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アルピーヌ「A110S」はアクセルワークひとつで自在に曲がる回頭性が魅力【試乗】

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アルピーヌ「A110S」はアクセルワークひとつで自在に曲がる回頭性が魅力【試乗】

■アルピーヌA110よりも40馬力アップ 足も固めたA110S

 近代のライトウエイト2シータースポーツとしての地位を築いたアルピーヌ「A110」(ピュアとリネージの2グレード)に加え、スポーツ度をさらに高めた「A110S」(エイワンテンエス)が登場した。

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 さっそく筑波サーキットでA110ピュアとA110Sの比較試乗ができたので、そのインプレッションをお伝えしよう。

 A110ピュアに対するA110Sの外観上の違いは、前後のALPINEのエンブレムはブラックになり、ブレンボ社製ブレーキキャリパーがオレンジ色に、ルーフがカーボンファイバー製に変わっているのですぐに見分けがつく。

 よく見るとタイヤサイズも前後とも10mmずつ幅広くなり、フロントは215/40ZR18 89YXL、リアは245/40ZR18 97YXLになっている。

 室内各部にあるステッチカラーもブルーからオレンジになり、シートやステアリングホイールの差し色としておしゃれな演出になっている。ヒップポイントの低いモノコックバケットシートはサベルト製で、重量は13.1kgと軽量だ。

 シャシのセッテリングは大幅に変更されている。

 フロントのスプリングレートは30N/mmから47N/mmへ、リアスプリングレートは60N/mmから90N/mmへとそれぞれ50%増しになっている。

 中空化したスタビライザーはフロント17N/mmから25N/mmへ、リア10N/mmから15N/mmへと固め、アンチロール性能を上げている。ダンパーとバンプストッパーはハイドロリックコンプレッションストップ方式になった。つまり通常はゴムやウレタンを使うバンプストッパーを、液圧で止めるタイプにしている。

 エンジンは1.8リッター4気筒直噴ターボに変わりはないが、252馬力から292馬力に最高出力がアップした。

 最大トルクは320Nmで変わらないが、その発生回転域が高回転まで最大トルクを持続するようになった。A110ピュアの最大トルクは、2000rpmから5000rpmまでの幅で320Nmを発生するが、A110Sのエンジンでは同じ2000rpmから始まるものの6400rpmまで320Nmを持続するようにコンピュータプログラムを変えたのだ。

 ターボのブースト圧は0.4bar高めている。単にトルクバンドが広がったというより、高回転域になってもトルクの落ち込みがないので、その分が出力アップにつながっている。出力は、トルク(Nm)×エンジン回転数(rpm)で得られるから、高回転まで太いトルクを発生できれば出力が上がるという計算である。

 その結果、車両車重は1110kgでピュアと変わらないが、数字が小さいほど良いパワーウエイトレシオは4.3kg/馬力から3.8kg/馬力へと大幅に向上した。0-100km/h加速は4.4秒と0.1秒速くなり、0-400mは12.6秒、0-1000mは22.8秒、最高速度も10km/hアップして260km/hになった。

■ロールが小さく、サーキットでの限界走行も

 A110Sに乗って、いよいよ筑波2000にコースインする。

 微小舵角からほとんど遊びがなく反応してくれるステアリングレスポンスが、A110ピュアとは違うことはすぐにわかる。

 タイトターンでもフロントが逃げず、ハンドル角に比例したヨーが出るので、ドライバーが描いたライントレースができる。その割にはリアも安定していてグリップ限界が高いから、相当なスピードまで4輪が路面に密着したグリップ走行が可能だ。

 それでも何人かのドライバーが交代で連続して走り込んでいくと、タイヤのトレッド面もホットになってグリップ限界も下がってくる。コーナー出口に向かって少し膨らみ気味になってしまったときは、踏み込んでいるアクセルペダルを少し戻すことでクイッとノーズをインに向けてくれるから、タイムロスなくライントレースしながら加速ができる。

 そもそもドライバーの背後、リヤミッドシップにエンジンを搭載する後輪駆動だからフロントが軽い。これによりレーシングカー並みの回頭性を生んでいる。車両の重心点も左右シートの間に位置するから、素性はスポーツカーというよりレーシングカーである。

 A110ピュアのハンドリング性能は高く、サーキット走行でも十分だと思っていたが、A110Sはロール角が小さく、しっかりと踏ん張る感じが格段に良いことを確認できた。コーナー出口でロールの戻りがないのでスムーズに走れる。

 第1ヘアピンを立ち上がって次のL字コーナーに向かうときの切り返しでも動きは軽快で素早い。

 筑波サーキットのハイスピードコーナーである最終コーナーでもスムーズな走りで安定感も高かった。

 最大Gになったときに危うい挙動が出てくることはなく、グリップ限界付近でも急激な変化がないのは素晴らしい。サスペンション形式がダブルウイッシュボーンということもレーシングカーと同じで、タイヤの接地面の変化が急激に起こらないからポテンシャルが高いのだ。

 タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4を履いているが、このタイヤの特性とサスペンションのマッチングが非常に良かった。サーキット専用として開発するならドライグリップ指向のカップタイヤなどをチョイスして、もっと足を固める方法もあるが、A110Sのセッティングはサーキット寄りではあるが市街地、高速道路、ワインディングロードなど一般道でも快適に走らせることを目指していて、そのとおりに仕上がっている。

 A110Sのセッティングをしたテストドライバー、ロラン・ウルゴン氏の腕は確かだ。彼はルノーのR.S.シリーズの味付けも担当しているという。

 以前同じ筑波サーキットでメガーヌR.S.トロフィーをテストしたことがあるが、駆動輪が前か後ろかということを意識させないとても良いハンドリング特性だった。

 A110Sでもそんな駆動方式の違いを超越したセッティングができ上がっている。メガーヌR.S.ではFFのデメリットを感じさせずに攻めることができるし、A110SではMRのメリットは生かしながらもMRのトリッキーな動きを封じてグリップ限界付近でも扱いやすい特性に仕上げている。これは本当に凄いと思った。

 エンジンはA110ピュアと比べると確かに高回転域のパンチ力があるし、7000rpmから始まるレッドゾーンに向かってグイグイ加速していく。そして針がレッドゾーンに飛び込む直前に自動シフトアップしていくが、次のギアになってもトルクバンドが広いからシームレスな加速ができ気持ちがいい。

 シフトアップは自動にお任せで、コーナー入口に向かってブレーキングの最後にシフトダウンするのはパドルで行う。

 ステリングホイールの右側スポークに赤色のスポーツボタンがある。これはノーマル/スポーツ/トラックの各モードに切り替えできる。もちろんサーキット走行にはトラックモードが最適だ。キビキビとしたシフトで迫力ある走りが体験できる。

 スポーツ走行をするために自走でサーキットに通いたい人には最適なアルピーヌA110S。その価格は899万円だ。

ALPINE A110S
・車両価格:899万円
・全長:4205mm
・全幅:1800mm
・全高:1250mm
・ホイールベース:2420mm
・トレッド前/後:1555mm/1550mm
・車両重量:1110kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1798cc
・駆動方式:MR
・変速機:7速DCT
・最高出力:292馬力/6420rpm
・最大トルク:320Nm/2000-6500rpm
・サスペンション前/後:ダブルウイッシュボーン/ダブルウイッシュボーン
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ:前215/40R18、後245/40R18
・0-100km/h加速:4.4秒
・最高速度:260km/h
・WLTCモード燃費:12.8km/L

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