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熟成の極みに達した新型マセラティ ギブリに渡辺慎太郎が試乗! 待望の最強V8モデルも登場

掲載 更新 3
熟成の極みに達した新型マセラティ ギブリに渡辺慎太郎が試乗! 待望の最強V8モデルも登場

Maserati Ghibli

マセラティ ギブリ

アルファロメオ・レーシング、2021年仕様のF1マシン「アルファロメオ C41」をオンラインで公開 【動画】

イベントの細部に宿るマセラティ流儀

「まだナンバーが付いていないので」という理由で、マセラティの最新型ギブリの試乗会はクローズドのサーキットで開催されたのだけれど、試乗車にはちゃんとナンバーが付いていた。本国イタリアのナンバープレートである。欧州の試乗会で使った個体を本社がわざわざ送ってくれたそうだ。

コロナ禍により思うような広報活動ができなくなっても、以前紹介した「午前3時の発表会」など、マセラティはあれやこれやと手を替え品を替え、自社のプロダクトを広くアピールしている。ちなみに、試乗会で供されたランチはブルガリに特注したという、お重に入ったフィンガーフードだった。「ライフスタイルブランド」を標榜するだけでなく、試乗会のランチすら手を抜かない徹底ぶりには感服する。

進化の目玉は「マイルドHV」と「V8」の追加

新型ギブリの“新型”が意味するところはいわゆるマイナーチェンジである。よってプラットフォームやシャシーの大規模修繕はなく、エクステリアの一部意匠やマルチメディア関連が刷新されている。一方でパワートレインにはふたつのトピックスがあり、ひとつはマセラティ史上初となる電動化モデルのハイブリッドの追加、もうひとつはこれまでレヴァンテとクアトロポルテにだけ展開されていた“トロフェオ”の追加である。

ギブリ ハイブリッドのパワートレインは、直列4気筒+ターボ+BSG+eブースター+48Vバッテリーからなるシステムである。直列4気筒ターボはアルファロメオなどですでに使われているフィアット系のユニットをベースにしているが、ブロックやヘッドの一部などを流用した以外はマセラティが新たに設計し直しており、コントロールユニットもボッシュ製の最新型に置き換えるなど「新しいマセラティエンジン」という位置付けである。

BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)はすでに市場に広く出回っている機構で、通常はスターターとジェネレーターが別々にベルトを介して稼働するがBSGはこれをひとつにし、スターター/ジェネレーターとしての役目のみならず、減速時には回生ブレーキとして発電し48Vバッテリーを充電、一定の条件下では電気モーターとして駆動力のアシストも行う。

ターボラグの“隙”を埋めるeブースター

“eブースター”とはボルグワーナー社の商品名で、電動式の過給機である。これはトランク内に収められた48Vバッテリーによって駆動するが、最大の効能はターボによる過給が十分に得られるまでの間を補うところにある。ターボは排気によってタービンを回して同軸上のコンプレッサーにより吸気を圧縮するが、スロットルペダルを踏み込んでからエンジン回転数が上がり排気がある程度の量にまで達するのに時間がかかる。これがいわゆるターボラグ。

この間を埋めるのがeブースターで、電動モーターなら電気を流せばすぐに反応するし、48Vを使えばそれがさらに速くなる。世の中には、クランクシャフトの回転をベルトを介して伝え作動するスーパーチャージャーをターボと併用するユニットもあるが、理論的にはこのeブースターとスーパーチャージャーの役目は同一と考えられる。

BSG+eブースター+ターボが連携アシスト

エンジンとBSGとeブースターとターボの具体的な作動要件は次の通り。クルマが停止している状態からスロットルペダルを踏み込むと、エンジン回転数が上がると同時にまずはBSGが駆動用モーターとして発進をアシスト、車体が動き出すとeブースターを使って速やかな加速を促しターボの過給圧が十分になったところでeブースターは停止してあとはターボに任せる。追い越しなどの中間加速では瞬発力が必要となるので、この場合にはBSGが駆動力をサポートするといった具合である。ちなみにeブースターを使った同じような機構は、メルセデスなどでもすでに使われている。

2020年に本国で行われたギブリ ハイブリッドの発表会ではeブースターの詳しい説明がなく、その時点ではeブースターがボルグワーナーの商品名であることも知らなかったし、まさかマセラティがそんなに手の込んだことをしてくるとは思いもしなかったので(失礼!)、「BSGのことをマセラティはeブースターと呼ぶ」と思い込んでしまい、その際間違った内容の原稿を納品してしまいました。ごめんなさい。既出の原稿は修正しておきました。こういうとき、Webは本当にありがたいと思う。紙媒体なら「後から修正」は絶対に不可能なので。

