2013年3月24日、F1マレーシアGP。レッドブルのセバスチャン・ベッテルは、チームオーダーを無視してチームメイトのマーク・ウェーバーをパスし、優勝を飾った。後に“マルチ21事件”と呼ばれる7年前の出来事を紐解いていく。
ベッテルとウェーバーは2009年からチームメイトとなったが、マルチ21事件が起きる前からその関係は微妙なものとなっていた。
■事件は表彰台裏の控え室で起きていた! F1クールダウンルーム名場面集
というのも、ベッテルはレッドブルの育成プログラムが生んだ最初のスター選手であり、既に2010年から3年連続でドライバーズタイトルを獲得していた。一方のウェーバーは在籍年数こそ長いものの、あくまでレッドブルが外部から獲得してきたドライバーであり、2010年も最終戦までもつれる激闘の末ベッテルにタイトルを奪われていた。
そんなふたりの関係が完全に崩壊したと言えるのが、マルチ21事件が起こった2013年のマレーシアGPなのである。
予選でポールポジションを奪ったのはベッテルの方だったが、序盤からレースをリードしたのはウェーバーだった。2台のレッドブルは1-2体制を築き、3番手、4番手を走るメルセデスの2台を突き離しにかかっていた。
レース終盤に入ると、レッドブルはふたりのドライバーに対して“マルチ21”という暗号を使って指示を飛ばした。ちなみにこの“1”と“2”はふたりのカーナンバーを表している(ベッテル:1番、ウェーバー:2番)。つまり、ウェーバー、ベッテルのオーダーでこのままポジションをキープせよという指示だったのだ。
しかしベッテルはその指示に逆らい、残り13周のターン4でウェーバーをアウトからオーバーテイクした。
ベッテルのとった行動には各所から批判が殺到したが、一部からは「プロのアスリートはミハエル・シューマッハーのように、時に冷酷であるべき」とベッテルを擁護する声もあった。
数年後、ウェーバーは自身の自叙伝『オーストラリア人魂:僕のF1人生』の中でマルチ21事件のことについて次のように綴っている。
「マレーシアはタイヤに厳しいサーキットだったので、互いにバトルをすることは必ずしも有益とは言えなかった。それについては事前に話し合っていた」
「ラジオではチームが、このレースは僕のものになると言って安心させてくれた。でもセブ(ベッテル)が2ラップ以内に仕掛けてくるだろうということは分かっていた」
「僕は順位を守ろうとしたけど、彼はニュータイヤを持っていて、僕は持っていなかったんだ」
「僕は予選Q2のアタックで守りに入りすぎたので、もう1回アタックした。つまり僕には決勝用に3周オールドのタイヤしか残っていなかったけど、セブには新品が残っていたんだ。彼はもしかすると、指示を守ることよりも、タイヤを最大限使うことの方が大事だと感じたのかもしれない」
「彼がどう考えていたにしろ、僕が彼にオーバーテイクされた時、腹が立つというよりも、チームがこういう状態にまでなってしまったんだと思い、悲しかった」
■2012年のブラジルGPが“火種”だった?
2013年シーズンは、メルセデスのロス・ブラウンがルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグというふたりのエースドライバーをうまくコントロールしていたため、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーのマネジメント能力に対して疑問が投げかけられた。
しかしそんなホーナーは、ベッテルがマルチ21事件で、2012年最終戦ブラジルGPの復讐をしたのだと考えている。
2012年のブラジルGPは、ベッテルとフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)によるタイトル争い天王山。しかしベッテルはスタートでウェーバーに幅寄せされたことで順位を落とした。それが結果的にターン4でブルーノ・セナ(ウイリアムズ)に追突されることに繋がり、ベッテルはスピンして最後尾に。結果的に6位まで挽回してタイトルを勝ち取ったが、危うくアロンソに逆転を許すところだった。
ホーナーは2018年にF1公式ポッドキャストの中で、マルチ21事件の後、ベッテルはウェーバーに“復讐”の件を話したようだと語っていた。
ホーナーはさらにこう続けた。
「(ふたりの関係は)かなりの緊張状態にあったと思う」
「あの時のマークは受け入れ難かったかもしれないが、彼が改めて当時のことを振り返った時、セバスチャンの方が少し速かったと思うかもしれない」
「だからマークは使える武器は使っていこうと考えたのだろう」
「我々はひとつのチームとして誠実にやっていこうとした。でも時々ミサイルのようなものが飛んできて、状況をますます難しくさせた」
「セバスチャンは2012年のブラジルGPのスタートで、マークにピットウォールへと追いやられたことに非常に怒っていた。その遺恨が翌年のマレーシアGPに繋がったんだ。あの時はマークが先頭を走っていて、新しいタイヤを履いたセバスチャンが後ろにつけていた。タイヤがダメになりやすい状況だったので、我々はふたりにポジションをキープするよう伝えたが、セバスチャンは『くそったれ』と思ったことだろう」
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?