロジーで自動運転技術のテストドライバーを務めている一方、今年からD1ライツへの参戦が決まった26歳だ。
伊藤さんのお父様は、ベストカーを愛読するほど(ありがとうございます!)クルマ好き。同時にグランツーリスモをプレゼントとする英才教育っぷりで、伊藤さんは小さい頃からクルマの沼にどっぷりと浸かったという。
そこからイニシャルDなども見ていたという伊藤さん。この時から、ドリフトに興味を持ち始めた。
「とにかくドリフトがしたかったんですよね。小学生の時、近所にラジコン専用のサーキットがあるのを目にしたときに思ったんです。これやりたいって! 父親に買ってもらって、ラジコンライフがスタートしました」
本気でラジコンと向き合い始めた伊藤さん。いつしか娯楽としてではなく本気で取り組むようになり、高校生になったタイミングで大会に出場するようになった。
「全国シリーズに向けての選考会をパスすると、本番でいきなり優勝できたんです。この結果を受けて、自分を評価してくださるラジコンのパーツメーカーがスポンサーについてくれたりと、テストドライバーとしても活動していくようになりました」
ラジコンと実車のドリフト競技はスケールの違いこそあるものの、レギュレーションや採点方法は同じ。単走で走らせて採点、追走で勝負を決めるといったスタイルである。
実際、ラジコン大会から実車へとステップアップしたライバルの存在が、伊藤さんの魂に火をつけた。
「一緒に同じ場所にいた人たちが先に実車の世界でも活躍しているのを見て、自分にもできるはずだと強く思いました。ただ、免許を取れる年齢になるまではラジコン1本に集中して結果を残そうと決意しました」
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実車でもテッペンを目指して
学生時代にS15型シルビアを手に入れた伊藤さんはドリフト競技には本格的に挑戦することに
ラジコンで経験を積んだ伊藤さんは、日産栃木自動車大学校へ入学。理由は、クルマの仕組みの理解と自分の手でセッティングができるようになるためだったという。そして、ついに実車デビューを果たせるタイミングがやってきた。
「学生限定の全日本学生ドリフト王座決定戦が開催されていたので、優勝を目標に実車で走り続けました。優勝はできませんでしたが、1桁代(約130台中)までは残れたので、社会人になったら本気で取り組もうと決意しました」
そこから日光サーキットで開催される大会には積極的にエントリーした伊藤さん。参戦2年目となった2023年には、日光ドリフトビクトリーでは一度優勝も飾り、見事シリーズチャンピオンに輝いた。
また、D1地方戦にも並行参戦。そこで好成績を収めた伊藤さんは、悲願のD1ライツ出場権を手に入れたのだった。
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ラジコンと実車で重なる共通点
華麗なドリフトを決める伊藤さん
ラジコンから実車へのステップアップ。どちらも自分で操る点は共通しているものの、スケールがまったく違う。ラジコンでドリフトする感覚に慣れている伊藤さんにとって、実車でドリフトを行うことに戸惑いはなかったのだろうか。
「まず、今のドリフトってすごい切れ角を出すので、足回りも最大限のパフォーマンスが発揮できるようにセッティングするのですが、同じことをラジコンでもやっています」と伊藤さん。
「最初に乗ったクルマは最低限のLSDと車高調しか入っていないほぼ純正のクルマだったので、思うようにハンドルが曲げられず苦労しました。裏を返すと、ラジコンの方がD1マシンのレベルに等しかったというわけです」
「ただハンドルを切るタイミングやサイドブレーキ時にクラッチを切るタイミングなどは、ラジコンで身に付いた技量だったので、少し練習を重ねて切れ角をアップしたら、頭で思い描くように動かせました。あ、ラジコンじゃんって思いましたね!」
伊藤さんはラジコンの大会に出場した経験のおかげで、実車の大会はあまり緊張しなかったとも話してくれた。
「ラジコンの大会って小さなコースがあって、その向かい側には大勢の観客の姿が目に入ります。MCの声も聞こえるなか、失敗したら終わり。ものすごいプレッシャーなんです」
「一方で実車は、GOと言われた瞬間にアクセルを踏むだけ。周りの音は聞こえないし、自分の世界に入り込めるので、わりとリラックスした状態で臨めているのが良いですね。ラジコンの大会ってホント緊張するんですよ!」
前述したように、大会の流れやマシンセッティングも共通する部分が多いという伊藤さん。ラジコン大会出場で得た知見は、実車でも存分に活かされているようだ。
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念願叶って手に入れたD1ライツ参戦への乗車券
デイリーユースから競技車両へ。S15型シルビアは伊藤さんの人生そのもの
さて、伊藤さんがD1ライツの相棒を務めるのはS15型シルビア。免許取得直後から所持しており、もともと通学メインの日常使いだったという。
ドリフトで大会デビューしたタイミングも同じで、2025年目で相棒歴は8年目を迎えたが、一度は再起不能になってしまった。
「学生ドリフト王座決定戦の時にクラッシュしてしまって。その後、エンジンブローもしてしまって1年半くらい乗れなくなってしまったんですよね」
しかし伊藤さんには、その試練を共に乗り越えてくれる心強い仲間に出会った。
「きっちりと修理するとお金がかかってしまい、学生の自分にとっては痛い出費でした。そんな時に学校の先生が手を差し伸べてくれました。わからないことは先生に質問して、放課後にエンジンの組み直しと最低限の修復作業を行いました。先生には感謝です」
TEAM miyaseimitsuの一員としてエントリーする
支えがあって競技車両として第2の人生を歩み始めたS15型シルビアは、伊藤さんとともにD1ライツ参戦の切符を勝ち取った。そして4月5日から6日に、2025年シーズンが開幕。舞台は伊藤さんが走行を重ねている日光サーキットだ。
「まずは目の前にいるD1ライツに集中していきたいです。モータースポーツってどんなスポーツよりもお金がかかりますし、自分ひとりではどうにもできない部分があります。結果を出して、継続して活動が続けられるように。せっかくのチャンスもモノにしたいです」
ラジコンからリアルの世界へのステップアップ。ここ数年増えてきている、バーチャルからリアルへの進出と同様に、新しいムーブメントのひとつになっていきそうな予感だ。
ライバルたちとキャリアは異なるが、実績を残してチャンスを掴んだ逸材。同じフィールドに立つことが決まった瞬間から戦いはスタートしている。一体彼は、どのような時間を刻んでいくのだろうか。
ついに幕を明けたD1ライツ編の物語。若者の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
伊藤さんの活動はこちらから
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