現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 『となりのトトロ』に出てきそう!? 昭和レトロな「トツバイ」「ビジバイ」なぜ消えた?「スーパーカブ」とは似て非なるもの

ここから本文です

『となりのトトロ』に出てきそう!? 昭和レトロな「トツバイ」「ビジバイ」なぜ消えた?「スーパーカブ」とは似て非なるもの

掲載 更新 58
『となりのトトロ』に出てきそう!? 昭和レトロな「トツバイ」「ビジバイ」なぜ消えた?「スーパーカブ」とは似て非なるもの

昭和の街角にはいつもその姿があった

  ビジネスバイク、略して「ビジバイ」とは、配達や外回り営業、警察のパトロールなど、さまざまな業務に用いられるオートバイのことを指します。

【復刻すれば売れる!?】ヤマハ&スズキも作ってた! 懐かしの「ビジネスバイク」たち(写真)

 一部地域では、「父つぁんバイク」や「突撃バイク」という意味から、「トツバイ」とも呼ばれたこれら趣味性よりも実用性を重視したオートバイは、昭和の時代においては人々の生活や経済活動を支える重要アイテムでした。

 広い意味では、業務に使うバイクはすべてビジネスバイクと呼べるかもしれません。事実、「Uber Eats」などのフードデリバリー業界では、ホンダ「PCX」や「ジャイロキャノピー」、ヤマハ「トリシティ」などのスクーターが人気を集めています。バイク便業界では、ホンダ「CB400スーパーフォア」や「VTR250」などのネイキッドバイクがよく使用されているようです。

 ここでは、業務での使用を前提に開発され、大型リアキャリアを標準装備した単気筒もしくは2気筒のMT(マニュアル・トランスミッション)車、つまりレトロタイプなビジネスバイクに絞って話を進めていきます。

 ビジネスバイクに求められるポイントは、良好な燃費性能に加え、税金や自動車保険料、メンテナンスコストが低く抑えられていることが重要になります。さらに、誰にでも扱いやすい操作性や十分な積載能力も必要となります。そうしたことから昭和の時代に誕生したビジネスバイクは、2ストロークもしくは4ストロークの空冷単気筒エンジンが採用されていました。

 業務で使用するバイクの多くは、狭い路地を効率的に移動し、狭いスペースでも駐輪しやすいよう125cc以下のミニバイクであることがほとんどです。スズキ「コレダ250TT」やホンダ「CD250U」など排気量250cc以下の軽自動二輪クラスも過去にはビジネスバイクに用いられたことがありましたが、業務用としては排気量が大きく、また高価であったこともネックとなり、1990年代中頃までにはほぼ淘汰されてしまいました。

日本中で使われたビジネスバイクたち

 そもそもビジネスバイクが登場したのは、戦後間もない1950年代のこと。戦前の日本では鉄道整備が優先されたことで、道路は未整備のまま放置されていました。郊外に出れば一級国道でも未舗装路が当たり前であり、戦災によって鉄道や道路、橋などは大きな被害を受けていました。また、モータリゼーションの遅れから自家用車は普及しておらず、庶民の移動・輸送手段といえば、自転車やリヤカー、徒歩が中心でした。

 そうした状況にあって、最初に普及したエンジン付きの乗り物が「バタバタ」と呼ばれる自転車用補助エンジンでした。ホンダ「カブF型」に代表されるこれらの製品は、既存の自転車に補助エンジンを取り付けることで、ペダルを漕がなくても走行できる手軽さから大変な人気となりました。

 戦後の混乱がひと段落すると、庶民の生活にもゆとりが出てきました。この頃になると自転車用補助エンジンに代わって小型バイクが普及します。現在ではバイクは趣味性の高い乗り物と見なされがちですが、当時は配達や営業など業務用が主流で、製造されたオートバイの多くがビジネスバイクでした。

 この時期に登場したビジネスバイクとしては、ホンダ「ドリームD型」(登場自体は1949年)やヤマハ「YA-1」、トーハツ 「PK53」などがあります。これらは、耐久性を重視して鋼板を溶接したプレスチャンネルフレームとし、シンプルな構造のバックボーンフレームやダイヤモンドフレームが採用されました。エンジンは簡便な構造の空冷単気筒2ストロークエンジンを搭載し、リアフェンダーの上には頑丈な大型キャリアを備え、ひとり乗りを前提にした設計が通例でした。

