ギア比とエアコンを改良し航続をプラス
プジョーe-208は、AUTOCARでは高い評価を与えているバッテリーEV(BEV)のコンパクト・ハッチバックだ。登場から数年が経過し、魅力を維持するべくフェイスリフトが施された。控えめだが、有用な内容を得ている。
【画像】同クラスではベストバイ プジョーe-208 競合の小型EVハッチバック ホンダeも 全113枚
2023年以降はパワーアップした158psの駆動用モーターと、僅かに大きい51kWhの駆動用バッテリーを搭載するとプジョーは発表している。しかし今回試乗した改良後のe-208は、2022年仕様として136psに50kWhという従来の組み合わせを維持している。
それでもエネルギー効率を高めるべく、走行用のファイナルレシオを変更。効率で勝るヒートポンプ式のエアコンも採用した。ちなみにこれは、兄弟モデルといえるクロスオーバーのe-2008にも施されたアップデートだ。
その結果、カタログ値で349kmから362kmへ航続距離が伸びている。大躍進といえる変化ではないものの、BEVユーザーならおわかりかもしれないが、実用上では大きな違いを生む数字だ。満充電なら、実質的に300km以上は走れることになる。
その一方で、2023年仕様のe-208の航続距離は399kmへ更に伸びるという。これは小さな変化とはいえないから、いつ買うべきか少々悩ましい。
小さなプジョーのハッチバックらしい走り
ご存知のように、プジョーは208に内燃エンジンもラインナップしている。それらと比べても、BEV版はパワフル。最大トルクは26.5kg-mもあり、運転していて力不足を感じる場面は殆どない。
駆動用モーターは回転直後から最大トルクを生み出すため、発進加速はすこぶる良い。小さなプジョーのハッチバックへ期待する通り、レスポンス良く走る。反応に優れ適度にクイックなステアリングと、柔らかめのサスペンションという組み合わせも好ましい。
試乗車は17インチ・アルミホイールを履いたGTプレミアムという仕様だったが、ツギハギの多い市街地の路面でも乗り心地は滑らかだった。狭い路地を流れるように走れる。
高速道路へ場所を移すと、若干落ち着きに欠ける様子。回生ブレーキは2段階に切り替えられ、効きを強くした方が運転しやすいと感じた。アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえる、ワンペダル・ドライブには対応していない。
また今回のフェイスリフトに合わせて、トリムグレードによっては標準装備が充実されている。英国仕様の場合、アクティブ・プレミアム+を選ぶと、プライバシーガラスとオートワイパー、オートエアコンが備わるようになった。
同じくアリュール・プレミアム+では、アルミニウム製のボディトリム・パッケージが付帯される。7インチと1サイズ大きいタッチモニターと、意外と効果的な3D効果で表示されるメーター用モニターも与えられる。
同クラスのBEVではベストの1台
e-208のインテリアには、従来どおり上級感が漂う。小さなステアリングホイールが膝元に来る、プジョー独自のiコクピット・レイアウトには慣れが必要だろう。ただし、コンパクト・ハッチバックとの相性は良いようだ。
ボディが小柄なだけに車内空間は限定的。荷室容量に余裕があるとはいい難く、リアシートは大人が快適に長時間過ごせる広さがない。セカンドカーとして選ばれることも多いであろうe-208では、リアシートは専ら子供が座るか、荷物置き場になるのだとは思うが。
フェイスリフト後のe-208の英国価格は、エントリーグレードで3万195ポンド(約501万円)から。このクラスとしてはやや高めで、ひと回り大きいBEVの価格帯にも近い。e-208より安価に、英国では航続距離が長いMGモーターのMG4も選択できる。
プジョーe-208は軽快な走りと魅力的な見た目がバランス良く組み合わされた、好感触な小型BEVハッチバックであることに変わりはない。現在の同クラスのモデルでは、ベストの1台に数えられる仕上がりだといえる。
プジョーe-208 GTプレミアム(英国仕様)のスペック
英国価格:3万4345ポンド(約570万円)
全長:4055mm
全幅:1745mm
全高:1430mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:8.1秒
航続距離:362km
電費:7.2km/kWh(予想)
CO2排出量:−
車両重量:1455kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:50.0kWh
急速充電能力:−
最高出力:136ps
最大トルク:26.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション
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