2013年10月に行われた、スバル初代BRZのコンプリートカー「tS」試乗をプレイバック! 国沢親方も「スバルが作りたかったのはこんなBRZだったんだ!」と納得するその出来とは!?(本稿は「ベストカー」2013年11月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏/写真:平野 学
STIの提唱する「強靱でしなやかな走り」の真髄、ここにあり! スバル 初代BRZ tS 試乗プレイバック【10年前の再録記事プレイバック】
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■精度の高いクールな走りに心酔!
高性能タイヤのミシュラン「パイロットスーパースポーツ」をみごとに履きこなし、ノーマルのBRZよりもいい乗り心地だというBRZ tS。試乗後、国沢氏はtSの走りを「クールな走り」と評した
TRDに遠慮してたワケじゃないだろうけれど、デビューから1年半に渡り、STIはBRZとの関わりを自粛してきたように思う。ほかのスバル車なら豊富に揃うスポーツパーツも非常にかぎられていましたから。
しかし「そろそろいいでしょう!」になったんだろう。STIのコンプリートカーである『tS』をリリースしてきた。事実上の解禁宣言であります。果たしていかに?
前置きは後回しにして試乗といきましょう!
Dレンジをセレクトして走り出すと、クルマ全体の「しっかり感」が出ている。そもそもタイヤからしてまったく違う。BRZの標準装着タイヤ、スポーツグレードであってもご存じのとおりプリウスと同じ低転がり抵抗の215/45R17。
トヨタの多田さんがグリップ性能を追求しなかった、ということは読者諸兄もご存じのとおりだと思う。
tSときたらミシュランで最もスポーティという位置づけになる『パイロットスーパースポーツ』ときた。しかも225/40ZR18という200psのクルマからすれば超ハイパフォーマンスタイヤを履く。
STI商品開発部車両実験グループの渋谷真氏らしく、正統派のクルマ作りが反映されたBRZ tSの走り。下面にはドロースティフナー(補剛材)を加えており、前後のバランス取りをすることでハンドルの微少入力に対してしっかりと反応させる狙いがツボにはまっている
なんたって300ps級のポルシェとかに履かせることを意識して開発されたサイズですから。もはや走り出した瞬間からレールの上を走っているようなスタビリティを持つ。パワーオンでのスライドなど不可能。
同時にサスペンションの取りつけ部も高性能タイヤに合わせて強化した。特にリアサスが凄い! 3つのアームのブッシュをピロボールにしている。
遊びをなくし、路面からの大きな入力を受けた時も正確にアライメントを維持できるようになった。リアサスのスタビリティの高さはハンドルを握っていてハッキリわかるほど。後輪駆動ってリアサスが重要なのだけれど、STIは早くも見抜いた?
リアサスだけガッシリ動かすと今度はフロントがグニャグニャしてしまう。そこでSTI自慢のフレキシブルタイプのタワーバーを上面に。ドロースティフナー(補剛材)を下面に加え、前後のバランス取りをしてます。
スバル BRZ tS
ハンドルの微少入力に対しシッカリ反応させようという狙いで、これまたツボにはまっている。ベテランテストドライバーの渋谷真さんらしい正統派のクルマ作りだと思う。
そのうえで専用チューンのダンパー+バネを前後にセット。フロントダンパーを見たら、筒長がノーマルより長いタイプ。剛性と容量の両立を狙ったものです。ちなみにショーワ製。
高性能タイヤをキッチリ履きこなしており、ノーマルのBRZより乗り心地がいいほど。乗り心地のいいチューニングカーは、仕上がりレベルの高さの証明みたいなもの。路面からの入力が大きい足回りってアカンです。サーキット走っても速くない。
乗った印象はどうか?
