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直6かV8かで1杯呑める? メルセデス・ベンツ W111型カブリオレ(1) 縦積みのバンパーとライト

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直6かV8かで1杯呑める? メルセデス・ベンツ W111型カブリオレ(1) 縦積みのバンパーとライト

280 SE 3.5は220 SEbの2倍のお値段

傑作と呼ばれるモデルでも、中古車になれば1度は価値が大きく下がる場合が多い。しかし、それに当てはまらないモデルもある。1970年の新車当時、7249ポンドだったメルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレは、好例の1台だ。

【画像】時代を超越した美貌 W111型カブリオレ 同時期のメルセデス・ベンツ 最新CLEとSLも 全111枚

4年落ちの中古車を英国で探しても、6000ポンド前後で取引されていたはず。ディーラーに並んでいた価格の、8割以上は保たれていた。同時期のアストン マーティンDB6 ヴォランテなら、7割を切っていたことだろう。

グレートブリテン島では、W111型は35台のカブリオレが売れたのに対し、クーペは225台。後者の方が、英国では遥かに人気が高かった。そのため、V8エンジンを積んだソフトトップ仕様の取引価格は、現在も希少性に応じてお高い。

今回の1台は英国の専門店、SLショップの店頭に並んでいるが、お値段は「応談」とのこと。同店には、直6エンジンのW111型220 SEbカブリオレも売られている。こちらは、14万9995ポンド(約2925万円)の値が付いているが、恐らく2倍はするだろう。

この220 SEbカブリオレは、縦に並んだ丸目のヘッドライトと、14インチ・ホイールが落ち着いた印象を与える。2024年まで、SLショップを創業したサム・ベイリー氏が愛車にしていたそうだ。

4シーター・オープンとして、魅力は間違いない。熱烈なマニアが存在し、W111型の価格は高騰傾向にある。それでも、2気筒と80馬力を諦めれば、280 SE 3.5カブリオレより現実的な価格で、殆ど同じ見た目のクラシック・メルセデスが手に入るといえる。

フィンテールがベースのクーペとカブリオレ

W111型メルセデス・ベンツの登場は、1961年。「フィンテール」と呼ばれたサルーン
がベースのクーペとカブリオレは、220 SEbから販売が始まった。リアサスペンションはスイングアクスル式で、フロントブレーキにはディスクが与えられていた。

トランスミッションは4速マニュアルも選べたが、オートマティックの方が主力で、パワーステアリングも指定できた。ルーフにはセンターピラーがなく、シャシーに補強用のクロスメンバーを追加。車重は、サルーンの220 SEより70kgほど重かった。

非常に美しいW111型は、1950年代のW180型、通称ポントン・クーペとコンバーチブルを、合理化・現代化する目的で生み出された。戦後のメルセデス・ベンツにとって、デザインの1つの金字塔だと表現できる。

開発が始まったのは、1957年。カーデザイナーのポール・ブラック氏は、北米市場へ訴求するべくピラーレス・クーペを描き出すが、少しずんぐりとしたルーフラインは当初から提案されていたようだ。

初期のスケッチには、テールフィンも与えられていたが、メルセデス・ベンツはW111型のサルーンに与えたことを正解だとは考えていなかった。最終案が決定するのは1959年で、その時までに明確なフィンは消滅していた。

縦に重なったバンパーと丸目のヘッドライト

220 SEbクーペの試作車が作られたのは、1960年9月。1961年2月には、初期型の量産車が仕上がっている。公にお披露目されたのは、3月のスイス・ジュネーブ・モーターショー。ところが、ジャガーEタイプの発表と重なり、話題はそちらへさらわれた。

220 SEbカブリオレは、10月に英国で発売。価格はサルーンの220 SEより約30%高い、4400ポンドが与えられた。左右のアームがぶつかるように回るクラップハンズ・ワイパーに、足踏み式スイッチのウオッシャーなど、新しい装備には事欠かなかった。

このW111型は、フロントにディスクブレーキを組んだ、最初のメルセデス・ベンツでもあった。英国の、ガーリング社製が採用されている。

クロームメッキのバンパーは、上下に2段重ねたようなデザインで、丸目のヘッドライトも縦に重なった。正方形に近いフロントグリルは威厳を漂わせ、低く垂れ下がったテールエンドは、その後のW113型メルセデス・ベンツSLともイメージを共有する。

前後にクラッシャブルゾーンが与えられ、衝突試験を経て安全性は確認済み。ボディの全長と全幅は、サルーンとほぼ同じながら、全高は約95mm低い。ボディパネルやガラス、クロームトリムは、すべて専用にデザインされた。

インテリアには、ウッドとレザーを惜しみなく利用。最上級リムジンの600に次ぐ高価なメルセデス・ベンツとして、納得の仕立てにあった。

最終形でV8エンジンを獲得したW111型

改良が続けられ、リアにもディスクブレーキを採用し、パワーステアリングとエアサスペンションが標準の300 SEが1962年に登場。1965年に220 SEbが250 SEへ交代し、1967年には300 SEは280 SEへ変更。1969年に、280 SE 3.5が登場している。

このW111型の最終モデル、280 SE 3.5は、トルクフルでスムーズなV8エンジンが北米市場でヒット。最新のボッシュ社製燃料噴射で、現地の規制をクリアした排気ガス制御を実装していた。シャシーは、新しくはないフィンテールの派生版のままだったが。

スイングアクスル式のリアサスペンションや、フロントのウイッシュボーン、コイルは定期的なメンテナンスが欠かせなかった。グリスアップ・ポイントは19か所もあり、3200km毎の注油が求められた。

それでも、最高速度は201km/hで、0-100km/h加速は10秒を切っていた。フロントグリルは僅かに低くなり、クロームメッキ・バンパーの下段にはラバーモールが追加された。ただし、同じ280 SEのエンブレムが貼られた、直6エンジン仕様もあった。

かくして、280 SE 3.5カブリオレと約半額の220 SEbカブリオレ、どちらが望ましいだろうか。酒の肴になるような、悩ましい選択になる。

希少性や投資価値、走りの安楽さという点では、後者の方が間違いなく有利だろう。クラシックカーになった今では価格差が大きく、訴求する層は大きく異なるとしても。

この続きは、メルセデス・ベンツ W111型カブリオレ(2)にて。

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