1960年代で時間は止まっても愛され続けた

 こうしたビジネスバイクのあり方を根底から変えたのが、1958年に登場したホンダ「スーパーカブ」でした。乗り降りがしやすいアンダーボーンフレームを採用し、女性がスカートでも無理なく乗ることができました。エンジンは静粛性、燃費性能、耐久性、整備性に優れた横型4ストローク空冷単気筒エンジンを搭載。さらにレッグガードや大型キャリアなどの装備も充実しており、瞬く間に人気車種となったのです。

 この画期的なビジネスバイクに触発された各メーカーは、「スーパーカブ」に似たモデルを相次いで発売しました。これにより1960年代中頃のビジネスバイクは、アンダーボーンフレーム車が主流となりました。

 一方、1960年代に入ると日本は高度経済成長期に突入し、庶民の間にもオート三輪や軽自動車が普及し始めます。その結果、これまでビジネスバイクが担ってきた役割は徐々に自動車に取って代わられました。やがてビジネスバイクは新聞や郵便配達、そば屋やすし屋の出前、銀行や保険の営業など、活躍の範囲が限られるようになるのです。

 そうした状況のなか、アンダーボーンフレーム車以外のビジネスバイクの需要は次第に減り、1960年代中頃にはバックボーンフレームやダイヤモンドフレームを採用したビジネスバイク車は定期的なモデルチェンジが停止されます。それでも一定の需要が見込まれたことから、マイナーチェンジを繰り返しつつ何十年も生産が続けられたものもありましたが、基本設計の古さは隠しようがなく、21世紀に入って施行された排出ガス規制に対応できずにそのまま静かにフェードアウトしました。

 現在、「スーパーカブ」を唯一の例外として、かつてのビジネスバイクは姿を消しました。しかし近年では昭和のテイストを色濃く残したレトロデザインが再評価され、にわかに脚光を浴びています。ビジネスバイクの中古車価格は総じて安く、シンプルかつ丈夫な設計なので維持しやすいこともあって、バイクファンの間ではカスタムの素材として人気となっているようです。

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』や『となりのトトロ』で描かれた、かつての昭和時代を生きたバイク。旧車が好きな人は、入門用として絶版となったビジネスバイクの購入を検討してみてはいかがでしょうか。(山崎 龍(乗り物系ライター))

