安全装備の普及と活用をめぐる今後の課題
四輪車の純正用品を手がけるホンダアクセス(埼玉県新座市)は2026年7月31日、「家族での長距離ドライブに関する調査2026」の結果を発表した。同調査は2019年から始まり、今回で8回目を数える。
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自家用車を運転する20代~50代のうち、家族で長距離(片道100km以上)のドライブ経験を持つドライバー1000人(男女各500人)を対象に、インターネット調査を行った(調査期間:2026年7月1日~2日)。
結果を読み解くと、クルーズコントロールや車線維持支援といった安全運転システムの装着率が前回より高まった反面、実際の使用率は落ち込んでいる。国内の新車販売で約4割を占める軽自動車も例外ではない。
地方の生活インフラとして使われる軽自動車において、安全装備が普及しつつも十分に生かされていない現実は、自動車産業のみならず交通安全政策においても重い課題といえる。
本稿では、この調査結果から安全運転支援システムの搭載状況と利用実態を分析し、各種機能が使いこなされていない背景を探る。あわせて、メーカーや乗り手が向き合うべき課題と今後の道筋を考えてみたい。
安全装備の普及拡大と軽の装備格差
調査対象が保有する車のボディータイプは、軽自動車が36.8%で最も多く、ミニバン(31.4%)、コンパクトカー(18.9%)、スポーツタイプ多目的車(SUV)(18.5%)、セダン(8.2%)、ステーションワゴン(5.5%)と続く。国内の軽自動車保有台数は約2,349万台にのぼり、四輪乗用車全体の37.7%を占める。今回の調査対象も国内市場の実態に近い割合であり、回答に偏りが少ないことがわかる。
一方、家族との長距離ドライブで最も使われるボディータイプは、車内空間が広いミニバンが30.2%でトップとなり、軽自動車(19.4%)を上回った。SUV(16.5%)やコンパクトカー(15.6%)、セダン(7.3%)、ステーションワゴン(4.8%)は保有割合とほぼ同等に落ち着いている。遠出においては、やはり軽自動車が敬遠されやすい傾向が見て取れる。
各種支援システムの搭載率は、全体でクルーズコントロール(ACC除く)が32.5%、追従型クルーズコントロール(ACC)が18.6%、車線維持支援システムが38.3%となっている。ボディータイプ別に見ると、SUVなどは全体平均を10ポイント以上上回り、特に車線維持支援システムの搭載率はSUVで約6割(59.4%)に達した。
前回調査と比較すると、どのシステムも搭載率が1ポイント以上伸びており、車線維持支援システムに至っては6ポイントの増加を見せた。反対に、いずれの機能も持たない未装着車の割合は5ポイント減っており、安全技術の裾野が着実に広がっている状況がうかがえる。
しかし軽自動車に限ると、通常のクルーズコントロールが17.0%、ACCが11.9%、車線維持が32.0%にとどまり、全体の
「6割超」
がいずれのシステムも未搭載と答えている。価格や維持費の安さが最大の魅力となる軽自動車は、高額なセンサー類を要する先進安全装備が敬遠されやすい。安全性とコストの板挟みという構造的なジレンマを抱えており、普通車や大型車との間に明確な安全装備格差が生じているのだ。
とはいえ、未装着車の割合は前回から9ポイント減っており、歩みは遅くとも普及に向かっている。ホンダ・N-BOX、スズキ・スペーシア、日産・ルークスなど各社の主力モデルでは、標準装備や上位グレードへの採用が進んできた。軽自動車市場も、安さ重視から安全性能を重んじるフェーズへと移りつつある。
支援機能の使用率低下と過信の問題
一方で、せっかくのシステムも実際の使用状況は減少に転じている。ACCを搭載するドライバーのうち道路状況や疲労状態に関係なく(常時)使うと答えた割合は、前回の26.9%から23.7%へ落ち込み、逆に状況次第で使う層が44.0%に増えた。車線維持支援システムを常時使う割合も、前回(46.0%)から10ポイント近く下がる36.3%へと急落し、使っていない層が38.1%にのぼっている。
利用動機を探ると、疲れたときやノロノロ運転の渋滞時など、特定の環境に絞られる傾向が強い。旧来型のクルーズコントロールに至っては常時使う割合が前々回(2024年)の32.1%から今回は18.5%まで大きく下がった。先行車に追従する機能を持たないゆえの操作の煩雑さなど、使い勝手に対する不満が影響していると推測できる。
