2006年MotoGP第5戦フランスGP 250ccクラス
予選4番手グリッドからホールショットを奪った高橋裕紀(Humangest Racing Team)は、チームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾとレース序盤から一騎打ちのトップ争いを繰り広げていた。
青山博一がMotoGPの表彰台に最も近づいた日/世界で活躍した日本人ライダー
「14年も前ってメチャクチャ大昔ですね(笑)。もちろん、いい思い出ですし、昨日のことのように覚えています」
裕紀が勝ってもドヴィツィオーゾが勝っても250ccクラス初優勝というシチュエーション。裕紀は、ワイルドカード参戦した2002年パシフィックGP、2003年日本GPと2度3位に入っていたが、2005年にレギュラー参戦してからは表彰台にも上がっていなかった。
一方、ドヴィツィオーゾは、250ccクラスで2年目という点は裕紀と一緒だったが、2004年に125ccクラスの世界チャンピオンに輝き、2005年は5回表彰台に立ちランキング3位という結果を残していた。
「いま思えばドヴィがレースをコントロールしていましたね。後に、マネージャーを交えて3人でいたときにフランスGPのことを話したことがあったのですが“油断”があったと言っていましたね」
実際、レース序盤にトップに立ったドヴィツィオーゾは、裕紀を引き離そうとするが、ドヴィツィオーゾを上回るペースで裕紀はついて行く。これを見たドヴィツィオーゾは裕紀を前に出し様子を見ていた。
そうこうしているうちに後方からは、兄弟で3番手争いをしていた青山博一と周平が追いついてくる。するとドヴィツィオーゾは、前に出ると再びペースアップ。これで裕紀を引き離してクラス初優勝というのが、ドヴィツィオーゾのシナリオだった。しかし、裕紀は、このペースにも対応する。
「レース終盤にドヴィがペースを上げたときに、自分がついていくことができたので“勝てるかも”という雰囲気になりましたね」
勝負はファイナルラップの最終コーナーに持ち込まれた。進入へのブレーキングで裕紀はドヴィツィオーゾのインを突き前に出るが、ドヴィツィオーゾは想定内とばかり、クロスラインを取り立ち上がりで抜き返す。しかし、ここからチェッカーまでの僅かな加速で裕紀が前に出て初優勝をもぎ取るのだった。その差、僅かに0秒098。
「ドヴィは、今もMotoGPの最前線で活躍していますし、すごく刺激になりますし励みになります。自分も全日本のトップでいなければおかしいと思いますからね」
世界を戦っていたときは、ドヴィツィオーゾと同じイタリア人マネージャーと契約していた裕紀。今もマネージャーとは連絡を取っており、ときおりドヴィツィオーゾに激励のメッセージを送っていると言う。
あれから14年。いまだに開幕しない2020年シーズン、裕紀は、日本郵便HondaDream TPから全日本ロードレース選手権に新設となるST1000クラスを戦う予定だ。ニューHonda CBR1000RR-Rとのコンビで本命のひとりに数えられている。
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