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序盤から“大きな爆弾”を抱えていたDAISHINと、“勝ちパターン”に入っていたマクラーレン【S耐第3戦富士24時間】

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序盤から“大きな爆弾”を抱えていたDAISHINと、“勝ちパターン”に入っていたマクラーレン【S耐第3戦富士24時間】

 5月22日15時にスタートが切られたスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookの第3戦『NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース』。最高峰ST-Xクラスは続々とマシントラブルやアクシデントが相次ぐなか、81号車 DAISHIN GT3 GT-R(大八木信行/⻘木孝行/藤波清斗/坂口夏月)が総合優勝を獲得した。

「実は、燃料系の問題が出たり、最後までメーターを見ることができないという結構大きな問題がレース序盤から発生していました」と、明かしたのは、Bドライバーを務めた青木孝行だ。

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 順調なレース運びで勝利を手にした、かのように見えたDAISHIN GT3 GT-Rだったが、実際にはレース序盤から“大きな爆弾”を抱えていたのだ。

「電気系の問題からメーターにエラーが起きてしまい、メインモニターはほぼ使えない状態でした。それに続いて発生した燃料系の問題は、交換するとなるとすごく時間のかかる作業になるので、覚悟はしていました。でも、チーム、そしてニスモのスタッフが、一緒に問題解決に取り組み、直りはしませんでしたが、症状をごまかして走れるように対策方法を考えてくれました。おかげで、その症状の悪化は止めることができました。メーターは引き続き見ることができない状態でしたが、普通のペースで走ることはできました。でも、その症状はチェッカーを受けるまで続いていましたね」

 これらのトラブルは、なんと22日のナイトセッションに差し掛かるタイミング(スタートから約3時間)から発生していたという。ライバル勢が相次いで、マシントラブルやアクシデントに見舞われた中、ノートラブル、ノーペナルティで763周を走破したかのように見えたDAISHIN GT3 GT-Rだったが、実際にはレース序盤から“大きな爆弾”を抱えながらの戦いを強いられていたのだ。

「その“爆弾”をうまくチームのみんなが消してくれて、ただ、いつ状況が変わるかがわからないという不安はありましたので、結構ドキドキしながら走っていました」とレース終了直後、青木はほっとした様子で語った。

「(メーターは)エラーが出て、走っている間はタコメーターも含めてほぼ使えなかったです。集中モニターなので、タイヤの内圧のほか、色々なデータが見れず。それも直ったり、調子が悪くなりの繰り返しで。それトラブルだけであれば走ることは続けられますが、燃料系の方は大きな問題に発展すると走ることができなくなります。それを回避する“エマージェンシーモード”のようなものがニスモには用意があったので、それを使ってずっと最後まで走っていました」

 青木の語ったエマージェンシーモードは車内から操作が行えるようになっており、チームからのを無線をもとに、ドライブ中にモード変更を実施。すると症状の悪化を止めることができたという。

「ST-Xクラスはみんなトラブルが出たと思いますが、一番最初にトラブルが出ていたのは、実は僕らかもしれませんね」と青木は語った。

 チーム、そしてニスモの努力により、トラブルの悪化を食い止めつつ、後半はトップを守り続けたDAISHIN GT3 GT-Rは、クラス2番手の777号車 D’station Vantage GT3に42周という大きなギャップを築いて763周目にトップでチェッカーを受けた。

 青木は「富士24時間特有の10分間のメンテナンスタイムをどこで、いかに使うかというのも鍵になっていたと思います。フルコースイエロー(FCY)のおかげで、クルマを長く持たせることができたと思います。それもあって僕らはメンテナンスタイムを後半まで引っ張ることができ、2回目のセーフティカー中(23日早朝)にメンテナンスタイムを実施できたことも、大きなアドバンテージになったかと思います」

 富士24時間を制したことで、45ポイントを獲得したDAISHIN GT3 GT-Rは、現状ランキングトップのD’station Vantage GT3に13ポイント差の2番手に浮上、シリーズタイトル争いにも名を連ねることとなった。

 青木は「今回の優勝でチームの結束力、モチベーションとかもかなり上がったと思いますね。自信がついた部分もあります。なにより、オーナーの大八木選手のペースがすごく良かったんですよ。それは今後のタイトル争いの展開に、プラスになる要素だと思います。これからのレースもしっかりとポイントを獲って、シリーズタイトルを獲れるように頑張りたいと思います」と、次戦となる第4戦オートポリス5時間に向けた意気込みを語った。

