オープンを記念し、ライフスタイルブランドのエシャペ(Échapper)とのコラボレーションによる限定シルクウェアも展開する。
2010年にニック・ウェイクマンが設立した英国ブランドのスタジオニコルソン(STUDIO NICHOLSON)は、“ファブリックファースト”を理念に掲げ、上質な素材使いとミニマルかつモダンなデザインで人気のブランドだ。そんなスタジオニコルソンが、国内では青山店、渋谷パルコ店に続く3店舗目にして関西初となる直営店を、2026年3月19日(木)に京都にオープンした。
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貴金属工房として使われていた二層の京町家を改装した京都店は、スタジオニコルソンが打ち出すインダストリアル×レジデンシャルのトレンドと、真黒石の庭や京提灯などの伝統美を融合し、隅々までニック・ウェイクマンのこだわりが光るスタジオニコルソンならではのモノづくりの世界観を体現した店舗となっている。オープンのために来日したニック・ウェイクマンに、新店舗やコラボレーションからブランドのフィロソフィーまで訊いた。
──直営店を京都にだそうとしたきっかけから教えてください。大きな理由のひとつは、単純に京都が好きだということ。東京とはまた違った魅力を持つ街だと感じています。スタジオ ニコルソンがグローバルブランドとして成長していくなかで、意識しているのは、インターナショナルな人々が行き交う都市に拠点を構えること。これまでも上海やロンドン、パリなど、世界中から人が集まる都市に出店してきました。すでに東京には2店舗があるので、3店舗目は関西エリアで最も国際色豊かな街として京都を選びました。
今後、大阪などへの展開の可能性もありますが、京都の魅力は、東京では実現しにくい独特の佇まいを持つ店舗がつくれる点にあると感じています。そうした京都ならではのロケーションであることも、出店を決めた大きな理由です。
──京都店の特徴はどこにありますか?素材をとても大切にしています。服づくりにおけるファブリックはもちろんですが、ストアにおいても建材をひとつの“素材”として捉えています。店舗において、世界共通で使用しているマテリアルがいくつかあり、京都店では元の家屋にあった杉材を活かしながら色調なども加えたアプローチで新旧の木材を組み合わせ、ブランドの考える温かみある木、“ウォームウッド”を表現しています。
そしてもうひとつがステンレススチールです。京都店では、商品をかけるラックや受付、キャッシャーまわりに取り入れています。さらに、温かみのあるコンクリート素材も重要な要素で、1階の床に使用しています。加えて、白いタイルも共通して使っているマテリアルです。
こうした素材を共通項として持たせることで、新しいストアをオープンする際にも、“スタジオ ニコルソンらしさ”を自然と感じてもらえるようにしています。たとえ服や商品をすべて取り払ったとしても、同じ素材で構成されていれば、空間そのものからブランドらしさが伝わる。そんな店舗デザインを意識しています。
──国際色豊かな京都に店舗を出すことで、顧客とどのような関係を築いていきたいですか?スタジオニコルソンのオーディエンスは、アートや工芸に親和性の高い方が多いと感じています。京都には、豊かな伝統文化のヘリテージがあります。だからこそ、地元の方々とのつながりを、丁寧に育てていきたい。コンパクトな店舗なので、大きな商業性を追うのではなく、繊細で、静かに深まる関係性を育む場にになればといいと思っています。
──京都店限定のコラボレーションでエシャペを選んだ理由を教えてください。エシャペのプロダクトを自分自身で購入して愛用していたことがきっかけです。ブランドの理念やタオルを実際に手に取ったことでブランドを知り、久﨑康晴さんと話をするなかで自然な流れでコラボレーションがスタートしました。
特に魅力に感じたのは、ファブリックのクオリティです。エシャペを調べていくうちに、実用性とサステイナビリティというブランドの思想や哲学にも共感するようになり、コラボレーションを実現するなら京都がふさわしいと思いこのプロジェクトが誕生しました。コラボレーションは、シルエットはスタジオニコルソンのデザインをベースにしつつ、エシャペの得意とするボタニカルダイを用いた素材を取り入れているのが特徴です。
──スタジオニコルソンのデザインはミニマリズムの哲学が息づいていますが、昨今のクワイエットラグジュアリーのトレンドについてどのように思いますか?私たちはラグジュアリーを目指しているわけではなくて、あえて言うなら「精神的にコンテンポラリーである」ことを大切にしています。「クワイエットラグジュアリー」という言葉が出てきたのは、おそらくここ3~4年くらいだと思いますが、その前からミニマリズムという考え方自体はずっと存在していましたよね。たとえば80年代のジル サンダーや安藤忠雄さんの建築も、まさにミニマリズムとして評価されてきたものだと思います。