ひと言で言うなら「クールな走り」。理詰めのよさ、と言い換えてもよかろう。
ハンドルに微少舵角を与え、路面と対話しながら走る、というイメージ。ニュルブルクリンクで仕上げたというだけあり、すばらしいライントレース性を持つ。
狙ったコースを5cmという精度で辿れちゃいます。また、超ハイグリップタイヤだからして、2速であってもパワーオンでリアタイヤを流すことなどできない。
STI自慢のフレキシブルタイプのフロントストラットタワーバーが鎮座するエンジンルーム内。tSの流儀に則り、エンジンチューンはいっさいなし
86とBRZを開発する際、スバルとトヨタの意見がずっと違っていたということはよく知られている。タイヤ性能を高くしたくないと主張し続けたトヨタに対し、スバルは終始もっとグリップのいいタイヤを履きたいと言い続けたという。
tSのハンドルを握り、スバルが作りたかったのはこんなBRZだったんだろうなと納得した次第。これはこれでいいクルマだと思う。
ただ国沢光宏の好みか、と聞かれたら「やや違います」。
先日のこと。グラベルラリー仕様のBRZに試乗したら(舗装路面です)、楽しいのなんの! スパイクタイヤで氷上を走った時のようなすばらしいコントロール性を持つ。今の日本じゃ高性能タイヤ履いても楽しめる場所がサーキットしかない。
tSの走りのよさを100%認めつつも、BRZの次のコンプリートカーはSTIの古いほうのDNAであるラリー車の方向を向いて欲しいな、と思った。
BRZの可能性は大きい。どの方向に伸ばしても面白いんじゃなかろうか。tSを皮切りに、いろんなBRZを提案してくれたら嬉しい。国産のスポーツモデルは当面このクルマしかないですから。
そうそう、60万円高の『GTパッケージ』は1脚30万円相当のサイドエアバッグつきレカロ製バケットシートと、同じく30万円相当のドライカーボン製リアウイングがつく。装備を考えたらお買い得です。
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■今後STIはBRZとWRXをどう棲み分けるのか!?
今年7月発売のWRX STI tSタイプRA。棲み分けのため、STIではBRZは軽量化に向かうべきと国沢氏は提言する
今までSTIの人気コンプリートカーといえば、WRX STIをベースにしたモデルだった。最もスポーティな『Sシリーズ』の場合、エンジンまで大きく手を加えている。
2代目インプレッサWRXをベースにした『S203』や『S204』のエンジンはノーマルより40ps高くなっているだけでなく、1基ずつSTIの三鷹工場でバランス取りしたうえで手組みされている。高回転域まで引っ張ると、グループNのラリー用エンジンのようなすばらしい回り方をします。
最近の『S206』は手組みエンジンでこそないものの、320psにパワーアップ。また今年7月に発売した『WRX STI tSタイプRA』のように、WRカーと同じクイックなギアボックスを採用するなど激しく攻めたモデルもラインアップする。
STIにとってみればカンバン車種だけあり、いろんな意味で過激さが売りになっている感じ。実際“ユルい”仕上げのWRXが出てきてもユーザーは興味を示さないんじゃなかろうか、ということをSTIだってキッチリ認識してる。
いっぽう、今回のtSはエンジンにまったく手を加えていない。森さんに聞いてみたら「NAエンジンなので10psとか20ps上げても高回転まで回るようになるだけです。かといってターボやスーパーチャージャーを使うことも難しいです」。
つまり、本格的に取り組まなければ面白くならないということ。逆に300psのエンジンを積むと、今度はWRXとの棲み分けが難しくなってしまう。以上の理由により、BRZは当面エンジンチューンを考えていないそうな。
個人的には大いに納得できる。NAエンジンのチューニング、手がかかるわりに効果薄い。そもそもBRZのエンジンにターボをつけたら、耐久性や排気ガスまで見直さなければならず、STIというより本社の開発部門の仕事になっちゃう。
今や環境の時代。むしろBRZはノーマルエンジンのまま楽しさを追求すべきだと思う。軽量化なんかも面白いテーマになりそう。
1100kgくらいまで落とすことができたなら、性能だけでなく燃費までよくなりますから。
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■スバル BRZ tS主要諸元
・全長:4260mm
・全幅:1775mm
・全高:1290mm
・ホイールベース:2570mm
・エンジン:水平対向4気筒DOHC
・総排気量:1998cc
・最高出力:200ps/7000rpm
・最大トルク:20.9kgm/6400~6600rpm
・トランスミッション:6MT/6AT
・サスペンション:F)ストラット R)ダブルウィッシュボーン
・タイヤ:225/40R18
・価格:366万4500~437万3250円
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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