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

トライクはよく見るのに… 昭和レトロの象徴「オート三輪」なぜ廃れた? 今も新車販売してますよね
トライクはよく見るのに… 昭和レトロの象徴「オート三輪」なぜ廃れた? 今も新車販売してますよね
乗りものニュース
「販売台数はイマイチだった…」ホンダ初の4輪車は、とんでもない高性能エンジンを搭載したぶっ飛びトラックだった!【ホンダ・T360】
「販売台数はイマイチだった…」ホンダ初の4輪車は、とんでもない高性能エンジンを搭載したぶっ飛びトラックだった!【ホンダ・T360】
月刊自家用車WEB
軽トラックはなぜ人気? 特徴と魅力をわかりやすく解説 MTならボケ防止にもなる!!!
軽トラックはなぜ人気? 特徴と魅力をわかりやすく解説 MTならボケ防止にもなる!!!
ベストカーWeb
「PG-1は本格派!?」「こんなに違うんだ…」オフテイストな原付二種スタイリング&ライポジ比較〈PG-1/ハンターカブ/クロスカブ〉
「PG-1は本格派!?」「こんなに違うんだ…」オフテイストな原付二種スタイリング&ライポジ比較〈PG-1/ハンターカブ/クロスカブ〉
WEBヤングマシン
いま、ネオクラシックカーを初めて手に入れたいと考える人が知るべき『5つの覚悟』とは?
いま、ネオクラシックカーを初めて手に入れたいと考える人が知るべき『5つの覚悟』とは?
旧車王
「ギアポジやっぱ欲しいよね」「キーでキャラがわかる!」オフテイストな原付二種の使い勝手比較<ヤマハPG-1/ホンダ CT125ハンターカブ/クロスカブ>
「ギアポジやっぱ欲しいよね」「キーでキャラがわかる!」オフテイストな原付二種の使い勝手比較<ヤマハPG-1/ホンダ CT125ハンターカブ/クロスカブ>
WEBヤングマシン
トランプさん、こういうアメ車なら日本でもヒットするかも!? アメ車が馬鹿デカかった時代にコンパクトかつキュートなルックスで売れまくったナッシュ・メトロポリタン
トランプさん、こういうアメ車なら日本でもヒットするかも!? アメ車が馬鹿デカかった時代にコンパクトかつキュートなルックスで売れまくったナッシュ・メトロポリタン
WEB CARTOP
「ちょっと異質」なJR川越線 “忘れられたような”存在のローカル線が大変貌できたワケ 今や日本トップクラスの“単線”
「ちょっと異質」なJR川越線 “忘れられたような”存在のローカル線が大変貌できたワケ 今や日本トップクラスの“単線”
乗りものニュース
梅雨のドライブはこれで万全!雨の日でも安心な中古車7選
梅雨のドライブはこれで万全!雨の日でも安心な中古車7選
グーネット
なんで「国際興業カラー」なの? 変えないの? 離れた地方で走るバスが“同じ色”の理由 運行会社役員に聞いた
なんで「国際興業カラー」なの? 変えないの? 離れた地方で走るバスが“同じ色”の理由 運行会社役員に聞いた
乗りものニュース
2025年版 自動車専門誌が選ぶ、最高のスポーツカー 10選 速さと楽しさを追求したクルマ
2025年版 自動車専門誌が選ぶ、最高のスポーツカー 10選 速さと楽しさを追求したクルマ
AUTOCAR JAPAN
【米国】ライバルは「アルファード」!? トヨタ「エスティマ“後継車”」全長約5.2mの流麗ボディ×低燃費パワトレ搭載の「8人乗りミニバン」がスゴい!「シエナ」どんなモデル?
【米国】ライバルは「アルファード」!? トヨタ「エスティマ“後継車”」全長約5.2mの流麗ボディ×低燃費パワトレ搭載の「8人乗りミニバン」がスゴい!「シエナ」どんなモデル?
くるまのニュース
2020年モデルでめちゃくちゃ電脳化したホンダの操りやすい600ccスーパースポーツといえば?
2020年モデルでめちゃくちゃ電脳化したホンダの操りやすい600ccスーパースポーツといえば?
WEBヤングマシン
2013年モデルでレプソル追加! ホンダの操りやすい600ccスーパースポーツといえば?
2013年モデルでレプソル追加! ホンダの操りやすい600ccスーパースポーツといえば?
WEBヤングマシン
充実のカラバリで再登場 ホンダ「CT125・ハンターカブ」オーナー必見!? 1/12スケール完成品模型が税込4400円で
充実のカラバリで再登場 ホンダ「CT125・ハンターカブ」オーナー必見!? 1/12スケール完成品模型が税込4400円で
バイクのニュース
発売が待ちきれない! 妄想しながら楽しんだバイク女子の東京モーターサイクルショー2025
発売が待ちきれない! 妄想しながら楽しんだバイク女子の東京モーターサイクルショー2025
バイクのニュース
カワサキの400ニンジャ、レアカラーはどれか知ってる?
カワサキの400ニンジャ、レアカラーはどれか知ってる?
WEBヤングマシン
「俺達のエフが帰ってきた!」「発売の予定は?価格は?」今年最大の注目バイク最新情報の現時点まとめ【2025年6月版】
「俺達のエフが帰ってきた!」「発売の予定は?価格は?」今年最大の注目バイク最新情報の現時点まとめ【2025年6月版】
WEBヤングマシン

みんなのコメント

58件
  • mak********
    お巡りさんのK90とか、この当時は2スト90のの黄色ナンバーを付けたビジバイが街中で多く見られました。
  • y_t********
    CD250Uとか欲しいぜ……
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村