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ぜいたくな願いを叶えてくれる控えめなSUV──新型BMWアルピナXD4試乗記

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ぜいたくな願いを叶えてくれる控えめなSUV──新型BMWアルピナXD4試乗記

BMWのクーペSUV「X4」ベースのアルピナ「XD4」に、小川フミオが試乗した。

ひかえめな魅力

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スポーツカーの楽しみをSUVでも楽しみたい。そんなぜいたくな願いをかなえてくれるのが、アルピナ「XD4」だ。スタイリッシュであり、パワフルであり、ハンドリングはスポーティであり、そして、かつ、ぜいたくなのだ。

285kW(388ps)の最高出力をもつ2992cc直列6気筒ディーゼルターボ・エンジンと、フルタイム4WDを組み合わせる。ベースモデルがBMWのX4だけあって、キャビンをすこしコンパクトに見せてクーペ的な印象をかもしだすスタイルと、高性能のエンジンがよく合っている。

南ドイツはバイエルン地方のアルプスから社名をとったのがアルピナだ。BMWをよりスポーティにしたモデル、という程度の認識はあっても、知名度でいうと、メルセデスAMGに及ばないかもしれない。

洗練度が高いクルマづくりが特徴だ。メーカーにとっては、知名度が上がって販売が増えていくのが望ましいだろうけれど、アルピナ・ファンのやや無責任な心情では、“自分だけがこの魅力を分かっていればいい”と、思える。いい意味でアンダーステーテッド(ひかえめ)な魅力が身上である。

SUVのかたちをしたスポーツカー

じっさいに年産1700台程度、と、アルピナのクルマづくりは数を追求していないようだ。ただし、クラフツマンシップがセリングポイントかというと、もちろん、それだけではない。

アルピナ車はすばらしく出来がよい。ベースのBMW車をじょうずにチューニング(調律)している。モデルによって、仕上げる方向性は異なり、このXD4は、SUVボディとディーゼルエンジンという組合せであるものの、意表をつくように、ほとんどスポーツカーのように仕上げてある。

そもそもはタイプライターを作っていた創業者が、1961年にBMW車に自社製のカーブレターを装着したのがスタートだ。1965年にアルピナ社が設立され、チューンナップしたBMW車によるモータースポーツ活動を通し、名声を確立した。車体のいわゆるショルダー部分だけ赤や緑に塗ったカラースキームのアルピナ車の活躍を、海外のニュースで読んではあこがれた。私もそんなひとりだ。

アルピナがSUVを手がけたのは2014年発表の「XD3」が最初だ。245kWの最高出力と700Nmの最大トルクをもつ2992cc直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載。ごく低回転域から、ディーゼルエンジンとは思えない5000rpmまで、スムーズに吹き上がるのが、じつに印象的だった。

XD4は、スタイリッシュなルックスのSUVクーペとして人気のBMW X4がベースなだけに、XD3と同様の気持ちよい走りがチューニングのテーマかな? と、予想して乗った。が、先述のとおり、あにはからんや、SUVのかたちをしたスポーツカーだった。

SUVの姿をしていても、もっとも得意なのは高速コーナーであり、最適な居場所は、オフロードでなく、レース場のようなきれいな路面である。路面の凹凸がやや大きい手入れの悪い自動車専用道は、XD4には向いていない。乗り心地は意外に快適であるものの、ステアリングが路面の干渉を受けるからだ。

期待を裏切らない完成度

22インチ径の255/35(フロント)、295/30という、スポーツカーなみに扁平率が低い大径タイヤを装着。外観上かなりの迫力だ。じっさいにこのピレリPゼロタイヤが路面をグリップする力はそうとうなもので、剛性感の高いシャシーと、正確なステアリングとの組合せがSUVを超越している。

ステアリング・ホイールを切ると、瞬時に、というかんじで車体が反応する。前輪の左右幅は1614mm、後輪は1628mmと広く、おかげで、カーブをくいくいとおもしろいように曲がる。4760mmの全長と1620mmの全高をもつ、比較的余裕あるサイズのボディでありながら、驚くほど反応が速いのだ。

2992cc直列6気筒ディーゼルエンジンは「B57」とよばれるBMWなら「X6 35d」に搭載されているもの(ちょっとマニアック)。X4 M40iの「B58」(2997cc)とはちがう。最高出力は、このX4の285kW(388ps)と同一である。

X4 M40i(500Nm)よりはるかに太い770Nmの最大トルクは1750rpmから発生。つま先でかるくアクセルペダルの踏み込みを調整するだけで、頭がのけぞるような加速感が味わえる。太いトルクに乗って、軽快に走るのだ。

ディーゼル・エンジンと高性能車というのは、意外な組合せに思えるかもしれない。

じつはアルピナは、高回転域までまわるのが得意じゃないディーゼル・エンジンをうまくチューンして、5000rpmまで使えるようにした実績を過去に持つ。最初は、5シリーズをベースにした「D10」(2000年)だ。現在のXD4もまったく期待を裏切らない完成度である。

XD4の価格は1385万円。8段スポーツオートマチック変速機(アルピナスイッチトロニック仕様)付きで、左ハンドル。SUVで遊びたいひとのためのクルマだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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