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【試乗】フェアレディZの魅力を再確認、Z34型が目指した道は間違いではなかった【10年ひと昔の新車】

掲載 更新 7
【試乗】フェアレディZの魅力を再確認、Z34型が目指した道は間違いではなかった【10年ひと昔の新車】

2008年12月1日に発表されたZ34型フェアレディZ。Motor Magazine誌はその市販前のプロトタイプをテストコースで試している。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年1月号より)

より軽量で、走りを楽しめるスポーツカーを目指して
Zの復活。それは日産の復活の象徴でもあった。2002年にデビューしたZ33型フェアレディZは、「カッコ良くリーズナブルなスポーツカー」というZの原点に立ち返り、日本で、そしてアメリカはじめ世界で大ヒットとなる。あれから6年。進化した次の世代に出会うことができたということは、Zが、そして日産が辿ってきた道は間違いではなかったということを示している。

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Z34の型式で呼ばれる新しいフェアレディZは、現行モデルのコンセプトをさらに突き詰め、よりコンパクトで、より軽量であることを開発目標に掲げている。絶対的な動力性能という面はGT-Rに任せて、Zは最新レベルの安全性、環境性能などを満たしながら、あくまで走りを楽しめるスポーツカーとして、迷わずその道を邁進できたというわけだ。

その意気込みはインパクト十分な外観にあふれんばかりに表れている。Zらしさと新しさを融合させたというそのフォルムは、短いホイールベース、リア寄りのコンパクトなキャビン、大きく張り出したマッシブなフェンダーなどによってさらにアグレッシブに進化。ルーフラインがリアタイヤの真上に降りて、リアタイヤの力強い存在感を際立たせているのが印象的だ。

スリーサイズは現行型より65mm短く、30mm広く、10mm低い。ホイールベースに至っては何と100mm短縮された。全幅の拡大は275サイズのリアタイヤを収めるためだ。

ブーメラン形状の前後レンズやフロントフェンダーのウインカー一体型エンブレムなどディテールも凝っている。しかし、それが際立つのも凝縮感あふれる、いかにもFRらしいプロポーションあってこそ。鍛えられた肉体の美しさ、機械としての色気といったテーマは饒舌に表現されていると言えるだろう。

インテリアも、素っ気なかった現行モデルの初期型を思えば、ちょっと煩雑ではというほど細部まで作り込まれている。クオリティもこれなら不満の出る余地はないはず。室内スペースは、全高に合わせて着座位置も下げるなどの煮詰めのおかげで、とくに不足とは思わなかった。

そして実際そのシートに腰を沈めて異形のハンドルに手を添えると、煩雑に思えていた部分は視界から消え、運転に必要な情報だけが目に飛び込んできた。なるほど、この辺りもよく練られているのである。

絶大な安心感を持ってコーナーへ飛び込める
今回、テストコースで乗ることができたプロトタイプはすべて6速MT仕様。ギアを1速に入れクラッチを繋いだ途端に感じたのは、現行モデル以上に力強いリアの蹴り出し感である。ホイールベースの短縮分は、ほぼすべてドライバーより後方。つまりリアタイヤがドライバーの腰の位置にグッと近づいているのだ。

排気量3.7L、連続可変バルブタイミング機構のVVELを搭載して最高出力336psを発生するVQ37VHRユニットは、低速域から力強く、そして低音で吠える。駆動系の剛性感が高く、這うような速度でもギクシャクすることはない。2速へシフトアップ。2400~7000rpmという幅広い回転域で37.2kgmの最大トルクの約90%を発生するだけに、加速は迫力満点だ。

そこには軽量設計も効いている。1500kgを下回る車重は、ほぼ現行モデル並み。安全や環境への対応等々で放っておけば重くなっていたはずの、ざっと100kg以上を取り戻すべく、モノコック自体軽くされた上にアルミ製のボンネットフード、ドア、ハッチゲートを採用するなど軽量化が徹底された賜物だ。

5000rpm前後を境にさらに勢いを増すエンジンを、7500rpmのリミットまで引っ張って3速へ。回転数は5500rpmまでドロップする。近づくコーナーに向けてブレーキング、そしてシフトダウンという時に効果を発揮するのが、新機軸の何とMTと組み合わされたシフトダウン時の自動ブリッピング機能である。

最初は思わず右足でアクセルを煽ってしまうが、慣れてくると右足はブレーキングに集中することができる。特筆すべきは、シフトダウン後のエンジン回転数がレブリミットに差し掛かるギリギリまで、しっかり機能してくれること。もちろんMTだけに、ミスすればオーバーレブの危険もあるが、MTとはそもそもそういうもの。ここで警告音が鳴ったりしたら興ざめというものだろう。ちなみにこの機能、キャンセルも可能だ。

そしてコーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと、その手応えはまさに抜群である。ショートホイールベースだけにスタビリティ確保のためリアはやはり横剛性が大幅に高められているといい、それだけに挙動の安定感、ソリッド感は非常に高く、絶大な安心感をもって飛び込んで行ける。

従来と同じ速度なら、曲がるのはより楽。さらに高い速度域でダラッと切っていけば、確かに鈍く感じる部分もあるが、メリハリ良くターンインするのを心がければ、いかにもショートホイールベースらしく自分の腰の辺りを中心にコンパクトに旋回して行ける。

そういう意味で、挙動全般は若干シビアと言えなくもない。しかし、Zはスポーツカー。これぐらい歯ごたえがあっていい。大丈夫。もし失敗した時も挙動変化は最小限だし、何よりうまく決まれば爽快な一体感を味わえるのだから。

テストコースでの試乗だけに断片的なことしか言えないが、乗り心地は硬め。捻り剛性を40%高めたというボディはカッチリしているが、さすがにリアの275サイズの19インチタイヤは軽量・高剛性の鍛造ホイールをもってしても、それなりの突き上げを許す。18インチのフロントもチョロチョロと進路を乱しがちだ。しかし、この走りのためなら十分に許容できる範囲だろう。

コンパクト化と引き換えにした部分はないのだろうか。室内は前述の通り、それなりにタイトとは言えクオリティの向上や収納スペースの増加などによって居心地は悪くない。現行モデルでは荷室を横断しているタワーバーが隅に移動されたのも朗報。タワーの張り出しは残るものの、それでもかなり使いやすくなった。これも最初に書いた通り、アピアランスにも寂しさはない。むしろ迫力はさらに増している。つまり失ったものは何もないと言っていい。

得たものは大きい。何より、まだプロトタイプにしてこの走りだ。ちなみにATは7速へと進化し、1000rpmという低回転域からのロックアップによりダイレクト感を獲得。しかもGT-Rと同デザインのパドルシフトが付き「もっともMTライクなAT」になっているというから、そちらも楽しみである。

昨今、市況はますます厳しさを増しているが、本当に魅力的な、そして他に代わるもののない「本物」のプロダクトは、必ずや支持されるはず。新型フェアレディZ、市販の暁にはマーケットを大いに盛り上げてくれると確信した次第だ。(文:島下泰久)

[ アルバム : Z34型フェアレディZ プロトタイプ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

7件
  • Z34はZ33と違ってモータースポーツのイメージがあまりないのが痛いところ。

    逆にZ33はBNR34の引退によって空いたJGTCの席に転がり込めたのは大きかった気がする。
    Z33新車当時スーパーGTの意匠を纏ったバージョンニスモは街でよく見かけたが、あれはカッコ良かった。
  • Z32からダサくて、Zなんて思ってない。
    Z31までは良かったのに。

    Z32なんて鼻ペチャのデブ。
    Z33以降は短足腰回りデブ。
    どこが、貴婦人やねん。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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