ここから透けて見えるのは、道が空いていればシステムに頼らず、自力で運転をこなす姿である。しかし安全工学の視点に立てば、交通事故の大半は意図しないヒューマンエラー(うっかりミスや度忘れなど)から起こる。自分は運転に自信があると過信し、必要なときだけ機能のスイッチを入れるような使い方は、集中力が途切れた瞬間のミスを防ぐ命綱を自ら手放すことに等しい。
。
法制度の壁と自動運転過渡期の葛藤
車線を守るシステムには大きく分けて2種類ある。車線をはみ出しそうになった際に音などで知らせる車線逸脱警報と、高速走行時にハンドル操作を助けるレーンキープアシスト(LKA)だ。国土交通省が定める先進安全自動車(ASV)の基本方針では、これらはあくまでドライバーの支援という位置付けになっている。
現在広く普及している自動運転レベル1~2の技術は、車がアクセルやハンドル操作を補っても、周囲の監視や運転の責任は常にドライバー側にある。それゆえ、国内で販売されるLKA機能には国の技術指針に従い、作動下限速度が時速65キロメートル以上、エンジン始動時は原則オフ(ドライバーが手動でオン・オフできる)といった厳格な制約が課されている。
こうした縛りもあってか、日々の運転に不安を感じていない層にとって、支援システムはかえって煩わしいものに映るようだ。だが、どれほど平穏な道のりであっても、予期せぬ飛び出しや体調変化といった突発的な事故のリスクは消えない。
悪天候時に白線が見えにくくなるなどの限界を把握したうえで、機械への過信は避けつつ、見通しの良い道でも油断なく機能を働かせておく習慣が求められる。
メーカーの責務と乗り手の意識改革
日本の道を走る車の主流である軽自動車において、安全技術の装着率を引き上げることは待ったなしの課題だ。車体が小さく、物理的な衝突リスクに対して不利になりやすいからこそ、事故を未然に防ぐ予防安全の恩恵を誰よりも受けるべき立場にある。メーカー各社には、カメラやセンサー類の共通化を進め、コストの壁を打ち破る努力が急務となる。
一方で、乗り手側の基礎知識不足というボトルネックも浮き彫りになった。高速道路の電光掲示板で渋滞の増加を示す赤色の三角マークを正しく理解していた人はわずか6.5%(前回8.7%)にとどまる。
事故による渋滞と勘違いしている人が約2割おり、わからないという回答に至っては6割強(61.4%)に達した。道路情報の初歩的なサインすら読み解けない現状を鑑みると、複雑化する車載システムの仕組みを正しく把握して使いこなす土壌は、まだ十分に育っていないと言わざるを得ない。
今回の調査が突きつけたのは、装備を持っていることと、それを実際に使うことは別物だという厳しい現実である。これまで自動車メーカー各社は搭載率の向上を競い合ってきたが、これからはいかに日常的に使い続けてもらうかへとフェーズが移る。
安全工学の世界には、人間が操作や判断を誤っても危険な事態へ至らないよう、機械の側であらかじめ防ぐフールプルーフという考え方がある。今後は、エンジン始動とともに強制的にシステムを働かせたり、警告が続いた際に自動で介入したりするような、人間中心の細やかな配慮が造り手に求められるだろう。
同時に、ドライバーに向けた継続的な啓発活動や、中古車査定において安全装備の有無を正当に評価する仕組みづくりなど、多角的なアプローチも欠かせないのだ。
安全技術の社会的活用と将来の道筋
どんなに優れた安全装備も、車体に組み込まれただけでは価値を生まない。日々の運転のなかでごく当たり前に使われて初めて、社会的な意味を持つ。
日本の交通安全政策はこれまで、道路環境の整備、免許制度の運用、安全意識の啓発という柱に支えられてきた。今後はここに車両側の安全技術を深く組み合わせていく必要がある。
地方で暮らす高齢者らの移動を支える足として、そして歩行者などの交通弱者を守る盾として、軽自動車へのフールプルーフ機能を含めた安全装備の標準化を進めることは、国全体の交通事故死傷者を減らすための重要な一手となる。
今回の調査データは、安全装備の搭載数を競う時代が終わりを告げ、いかに使いこなすかという次なる段階へ入ったことを示している。造り手には、さらなる技術革新による低価格化を進める努力が問われる。そして乗り手であるドライバーも自身の過信を手放し、システムを日々の相棒として活用する意識の切り替えが求められるはずだ。
安全技術は、決して人の運転を奪うものではなく、人間の不完全さを補うパートナーである。その技術を社会の仕組みとしてどう血肉化し、誰もが安心して移動できる環境を築いていくのか。今まさに、その手腕が問われている。(加川康子(モビリティライター))
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みんなのコメント
オートのハイビームは本当に迷惑。