ハロは116kNの垂直荷重に耐えられなければならないと規定とされている。これはロンドンを走る二階建てバスを支えられるほどの強度だ。
2018年にF1に導入されたハロは、その後イギリスのクランフィールド大学で広範なテストと研究が行なわれた後、FIAのシングルシーター・シリーズへと導入されていった。
■ハロがハミルトンの命を救った。メルセデス代表「なければ恐ろしい事故になっていたはず」
クランフィールド大学のモータースポーツ修士課程プログラムディレクターであるクライブ・テンプルは、ハミルトンを救ったのは運ではなく科学だと述べた。
「ハミルトンは”ラッキー”だったわけではない」
「ドライバーの安全を確保するためのこれらの成果が、工学と科学によって支えられていることは事実だ。モータースポーツにおいて、安全性は第一の関心事だ」
「ハロは2018年に導入された。そのシーズン(のベルギーGPで)、当時アルファロメオのドライバーだったシャルル・ルクレールが、(フェルナンド)アロンソの乗るマクラーレンのマシンから守られたことで、その価値が証明された」
「また2020年11月(F1バーレーンGP)には、(ロマン)グロージャンのマシンが炎上するインシデントでも、ノーズの衝撃吸収構造、ヘルメット内の安全システム、バリアなど他の安全対策と共に、ハロの重要性が全面に出てきた」
「ハロは今や、F1からF4まで、シングルシーターに乗るすべてのドライバーに役立っている主要な安全装置のひとつであることが示されている」
さらにテンプルは「今回のクラッシュで証明されたように、ハロは非常に強力で、クルマの他の安全上重要な要素と一体化している」と付け加えた。
「フェルスタッペンのマシンがハミルトンの上に乗ってきたことは、おそらくロンドンの二階建てバスがマシンの上に落ちてきたことに近い経験だろう」
メルセデスの戦略責任者であるジェームス・ボウルズは、レース後に公開している動画の中で、F1の安全性向上の意義を強調した。
「ここ数年、F1で行なわれてきたすべての安全性が証明されたということだ」とボウルズは語った。
「ハロが彼の命を救ったこと、ヘルメットが衝撃をしっかりと受け止めて彼にダメージを与えなかったこと、そしてHANSデバイスが本来の役割を果たしたことだ」
「これら3つの装置が一体となって、ルイスは少しの傷と痛みを負ったが、無事だった」
F1は事故後、ハミルトンとフェルスタッペンのマシンに搭載されたオンボードカメラによる360度の映像を公開し、衝撃の様子を間近で見せている。
なお、このクラッシュでフェルスタッペンには衝突を引き起こした主な責任があると判断され、次戦ロシアGPで3グリッドのペナルティを受けることになった。
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