■FCYの好機を活かし圧倒的なギャップを築くも電気系トラブルに泣いた290号車マクラーレン

 一方、序盤2度のFCYの導入直前にピットに入り、大きなマージンを得た290号車Floral UEMATSU FG 720S GT3(植松忠雄/澤圭太/川端伸太朗/井出有治/川原悠生)は、2番手に1周近いギャップを築くと、レース開始から10時間近くリードを保っていた。

 スーパー耐久の場合、FCY導入中は全車の速度が50km/hに制限されると同時に、ピットエントリーがクローズドとなる。FCY導入直前にピットに入ることができれば、得られるマージンは大きいが、今大会で見せたFloral UEMATSU FG 720S GT3の序盤のピットストップのタイミングは偶然だったのだろうか。

「半分偶然でしたけど、FCYが入るかもしれないという予想もあったので、『じゃぁ入れよう』と。我々は第1戦もてぎで、セーフティカーのタイミンングから勝利を逃していたこともあり、敏感にはなっていました」と語ったのはFloral Racing with ABSSAを率いる一人であり、Bドライバーを務めた澤圭太だ。

「戦略的に正解で、そこで得た1周分のリードをずっと保つことができれば、“勝ちパターン”だと思いましたが、そんなにうまくはいきませんね」

 レース前半に大量リードを築き、優勝争いを有利に展開していたFloral UEMATSU FG 720S GT3だったが、日付が変わる前から電気系の問題が発生。時間が経つにつれてどんどんと症状が悪化してしまう。

 そのため早めのメンテナンスタイムを行うも、1時31分、セクター2でマシンの電源がシャットダウンしてしまい、コースサイドにストップしてしまう。その場は再スタートを切ることができたが、2時30分ごろ、またも同様のトラブルに見舞われ、GRスープラコーナーイン側のグリーンにマシンを止めてしまう。今度は再スタートも叶わず、リペアエリアでの修復を強いられることになり、総合優勝争いからは戦線離脱となってしまった。

「メンテナンスタイムを早めて原因を追求しようというところだったのですけど、原因解明には至らずメンテナンスタイムが終了してしまい。本来メンテナンスタイムにやるべき内容だけ行い、コースに戻りました。それで、ついに止まってしまったという感じです」と澤は語った。

「残念ではありますけど、僕自身24時間レースは9回目なので、そんなにうまくいかないというのはわかっていました。マクラーレン720S GT3は2019年にホモロゲーションを取ってから、24時間を戦うのは今大会が初めてだったので、予期せぬことは起きるだろうとは思っていました。ただ、エンジンやターボ、駆動系やサスペンションなど、クルマの根幹に関わる部分が壊れたのではなく、電気系という、どのクルマにも持っているウイークポイントになりうるところでしたので、予見できなかったという感じですね。完璧なメンテナンスはしてくださっているのですけど、防げなかったのはアンラッキーだったなと思います」

「それで1時間半近くリペアエリアで懸命に直してくれました。電気系って一番目に見えないところで、直すことがすごく難しいところだと思うのですが、それをマクラーレン・カスタマー・レーシングさんのサポートとメカさんのおかげで直すことができて、再スタート後はほぼノートラブルで走ることができました。結果的にはラッキーもあり、表彰台に上がれたので、それも24時間レースだなと思います」

 2021年シーズン3戦連続となる3位でチェッカーを受けたFloral UEMATSU FG 720S GT3は、シリーズランキング3位をキープ。しかし、澤は「シリーズランキングも大事ですが、やはり勝ちたい」と語った。

「開幕戦から勝てるとは思っていたのですけど、なかなか勝つことができず。今回も3位という結果となりました。しかし、十分な速さと強さを対外的にも見せることができたと思いますし、自分たちの自信にもなったと思います。実際に勝てるパフォーマンスが有り、“こうやって戦えば”というのがだいぶかたちにもなってきているので、今シーズンはまだ3戦ありますので、必ず勝ちたいと思います」

 スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook、次戦となる第4戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』は7月31日~8月1日に大分県のオートポリスで開催される。シリーズも後半戦に突入し、ハンコックタイヤに対する理解度も深まってきたなか、より激しい戦いが、繰り広げられることだろう。

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