グランクーペ風の4ドアサルーン
BMWが小型ハッチバックの純EV、i3を発表したのが2013年。長い間をおいて、中型サルーンのi4が姿を表した。
【画像】BMW最新の電気自動車 i4とiX 欧州で競合する純EVサルーンと比較 全118枚
純EVへ早期に取り組んでいたBMW。だが、テスラやポルシェ、メルセデス・ベンツといったライバルに少し遅れるかたちでi4が投入されるに至ったのは、i3のほろ苦い経験だったようだ。
先進的で斬新なコンパクトカーといえたi3は、期待通りの成果を得られなかった。同時期に発売された、ハイブリッド・スーパーカーのi8も。それを踏まえてなのか、i4は技術的にもスタイリング面でも、それらとは異なるベクトルが与えられている。
純EV専用プラットフォームを開発するかわりに、i4の基礎に選ばれたのは実績あるプラットフォームの改良版。現行の3シリーズや4シリーズも採用しているものだ。
スタイリングも、どちらかといえば従来的なデザイン処理が与えられた、グランクーペ風の4ドアサルーン。スポーティで見慣れた印象を受ける。BMW好きにとっても訴求力があると思うし、サイズやプロポーションも理想的だ。
欧州の場合、BMWの中型サルーンの主な需要は、会社からの貸与車両を中心とするビジネスユーザー。内燃エンジンからのスイッチに対しても意欲的で、このブランドの純EVサルーンを歓迎する人も多いだろう。
そんなユーザーは、過度に斬新なデザインを望んではいない。i4なら大丈夫そうだ。
航続距離590km 0-100km/h加速5.7秒
BMW i4は、内燃エンジンを搭載する現行の3シリーズよりひと回り大きい。全長4783mm、全幅1852m、全高1448mmで、トレッドも広い。容量80.7kWhの駆動用バッテリーの多くがフロア下に並べられており、重心高は低い。
写真で見る以上に、3シリーズとi4との見た目の印象は大きい。ボディサイドにライトブルーのアクセントが長く伸び、電動であることを主張する。
フロントマスクは、純EV SUVのiXに似た8角形の縦に長いキドニーグリルが据えられ、その両サイドをスリムなLEDヘッドライトが引き締める。内燃エンジンほど冷却性能は求められないため、フロントグリルにはカバーが掛けられ、カメラが埋め込まれている。
英国で提供されるi4は、2グレードでの展開となる。トップグレードがツインモーターで合計544psの最高出力を発揮する、四輪駆動のM50。こちらには以前AUTOCARで試乗している。
そして今回試乗した、車重が少し軽くシングルモーターで339psを発揮する、後輪駆動のeドライブ40だ。BMWらしく、Mスポーツも指定できる。
純EVとしてスペック表で最も目を引く数字が、WLTP値で590kmという長い航続距離。M50より英国価格は9500ポンド(約144万円)も安価でありながら、0-100km/h加速は5.7秒と充分鋭い。こちらの方に人気が集まることは想像できる。
BMWは、eドライブ40の最高出力を自社の最もパワフルな直列6気筒ディーゼルに並ぶ、と主張している。それにも疑問はないだろう。
おなじみの着座姿勢に巨大なモニター
航続距離を考えれば、2125kgの車重が重すぎるということはない。車体と同じくミュンヘンで製造される駆動用バッテリーは、冷却性やパッケージング、材料の配合比率などに優れ、i3のものよりエネルギー密度が40%も高いという。
加えて、レアアースと呼ばれる希少金属を用いていない点も特長。完全に再生可能エネルギーを用いて製造されているとも主張する。
i4のドアを開いて車内に腰をおろすと、目新しいデザインのなかに、見慣れたデザインも散りばめられていることがわかる。スポーツシートや各部のスイッチ、レバーなどは、3シリーズにも用いられているものだ。
ドライバーに向けて角度が付けられた大きなタッチモニターが、スリムなダッシュボードの上に鎮座している景色は新しい。様々な情報が表示されるメーターパネルもモニターでまかなわれ、インフォテインメント側も複数の表示状態を選択できる。
BMWがiドライブと呼ぶインフォテインメント・システムは、第8世代。代を重ねる毎に反応が素早くなり、直感的に操作できるようになってきている。
インテリア全体の質感は非常に高く、快適に過ごせるだけでなく、独特のオーラも感じられる。グランクーペと同様に座面は低く、着座姿勢はおなじみのもの。スポーティな印象もある。
フロントシート側の空間は充分に広い。リアシート側は、クーペ風のルーフラインということもあって、欧州体型の大人には少々窮屈。週末の子供と一緒のお出かけには、問題ないだろう。
BMWらしいペダルやステアリングの反応
i4を発進させて最初に感銘を受けるのが、BMWらしいということ。シングルモーターの太い初期トルクを活かし、シングルスピードのギアが組まれているものの、ステアリングホイールやアクセルペダルの反応は今まで慣れ親しんだものだ。
最新の純EVらしく、加速は鋭い。音も静か。アクセルペダルを放した時の回生ブレーキは、惰性走行に近いものか強力な減速感を得られるものか、2種類から選択できる。その中間はない。
BMWは走行時に人工音を与えているが、インフォテインメント用モニターでオフにできる。そうすれば、ほぼ無音で目覚ましいパワーを楽しめる。
内燃エンジンのBMWと同様に、舗装して時間が過ぎた路面ではロードノイズが大きい。しかし滑らかに落ち着いて、凹凸などはいなしてくれる。コンフォートでもスポーツ・モードでも、乗り心地は良いといえるだろう。
快適でありながらスポーティ。一部の純EVのように、うねりなどを通過した時に上下動が抑えきれないという様子もない。
BMWが純EVを作るにあたり、このプラットフォームへ施した努力が伝わってくる。3シリーズなどと比べて大幅に車重が増えていることを考えれば、なおさらだ。
BMWらしく、速く運転しやすいドライバーフォーカスの純EVサルーンが誕生した。i4 eドライブ40は、既存のBMWユーザーが内燃エンジンを諦め、モーターとバッテリーへ踏み出す決断をするのに不足ない仕上がりにある。
BMWが純EVへ寄せる期待は、実現するのではないだろうか。このi4なら。
BMW i4 eドライブ40 Mスポーツ(欧州仕様)のスペック
英国価格:5万3405ポンド(約811万円)
全長:4783mm
全幅:1852mm
全高:1448mm
最高速度:189km/h
0-100km/h加速:5.7秒
航続距離:590km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2125kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:80.7kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:339ps
最大トルク:43.6kg-m
ギアボックス:−
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