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平川がアタッカーから外れる8号車トヨタ。低調要因は“特定”の7号車可夢偉。敵は異常発生する“虫”?/ル・マン24時間

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平川がアタッカーから外れる8号車トヨタ。低調要因は“特定”の7号車可夢偉。敵は異常発生する“虫”?/ル・マン24時間

 6月8日に行われたWEC世界耐久選手権第4戦を前にしたテストデーの走行セッション。ル・マン6勝目を目指すトヨタGAZOO Racingは、8号車GR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が最速タイムをマークした一方、もう1台の7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース)は14番手と沈んだ。

 テストデーから2日後、レースウイークの走行開始を翌日に控えた10日(火)、チーム代表を兼ねる可夢偉と平川に、現状の感触とレースに向けた展望を聞いた。

ル・マンの新予選方式を歓迎するドライバーたち「予想外の結果になるかもしれない」

「タイムだけだと分かりづらいですが、差は結構小さいかなと思いますね。フェラーリはロングランをやっていましたけど、結構速いなという印象があったり。僕らはあまりストレートエンドで速くないという事実があるのですが、トラブルもなく、順調に終えたのは良かったかなと思いますね」

 そう語るのは、8号車をドライブする平川だ。8号車はテストデー午後のセッション冒頭でハートレーが記録したタイムにより、全体最速に。ただし平川は、まったく楽観はしていない。

「(ハートレーのベストラップは)それなりの予選シミュレーションだったのですが、もちろん引っかかっていて完璧ではなかったですし、周りもあまり予選シミュレーションやっている気配ではなかったので……もちろんトップで終えるのは気持ちがいいのですが、すごいアドバンテージがあるという風には見ていないですね」

 ロングランのペースに関して、テストデーで平川がとくに気になったというのは、サテライトチーム、AFコルセの83号車フェラーリだという。

「かなり速かったので、そこには若干追いついていない感じはしますが、それもトップスピードの差があるので……去年もそんな感じだったので、予想内のことかなと思います」

「戦える位置にはいますが、周囲が言うようなすごいアドバンテージがあるわけではありません。フェアなバトルができればいいのかなと思います」

 フリープラクティス1、予選の第1ステージ、そしてナイトセッションのフリープラクティス2が行われる11日(水)に向けては、「暑くなるのと、風向きが真逆になりそうなので、そこは明日だけ特別かな」と平川は冷静に決勝までを含めて俯瞰する。走行日では水曜だけが30度に迫る暑さとなるが、土日の決勝に関してはテストデー同様、比較的涼しいコンディションになるとの予報が出ており、FP1ではその後の暑さのなかでの予選に向けて、決勝とは離れた状況・プログラムを想定しているようだ。

 今年の予選フォーマットは、予選、ハイパーポール1(H1)、ハイパーポール2(H2)という3段階のノックアウト式。ポールポジションが決するH2では、H1とは異なるアタッカーを起用しなければならない。つまり、最終ステージまで進出したチームは、ふたりのアタッカーをそろえる必要がある。

 テストデーでのベストタイムからも分かるように、8号車ではハートレーがレギュラーアタッカーを務めている。ふたり目のアタッカーとしては、昨年の富士、そして今年のイモラでもアタックした平川に三度チャンスが巡って来るかと思われたが、テストデー前の時点のミーティングにより、平川のアタッカー起用は見送られたのだという。したがって、ハートレーとセバスチャン・ブエミが3セッションを分担する方向だ。

「それは話し合った結果なので……」と若干の無念さを滲ませた平川だったが、決勝での走りに集中できるという意味ではポジティブな部分もあるようだ。

「このル・マンで予選をやるというのは、すごいプレッシャーのかかるものでもあるので……そこはレースの準備にしっかり集中できるかなと思います。まぁ、富士で(アタッカーを)やることは決まっていますし、いろいろとチャンスが回ってきたり、チームからも認められているということは、いい成長だと思いますね」

 平川はフェラーリをマークすると同時に、まだあまり上位に進出してきていないポルシェの実力を訝りつつ、アルピーヌ、BMW、そしてキャデラックの動向を気にしている。

「キャデラックは4台出場していますから、そこと戦って(上位10台で争われる)ハイパーポール2に進出するのは……ワンミスで下位に行ってしまう可能性はあると思いますね」


■「1周でウインドウスクリーンが見えなくなる」と可夢偉

 一方、チーム代表を兼ねる可夢偉にテストデーの状況を尋ねると、「まぁ、8号車は順調そうに見えますね。クルマは同じ状態で持ってきたつもりなんですが、フィーリング的にはちょっと違って、ちょっと迷走気味で……」とやや歯切れが悪い。

「まぁ原因は分かっているんですが、細かい部分で(8号車と)同じクルマではなかったというか……あとはレース仕様のコンビネーションに賭けるしかないかな、と。決勝前にエンジンやギヤボックス、その他のパーツもレース用に変えるので」という可夢偉の言葉から想像するに、現在7号車に搭載されている何らかのパーツに、ある種の不具合が発生している可能性もありそうだ。

 これまでの流れやテストデーのラップタイムなどを観察するに、7号車のアタッカーは可夢偉とニック・デ・フリースが務めるものと思われるが、可夢偉は「まだ20周くらいしか走ってないんですよ」と、さすがのレコードホルダーも走行不足に対する不安を隠さない。

 もうひとつ、可夢偉は今年特有の懸念点として、コース上に浮遊する虫の存在をあげた。取材者の目線から見ても、テストデー時点は小バエにも似た虫が大量発生している状況が認められた。それらがフロントウインドウにこびりつき、ドライバーの視界を奪っているというのだ。

「もうね、1周でウインドウスクリーンが見えなくなるんです。それでピットに帰ってきたら、クリーナーをスプレーするじゃないですか。そうするとべちゃべちゃになって、それがまた気持ち悪いんですよ。西陽なんて当たったら、最悪です」

 このように懸念点はいくつかあるものの、8号車の調子を考えてみても、総合的にはいい位置で戦えそうな前向きな雰囲気が今年のトヨタ陣営には感じられるのも事実。過去2年とは異なったパワーバランスが見られるのか。フォーマットが変わった予選では、どんな戦いぶりとなるのか。レースウイークは走行初日から、目の離せないセッションが続きそうだ。

[オートスポーツweb 2025年06月11日]

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みんなのコメント

1件
  • まなぽよ
    虫なんかどの車もイコールコンディションだからなー。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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