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マイルドHVは電動車じゃない? 「HVの違いが分かりづらい」 政府が定義する電動車とは?

掲載 更新 4
マイルドHVは電動車じゃない? 「HVの違いが分かりづらい」 政府が定義する電動車とは?

■複雑なハイブリッドシステム、それらの違いは?

 自動車の電動化が加速しています。世界各国で電動車の販売や開発などの動きが活発となっていますが、日本において電動車の定義とはどのようなものなのでしょうか。

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 菅義偉首相は2021年1月18日の施政方針演説で、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と述べました。
 
 2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けた具体的なアクションです。

 これは地球温暖化に対する世界的な動きで、日本だけでなく、欧米、中国もクルマをすべて電動化する方針を打ち出していて、この流れは今後、さらに強まっていくと思われます。

 これまで、電動車の定義があいまいでしたが、日本政府の掲げる電動車とは、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)のことを指します。

 日本では1997年にトヨタが世界初の量産型ハイブリッド車「プリウス」を発売してから20年以上が経過しておりHVは世界的に見ても技術的に優位な位置にあります。

 競争戦略上の優位性も踏まえて、日本政府は電動車の対象にHVを盛り込むことになりましたが、HVがモーターとエンジンを併用して排出ガスを出す以上、今の形態のままHVが生き残ることは難しいのが実情です。

 また、HVはエンジンとモーターを組み合わせたクルマのことですが、日本では開発が進んだことであって、さまざまな種類のHVがあります。

 HVには、「シリーズ方式」「スプリット方式(シリーズ・パラレル方式)」「パラレル方式」という3つの方式があります。

 シリーズ方式はエンジンを発電のみに使用して、駆動自体はモーターで行う仕組みです。モーターの力だけで走行するため、EVのような走行フィーリングが特徴となり、代表的なものとして日産の「e-POWER」が挙げられます。

 スプリット方式(シリーズ・パラレル方式)とは、エンジンとモーターの動力を走行時の状況に応じて双方の出力を調整する方式です。

 基本的には、発進・低速域においてはモーターのみで走行して、登坂や高速域ではエンジンとモーターを効率よく動力として使い、同時に発電もおこないます。代表的なのはトヨタの「THSII(TOYOTA Hybrid System II)」です。

 パラレル方式は、エンジンを動力源の主体としており、発進・加速など大きな出力が必要な際にモーターでサポートする仕組みとなり、ホンダではかつて「Honda IMA」として用いられていました。

 なお、現在ホンダの主流となっている「e:HEV」は、基本的にモーターで駆動しますが、バッテリーの充電状況などに応じて、エンジンで直接駆動するモードに切り替えるなど、それぞれの特徴を上手く合わせた仕組みです。

■複雑なハイブリッドシステム。 「マイルド」「ストロング」って何?

 構造の異なる3つの方式とは別に「マイルドハイブリッド」と「ストロングハイブリッド」といった違いもあります。

 高電圧(200V以上)でクルマを走らせることを「ストロングハイブリッド」と呼び、低電圧(12Vや48Vなど)でクルマを走らせることを「マイルドハイブリッド」と呼びます。

 構造の違いでいえば、シリーズ方式、スプリット方式はストロングハイブリッドに分類され、現行モデルのパラレル方式はマイルドハイブリッドに分類されます。

 マイルドハイブリッドは、HVではない一般のクルマにも使われているオルタネーター(発電機)をモーターとしても使います。

 ストロングハイブリッドはモーターだけで走行しますが、マイルドハイブリッドはエンジンを動力にして走行し、補助機能としてモーターを使うのが特徴です。

 具体的には、アイドリングストップからのエンジン再始動時や加速の際に、オルタネーターがモーターに切り替わって、ベルト駆動によってエンジンの補助として機能しています。

 モーターの強い力を活用して、アイドリングストップした状態から、エンジンの再始動を素早く、静かにおこなうことができるのも特徴のひとつです。

 マイルドハイブリッドは、ストロングハイブリッドとは異なり、大容量のバッテリーや高電圧のモーターは必要としていません。

 このため、システムの構造が単純かつ小型軽量なことからハイブリッドシステムを設置するためのスペースもわずかで済み、コストを抑えつつ環境性能を高めることができます。

 マイルドハイブリッドは、年々強まる排出ガス規制の強化を受けて誕生しました。

 環境面ではストロングハイブリッドのほうが有効ですが、生産コストが割高となるため、ガソリン車と比べて販売価格も割高となり、かつては低価格が求められるコンパクトカーには向かないという面もありました。

 そうした点でも、生産コストを低く抑えられるマイルドハイブリッドは販売価格も低く抑えられるため、近年ではより低価格な軽自動車に採用されるケースが目立っています。

 ただ、政府が「2035年までに新車販売で電動車100%の実現」を打ち出した以上、今後は電気自動車優遇が加速していく可能性があります。

 実際、政府の2021年度税制改正大綱では、自動車重量税を燃費性能に応じて優遇する「エコカー減税」の期限が、2021年5月から2年間延長することになりました。

 その際、エコカーの定義が、現行基準よりも4割程度厳しくなる項目として新たに「2030年度燃費基準」が目安のひとつとして採用されました。

 このため、新たな燃費基準の60%を下まわるガソリン車/ディーゼル車やマイルドハイブリッドは、エコカー減税の対象から外れることになります。

 また、2021年5月以降もEVとPHEVはエコカーとして一律で免税措置を受けることができますが、HVは2030年度の目標への燃費基準の達成度で減税率が異なってきます。

※ ※ ※

 自動車の維持費などに大きく影響する自動車税制ですが、今後は温暖化対策のために、より電動化しているクルマほど税金が優遇されることになりそうです。

 現在、HVも電動車の扱いではありますが、新車販売から純粋なガソリン車がなくなる2035年に向けて、モーターだけで走ることができないマイルドハイブリッドへの優遇は、見直される可能性もあるかもしれません。

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みんなのコメント

4件
  • 方式で決めるから実際は煮詰めが甘くエコではない車も減税対象となってしまう。方式に限らず純粋に閾値だけで決めるのがフェアかと思います。
  • ハイブリッドは、ストロングハイブリッドとした上で、車体重量を考慮した単位重量あたりのCO2排出量で税率を決めるのがベスト。
    軽い車は燃費が良くなる。
    メーカーが単に軽い車作りに走られても困る。
    ユーザーは質感の高い、静かな車に乗りたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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