私たちはニコルソン的なミニマリズムの姿勢を大切にしてきて、特別新しいものではありません。メディアのつくった「クワイエットラグジュアリー」という言葉自体は、もしかしたらこの先なくなるかもしれませんが、デザインにおける純粋なミニマリズムは、これからも変わらず残り続けるものだと思っています。
ミニマリズムって、結局はマテリアルの質に向き合うことだと思うので、シルエットがすごく重要になるのも、パターンや装飾、たとえば刺繍のようなもので素材を誤魔化すことができないので、究極的には素材そのもののクオリティが問われるんですよね。
私はファブリックに強く惹かれていて、まるで取り憑かれているような感覚なんです。もともとロンドンでテキスタイルを学んでいたこともあって、それ以来ずっと、素材への関心が自分の軸になっています。
──服づくりにおけるインスピレーションの源は何ですか?映画です。とりわけ1984~85年頃から95年頃までの約10年間の作品に強く惹かれます。その時代の映画に登場する、どこか歪で個性的なキャラクターの存在が、自分の中では大きなリファレンスになっています。たとえば、ハリソン・フォードやミッキーロークの武骨さや、ウディ・アレンのアイコニックなチノパンの佇まいなど、フィルムのなかのキャラクターが服をどうスタイリングして魅せるかに影響を受けています。
また、写真や映画のビジュアルイメージも重要なインスピレーション源です。素材に関してはミニマリズムをベースにしつつ、フォルムやシルエットにおいては、映画的な人物像から影響を受け、よりリアルで、少しグランジーなニュアンスを帯びたバランスを意識しています。
いまアイフォンのなかにあるムードボードを見ると、安藤忠雄と犬のような関係性のある風景や、ポール・ニューマンが歩く何気ない瞬間、名前のない誰かの断片的な存在感などがあり、日常のリアリティを重視しています。
服は単なるプロダクトではなく、そこに着る人のアチチュードや空気感が宿ります。そのため、デザインにおいては、形や素材だけでなく、“どう在るか”というスタンスを内包させることを大切にしています。こうした映画や人物像は、その態度を定義するための重要なリファレンスになっています。
──日本のアーティストからインスパイアされることはありますか?安藤忠雄さんの建築は、自分にとって大きなインスピレーションのひとつです。たとえば、京都店の階段への光の入り方が、直島の「光の教会」のようだと感じて、とても嬉しかったですね。安藤さんの存在は、やはり大きいです。
もう一人、思い浮かぶのは川久保玲さんです。83歳になった今でも現役で活動されていて、その姿勢には強く惹かれます。日本においては、特に建築からインスピレーションを受けることが多いです。素材や空間の使い方がとてもユニークで、東京を歩いていると、タイルの使い方ひとつとっても惹かれることがよくあって、そうした日常の中に発見がたくさんあります。
──最後に、今後のプランがあれば教えてください。ビジネスは順調に進んでいます。その一方で、クリエイティブ面では、今後はホームウェアに取り組んでいきたいと考えています。具体的にどのようなものを作るかについて、明確なアイデアが固まっているわけではありませんが、たとえば今京都ストアのオープンに際して制作したエシャペとの取り組みは、その可能性を示す良い例だと思っています。
エシャペとのコラボレーションは、外出時にはスタジオニコルソンの世界観を感じられ、さらに帰宅後もその延長としてブランドのエッセンスを生活の中で感じられるという点で、非常に意義のあるものになっています。ライフスタイルの中でブランドのイメージを体感できるプロダクトは、とても重要だと考えています。また、さまざまなコラボレーションをすでに計画しており、こちらもぜひ楽しみにしていただければと思います。
ニック・ウェイクマンイギリス、ノッティンガム生まれ。チェルシー・スクール・オブ・アーツのテキスタイル・デザイン科を修了。ディーゼル、マークス&スペンサーを経て、セレクトショップのスープラガールズ(Supra Girls)や自身のブランドのバーディ(Birdie)で成功を収める。2年の休止期間の後、2010年にスタジオ ニコルソンを始動。
STUDIO NICHOLSON KYOTO住:京都府京都市中京区寺町通蛸薬師下る円福寺前町268
営:11:00~20:00
TEL:075-708-6602
https://www.instagram.com/studionicholson/
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