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日本では衰退気味だが……かつてのファミリーカーであったセダンの良さを改めて見直したい

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日本では衰退気味だが……かつてのファミリーカーであったセダンの良さを改めて見直したい

 この記事をまとめると

■かつてはクルマの花形であったセダンだが現在は低迷している

【新型登場?】日産 スカイラインの現状と今後の展開について

■セダンの魅力は3ボックス構成のスタイルの良さと低重心による走行性能の高さ

■低迷している理由は決してセダンの魅力がなくなったわけではない

 セダン人気は凋落しているがセダンはダメになってしまったのか?

 クルマにはセダン、クーペ、ハッチバック、ミニバン、SUVなど様々なカテゴリーがある。そこで今回はクルマの基本的な形ともいえるセダンにスポットを当てる。近年では大きくシェアを落としているセダンだが、はたして本当にダメになってしまったのかを改めて考えてみる。

■セダンとは?

 普通の人が「クルマ」と聞いて一般的に思い浮かべるのは、人が乗るためのキャビンスペースの前後に、パワーユニットを格納するためのエンジンルームと荷物を載せるためのラゲッジルームをくっつけた、いわゆる3ボックス形状のクルマだと思う。もちろん人によっては2ボックスのミニバンやSUVなどを思い浮かべる人もいるだろうが、大多数の人にとってのクルマは3ボックスなはずだ。そしてこの3ボックス形状こそが「セダン」であり、現在のクルマの基本形になっている。

 ちなみに3ボックス形状にはクーペもあるが、これはセダンが4ドアであるのに対し、2ドアのモデルをクーペと呼んでいる。しかし、最近は4ドアクーペなるクルマも登場していてややこしい。一般的にクーペはセダンよりもルーフの後半部分がトランクに対してなだらかに傾斜しており、セダンよりも流麗なスタイルをしているクルマを指すことが多い。この辺りに規定はないため、メーカーの言ったもん勝ちとも言える。

 そして基本のセダンにも、実はいくつかのバリエーションがある。ノッチバックセダンはエンジンルーム、キャビン、ラゲッジルームが完全に独立しているモデルで、ハッチバックセダンはエンジンルームこそ独立しているが、3ボックス形状でありながらキャビンとラゲッジルームに隔壁がないクルマで、ラゲッジドアとリヤウインドウが一体化しているケースが多い。

 その他にも見た目的には4ドアなのにドアに窓枠がないためにセダンとは区別される4ドアハードトップもある。

 また、世界的にはセダンはサルーンと呼ばれる場合もあるが、日本でサルーンといえば、セダンの中でも高級志向のクルマを指すことが多い。

■セダンの良さとは?

 クルマといえばセダンが基本の形とされるようになったのはセダンにそれだけの魅力があったからに他ならない。

 もともとクルマは幌馬車などから発展した2ボックス(ラゲッジルームも兼ねたキャビンの前方にエンジンルームがつく形)から始まっており、クルマを所有する富裕層が、人と荷物が同じ部屋に同居するのはけしからんと考え、キャビンとは別にラゲッジルームを設けるようになったのがセダンという3ボックスのクルマが誕生したきっかけだ。

 これにより、キャビンとラゲッジルームには隔壁ができ、荷物の臭いに困らせられたり、荷物が暴れて人にぶつかったりするようなことも無くなった。

 そしてセダンの形状はそれまでの箱型のクルマとは一線を隠したスタイリッシュなものとなり、富裕層がこぞってセダンに乗るようになった。すると平民たちはセダンに憧れ、それがいつしかクルマの基本形になったというわけだ。

 このようにセダンは人を快適に運ぶことを目的にしていたから、人が座れるだけのスペースを確保できればよく、例えば荷物を運ぶためのバンのように必要以上に車高を高める必要もなかった。これによって車高は低められて低重心化が図られたことで走行性能にも優れるというのもメリットだ。

 キャビンとラゲッジルームの間の隔壁も、ボディ剛性を上げることに貢献しており、走行性能を高めるのにも都合が良かった。

 セダンの魅力は決して失われていない!

■日本では残念ながら衰退傾向

 そんなセダンであるが、とりわけ最近の日本ではその人気に翳りが見えている。ここ数年だけで数々のセダンが生産終了へと追い込まれた。

●直近で販売を終了したセダン

・トヨタ・マークX(2019年12月)

・トヨタ・プレミオ/アリオン(2020年3月)

・レクサスGS(2020年8月)

・日産ティアナ(2020年7月)

・日産シルフィ(2020年9月)

・ホンダ・グレイス(2020年7月)

・スバル・レガシィB4(2020年7月)

 上記以外でも、ホンダ・レジェンドも2021年内での生産終了が発表されているし、日本のセダンの代表格であるトヨタ・クラウンと日産スカイラインに関しても、いつ生産終了になってもおかしくないといわれるほど販売台数が減っている。

●セダンが衰退していった理由とは?

