スーパーGT第4戦富士で、ホンダのHRCプレリュードGTは導入3戦目で初勝利を飾った。ライバルのサクセスウエイトが重くなってきたタイミングでの優勝であるため、HRC(ホンダ・レーシング)の開発陣も決して慢心はしていないが、それでも取り組んできた成果が形として表れたことは、失われかけていた自信を取り戻すきっかけになりそうだ。
2年間で2勝に終わったシビック・タイプR-GTに代わり、今季からプレリュードをベースにしたニューマシンを投入した5台のホンダ陣営は、序盤2戦は大いに苦しんだ。開幕戦岡山は6位、7位、10位、11位、13位。第2戦富士も5位、8位、9位、11位、12位という結果に終わり、ライバルに太刀打ちできず。HRCでスーパーGT車両の開発を率いる徃西友宏ラージ・プロジェクトリーダー(LPL)も「地力のパフォーマンスが足りていない」と厳しい表情であった。
■“ホンダを背負いし者”によるアツい首位攻防。STANLEY vs ARTAはタイヤチョイスが勝負の鍵に|スーパーGT第4戦
第3戦セパンの順延に伴い、3ヵ月のインターバルを経て行なわれた第4戦に向けては、トヨタ、日産の計9台の内6台が28kg以上のウエイトを積んでいるのに対し、ホンダ陣営は最も重い16号車ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTでも22kgだった。ただ前戦での苦戦ぶりからすれば、ウエイトの軽いスープラやZにポールや優勝を掻っ攫われてもおかしくない……そんな状況だった。
しかし迎えた予選では8号車ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT、100号車STANLEY HRC PRELUDE-GT、17号車Astemo HRC PRELUDE-GTでトップ3をがっちり固めた。決勝でも100号車STANLEYと8号車ARTAが追いすがる37号車Deloitte TOM’S GR Supraを振り切り、ワンツーフィニッシュを飾った。
インターバルの間にHRCは、開発拠点のHRC Sakuraに各チームのエンジニアやドライバーを招き、シミュレータセッションなどを通して改善を進めてきたという。現在のGT500ではシーズン中の空力・エンジンのアップデートができないため、「空力の使いこなし、サスペンションセッティングの見直し、タイヤ選択の見直し、選んだタイヤをしっかり使い切る手法」などなど、様々なアプローチからパフォーマンスアップに取り組んできた。
徃西LPLは、レース後にドライバーから「レース中のブレーキングや高速コーナーに戦闘力があった」というフィードバックを受けていると話す。実際、ホンダ陣営としては空気抵抗をできる限り増やさない範囲内でダウンフォースを出せるような取り組みをしてきたという。
「セットアップの合わせ込みの範囲で、前回まで行けなかったようなブレーキングができたという意味では、ブレーキング時のダウンフォースがしっかり出せるようになったか、もしくはタイヤの持ちが改善されて、他社さんと比べて常にブレーキングで勝っていたという印象を持ってくれたのかなと。セットアップとタイヤチョイス、タイヤの使い方がうまくなってきたのかなと思っています」
また5月の富士戦では16号車ARTAを除いたブリヂストンユーザー3台が苦しんだピックアップ(タイヤかす等の付着によるペースダウン)に関しても、今回100号車STANLEYと8号車ARTAはその影響を感じさせない走りを見せた。徃西LPLは「今回もその症状が出ているクルマはあるようなのですが、今回トップでゴールした2台についてはうまくマネジメントできていたので、タイヤ選択と、選んだタイヤをうまく使うセットアップがうまく機能した結果、レースペースの急激な落ち込みが抑えられたのではと思っています」と分析した。
その他、メカニカルグリップが必要とされるテクニカルなセクター3に関しても、「前回まで苦手だったが予選一発のタイムはしっかり出ていた」とのこと。決勝でのパフォーマンスに関しては今後の解析になるというが、徃西LPLは「ドライバーさんから高速コーナーやブレーキングが良いという印象が上がることからも、セクター3は他社さんを上回れるところまで来ていないんじゃないか」と述べた。
開幕2戦はかなり厳しい戦いを強いられていたホンダ陣営。徃西LPLも、開発の方向性に対する自信を失いかけたと明かすが、約3ヵ月のインターバルで色々なことを見つめ直せたことが開発陣としてもプラスになったと語った。
「最初の2レースに関しては、『ここまで悪いのはなぜだろう』という思いがありました」
「今年から初めてこのカテゴリーをやったわけではないですし、色々な積み上げをしてきた中で勝つための狙いを持っていました。その(開発)目標をそれなりに達成したと思っていた中でああいう結果だったので、クルマの作り方や考え方というところが間違っている……とまでは言わなくとも、自信が揺らぐ場面もありました」
「今回しっかりインターバルがあったので、今まで正しい、大丈夫だろうと思っていたところの中にも見直すべきものが見つかり、手を加えました。これまでは連戦の中でたまたま巡り合わせでそこそこの結果が出て安心して、自分たちを見つめ直す期間もないということが多かったですが、今回悪い結果をふたついただいて、しっかりと振り返る時間がありました。これはHRCの車両開発、エンジン開発にもプラスになったかなと思います」
「全ての領域の担当者が、自分たちのやってきたものをしっかり見直せましたし、チームのエンジニアさん、ドライバーさんとも今一度ゼロベースで話をする機会も結構あり、そこで新しく気付くこともありました。自信は揺らぎつつありましたが、こうやって軌道修正して結果が出ると、『もう1回自信を持ってやろうよ』とうちのスタッフにも言えるかなと思います。何をやっても毎回ダメな状態だと、みんなどうしていいか分からなくなってしまうので」
前述の通り、サクセスウエイトの軽さに恩恵を受けた部分もあるため、徃西LPLとしてもライバルに対して絶対的なパフォーマンスで上回っているとは認識していない。
「今回はサクセスウエイトにだいぶ助けてもらっているところがあります。やはりレース結果を見ると、1番サクセスウエイトが載っているクルマが4位でゴールしていて、最終的にはこのクルマと勝負しないといけないとなると……」
4位でフィニッシュしたマシンとは、前人未到のシリーズ4連覇を狙う36号車au TOM’S GR Supra。開幕2連勝を飾った結果、サクセスウエイト80kgで富士に乗り込んでおり、50kgのウエイト搭載に加えて燃料流量(エンジンパワー)1段階ダウン、給油スピードも1段階ダウンのハンデを背負っていたが、それでも4位に滑り込んだのだ。
「最終戦ノーウエイトでやる時にガチンコで勝てるのかというと、まだまだ足りていないと思う」と徃西LPL。次戦鈴鹿では、100号車STANLEYのサクセスウエイトが50kgを超えたため、搭載ウエイトと燃料流量ではau TOM’Sと同等になる(給油スピードには2段階の差がある)。この条件で2台がどのようなパフォーマンスを見せるかは非常に注目だ。
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次戦以降で速いかどうかが問われる。