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トヨタ純利益過去最高の3.9兆円も、決算発表資料に見えた「いくつかの矛盾」

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トヨタ純利益過去最高の3.9兆円も、決算発表資料に見えた「いくつかの矛盾」

利益の依存度分析

 2023年11月1日、トヨタ自動車は2024年3月期中間決算(4~9月期)を発表し、最終的なもうけを示す純利益を3兆9500億円に上方修正した(本業のもうけを示す営業利益は過去最高の4兆5000億円)。

【画像】えっ…! これがトヨタの「年収」です(計10枚)

 純利益を押し上げる外部要因として円安効果が挙げられ、

・他社を圧倒するトヨタの収益力を称賛する記事
・金融アナリストによる速報

が飛び交った。他の自動車メーカーの業績も好調と伝えられるなか、同社が勝ち続けるための課題を検証する。

 トヨタが公表した決算発表資料には、決算期(2023年4~9月)の地域別販売台数と所在地別営業利益が掲載されている。これらの数字を比較・分析すると、

「いくつかの矛盾」

が見えてくる。まず、グローバルでの地域別販売台数と世界全体に占める割合(カッコ内)に関しては、

・日本:107万台(23%)
・北米:139万台(29%)
・欧州:56万台(12%)
・アジア:90万台(19%)
・その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中東など):84万台(17%)

という結果だった。売上高に占める割合が最も高いのは北米で、全地域で前年比プラスとなった。

 次に、所在地別営業利益(金利スワップ取引などの評価損益を除く)について、営業利益額と営業利益率、全社の営業利益額に占める割合(カッコ内)を見てみると、

・日本:1兆5844億円、15.1%(58%)
・北米:3625億円、4.2%(13%)
・欧州:1922億円、7.2%(7%)
・アジア:4114億円、9.5%(15%)
・その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中東など):1865億円、8.5%(7%)

という結果だった。

 これらを比較してみると、

・日本の販売比率は2割程度だが、利益は6割近くを占め、日本への依存度が高い
・北米は販売比率が高いが、利益は1割程度と低い
・欧州やその他の地域は販売比率に比べて利益依存率が低く、あまり利益を得られていない

ことがわかった。

 日本の生産には北米などへの輸出も含まれており、円安の恩恵もあって“神風”が吹いているようだ。

求められる収益構造の転換

 全体の6割を稼ぎ出す日本の生産について、今日の生産量を確保するための課題を考えた。先の決算資料によると、トヨタとレクサスの通期生産見通しは、

・国内生産:334万台
・海外生産:676万台

の合計1010万台である。国内生産は今後の人口減少により、

・国内市場の縮小
・労働力不足
・物流問題

といったリスクが挙げられている。さらに輸出についても

・世界的な輸送能力の制約
・EV輸送における火災リスク

などがあり、日本の収益力が長期的に低下する可能性は避けられず、現在の日本中心の収益構造からの転換が不可欠である。

 しかし、トヨタを頂点とする日本のサプライチェーンは多様であり、トヨタには日本の屋台骨である自動車産業を支え続ける責任がある。

 このまま円安が続けば利益が出るという楽観論に甘んじることなく、上記の課題を踏まえた上で、日本では一定の生産量を確保しなければならない。一方、販売はどうなるのか。

世界人口の未来像

 当期の販売実績の構成比は、日本・欧州・北米が6割強、アジア・その他が4割弱と大きく分けられる。

 長期的には、自動車需要の中心は今後、高齢化が進む日本、北米、欧州などの先進国から、東南アジア、インド、中東、アフリカなどの「グローバルサウス」にシフトしていくと予想される。

 これらの地域では、中間所得層や富裕層、特に若い世代が増加し、大きな需要が生まれるといわれている。若い世代、特にグローバルサウスのZ世代のブランドロイヤルティーをいかに高めるかが、今後のカギとなるだろう。

 これを裏付けるデータとして、国連人口基金が2023年4月に発表した「2023年版世界人口白書」がある。同白書は、世界の人口は2058年に100億人を突破するが、2086年の104億3000万人をピークに減少すると予測している。

 さらに、今後30年間の人口増加の50%は、

・インド
・ナイジェリア
・パキスタン
・コンゴ
・エチオピア
・タンザニア
・インドネシア
・エジプト
・米国

の9か国に集中。人口は主にグローバルサウスで増加し、2100年には世界人口の約40%をアフリカが占めると予測している。

注目の成長市場

 グローバルサウスのなかでは、インドが成長株である。2022年、インドの自動車市場は中国、米国に次いで世界第3位に成長し、年末には総人口も世界一になると予想されている。

 インド政府は、2030年までに乗用車新車販売の30%をEVとする目標を掲げている。そのため、トヨタはインドでのEVシフトを積極的に推進する必要があり、販売強化も喫緊の課題となっている。

 また、タイも有望で、タイ政府は国内市場でEVを積極的に推進し、海外からEV生産工場を誘致している。

 11月上旬には、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域のトヨタ幹部がタイのセター首相を表敬訪問したと報じられている。これは、ASEAN地域の自動車生産拠点としてタイでの生産拡大を視野に入れ、タイ政府との連携を模索する動きと見られる。

 これまで見てきたように、今後トヨタが日本のトップ企業として純利益を維持するためには、日本での生産を現状維持しつつ、グローバルサウスへの販売拡大と生産シフトを円滑に進める必要がある。

 EVシフトの加速という喫緊の課題とともに、これらの課題にも早急に取り組まなければならない。トヨタは4億円の純利益に満足することなく、冷静に将来を見据えながら、さまざまな課題に取り組む企業努力が求められる。

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みんなのコメント

19件
  • 大学生がインターネットで調べた情報だけで書いたような記事。トヨタほどの会社がここに書かれていることぐらいを考えてないわけがなく、もう少しトヨタがBEVやグローバルサウスでどんな動きをしているか調べた上で書きましょう。
  • 矛盾が何を指すのが、全く意味不明。この記者は、日本語の勉強が足らない。

    EV、EVとか叫び5年以上も経っているのに、未だにHVの需要が大きい事の矛盾を、まずは評価してから言ってくれ。
    カーライターや自称専門家は、自身のEV信仰が現実から「矛盾」していることを認識した方がいい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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