 理由(1)道具としての定着

 セダンが衰退した理由のひとつに、クルマが憧れの対象ではなくなり、生活のための道具として定着したことがあげられる。もともとセダンはバンよりもスタイリッシュであることがウケて人々の憧れとなっていたが、クルマの普及が進み道具として定着すると、人々は美しさよりも効率的なものを求めるようになる。キャビンの全高よりも低い位置に設けられる開口部の狭いラゲッジルームでは、ミニバンやSUVなどのハッチバックタイプのクルマに比べてどうしてもスペース効率で劣り、不便と感じるようになってしまうのは必然だ。

 理由(2)居住空間の狭さ

 また、人々の嗜好の変化も影響しているだろう。かつては高級な素材で仕立てられたインテリアや豪華な調度品などに上質感を感じていたものが、現在では素材などよりもむしろスペースに余裕のある広さにこそ満足感と高級感を感じるようになっている。

 理由(3)宣伝方法の難しさ

 さらに、セダンはその宣伝方法にも難しさがあった。というのも、セダンの魅力はスタイルと走りの良さに集約されるが、近年はどこのメーカーもミニバンやSUVに力を入れていたため、「ミニバンよりもカッコいい」「SUVよりも走りがいい」とは声高に宣伝しにくい。ミニバンやSUVの利益率の高さを考えるとなおさらだ。結果としてセダンは、最大の魅力を武器にすることができないというジレンマに囚われてしまったのだ。

 こうしてセダンは、ミニバンやSUVにその座を奪われることになってしまったと考えられる。

■まだまだ買える! おすすめのセダン5選

 しかし、もちろんすべてのセダンの生産が終了してしまったわけではなく、絶対数こそ減ったものの、いまでも日本で買えるセダンはある。その中から代表的なモデルをピックアップしてみた。

(1)トヨタ・カローラ

 日本の国民車であるカローラは現在11代目となるが、ハッチバックやワゴン、SUVなど多彩なボディスタイルをラインアップしているのも特徴のひとつ。そして、その中にはセダンも用意されている。11代目となるカローラセダンは、全幅1700mmを超える1745mmとなって3ナンバー化しているが、実は先代モデルとなるカローラアクシオも5ナンバーセダンとして併売されている。

 いまでは日本で購入できる国産5ナンバーセダンはこのカローラアクシオだけとなっている。

(2)トヨタ・プリウス

 トヨタが世界に誇るハイブリッドカーであるプリウスもセダンに分類される。現行モデルは2015年に登場した4代目で、キャビンとラゲッジルームが分割されていないハッチバックセダンだ。ハイブリッドシステムを普及されたその功績は大きいが、すでにハイブリッドシステムがミニバンやSUVにも普及したいまとなっては、その存在意義も薄れつつあるのも事実だ。

(3)マツダ3

 2019年、それまでのアクセラからグローバルでのモデル名であるマツダ3に改めてデビューしたCセグメントモデル。セダンはファストバックとともにラインアップされており、ファストバックモデル同様のシンプルなラインで構成されたフォルムは非常にスタイリッシュ。しかし、日本国内での影は非常に薄い。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドと多彩に用意されたパワーユニットと、すべてのパワーユニットで2WDと4WDが選べるのがウリだ。

(4)トヨタ・クラウン

 国産セダンの代表格といえばトヨタ・クラウンをおいて他にない。現行モデルは15代目を数え、1955年から60年以上に渡って継承される車名のブランド力は絶大なものがある。2018年デビューの現行モデルは、ファストバックに近いスポーティなスタイルで若返りを図ったが、それが災いしてかどうかは不明だが、低調な販売となっている。そのため生産終了やSUVへの転身などの噂が絶えないのは非常に残念だ。

(5)メルセデス・ベンツEクラス

 国産メーカーのセダンは絶滅に瀕した状況だが、海外メーカー、とりわけドイツメーカーのセダンに関しての状況は大きく異なる。メルセデス・ベンツEクラスは世界的にプレミアムセダンとしての地位を確立しており、国産セダンが大きく販売台数を減少させる中でも堅調だ。これは高級車としてのブランド力で、国産メーカーがメルセデス・ベンツには対抗できていないとともに、世界のマーケットでは、いまだ高級車はセダンがデフォルトであることの証でもある。日本で高級車とされるミニバンは、世界では子供たちの送り迎えをするためのクルマとしかみられていないため、高級車の販売枠をミニバンに奪われることはないのだ。

■記事まとめ

 このようにセダンはクルマの基本形態でありながら、こと日本に関してはその存在意義が薄れかけている。しかし、それは決してセダンの魅力、「スタイルの良さ」や「走りの質の高さ」などが失われたわけではないこともわかったことと思う。いま一度、セダンの魅力が見直され、セダンが復権することを願いたい。

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みんなのコメント

65件
  • 結局ほとんどのユーザーは、「人が乗っている」クルマに乗りたい、というだけだと思います。
    見直しやら復権やら言っても、まあ流れのままにしかならないのではないのでしょうか。
    SUVに飽きて、人と違うクルマに乗りたい、という先行ユーザーが気に入るような、いいデザインのセダンが増えれば、自然にまた増えていくかもしれません。
  • クルマの中で子供が立てて、衣服の着替えをさせやすい。
    チャイルドシート義務化で座らせてシートベルトをするのにスライドドアが便利。

    移動手段じゃなくて移動する部屋を求めるようになってしまえばセダンは淘汰されてしまう。

    どっかの政治家も動く執務室だ的な事言ってましたが…動くラ○ホコンセプトなクルマもあったか。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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