6気筒に近い自然なフィーリング

いくつものデバイスが状況に応じて次から次へと出たり入ったりしてくるこのハイブリッド機構だが、運転していてそれが分かるのかと言えばノーである。ターボの過給くらいはなんとなく分かるが、eブースターやBSGのフェードイン/フェードアウトはほとんど実感できない。コースは占有だったので、ホームストレートでいったんクルマを止め、全集中でスロットルペダルをゆっくりと踏み込んでみたが、自分には“タスキをつなぐ”作動状況がちっとも把握できなかった。むしろ、エンジンフィールにしてもパワーデリバリーにしても「これはほんとに2.0リッターのチョクヨンなのか」という驚きのほうが先行した。

額面通り、トルクは低回転域からたっぷりとあって、それが高回転域まで線形に間断なく発生する。主要諸元によれば450Nmの最大トルクの発生回転数は4000rpmで高めだが、これはあくまでもエンジン単体の最大トルクであり、そこまでをeブースターやBSGがうまく繋いでいるのだろう。エンジンの回り方はチョクロクよりもV6に近い印象で、同時に試乗したV6を搭載するSQ4 グランスポーツに似たフィーリングだと感じた。

ハイブリッドでも“マセラティの音”は健在

マセラティの魅力のひとつはその官能的なエンジンサウンドで、これがハイブリッド化により損なわれてしまうのではないか。そんな疑念を持つのはきっと自分だけではないはず。このパワートレインはいわゆるマイルドハイブリッドなので、エンジンが停止してモーターのみで走るEVモードは存在しないから、エンジンは無音状態にならない。つまりいつでもアノ音が耳に届くようになっている。

なおハイブリッドの導入により、これまでラインナップに含まれていたディーゼル仕様は生産終了になるとのこと。ディーゼルでもいい音色を奏でていたのでちょっと残念ではあるけれど、マセラティはガソリンエンジンをベースにした電動化への道を本格的に歩み出したのだ。

V8+FRの最強・最速ギブリも登場

いつかきっとそうなるだろうと思っていたのが、ギブリへのV8搭載である。ハイブリッドは望外の出来だったけれど、このV8ツインターボはやはり別格である。サウンドは言うに及ばず、圧倒的なパワーはクアトロポルテやレヴァンテよりも小さく軽いギブリでさらに増幅されるので、痛快という他ない。クアトロポルテと同様にあえてFRの後輪駆動を選んでいるから、サーキットのような場面ではパワードリフトも自由自在である。

最初に試乗したS Q4の時から薄々感じていたのだけれど、トロフェオにも試乗してほぼ確信を得たのは、そもそもギブリ自体の操縦性の正確さや4輪の接地性が従来型よりも向上しているようだった。正式には、今回のマイナーチェンジでシャシーやサスペンションに手は加えられていないそうだが、操舵応答性が上がりボディとシャシーの一体感がより鮮明になっていた。これはおそらく、生産技術の熟練度が増したこともあるのだろうと推測する。

いまではどの自動車メーカーも生産管理が徹底しているが、そうはいっても人間の手による作業にはバラツキもあるし、慣れてくればそのバラツキも小さく少なくなってくる。「後期型やモデル末期はクオリティが高い」とよく言われるが、改良の積み重ねだけでなく生産技術の向上もその背景にはあるだろう。現行ギブリの登場は2013年だからかれこれ8年が経過しようとしているが、電動化とV8を新たに加え、まだしばらくはEセグメントのセダンの中で異彩を放つ存在として君臨していくに違いない。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

【SPECIFICATIONS】

マセラティ ギブリ ハイブリッド(欧州仕様)

ボディサイズ:全長4971 全幅1945 全高1461mm

ホイールベース:2998mm

車両重量:1950kg

エンジン:直列4気筒DOHC

総排気量:1998cc

ボア×ストローク:84.0×90.0mm

システム最高出力:330ps/5750rpm

最大トルク:450Nm/4000rpm

トランスミッション:8速AT

サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

駆動方式:RWD

タイヤサイズ:前後235/50R18(テスト車=前245/35R21 後285/30R21)

マセラティ ギブリ トロフェオ(欧州仕様)

ボディサイズ:全長4971 全幅1945 全高1461mm

ホイールベース:2998mm

車両重量:1969kg

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3799cc

最高出力:580ps/6750rpm

最大トルク:730Nm/2250-5250rpm

トランスミッション:8速AT

サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

駆動方式:RWD

タイヤサイズ:前245/35R21 後285/30R21

【問い合わせ】

マセラティ コールセンター

TEL 0120-965-120

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みんなのコメント

3件
  • あいも変わらず官能的な内外装。信頼性はいかに。
  • このぐらいのパフォーマンスを4drで具現化する必要が有るのか最近疑問に思う
    これを養う財力があるのなら複数台所有も可能なはず
    パッセンジャーはスポーツ走行に付き合う義理があるなら別だが
    自分ならスポーツクーペと汎用SUVにするな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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