現行型で7代目となるSクラスの前に始祖となる3世代が存在した
メルセデス・ベンツのフラッグシップ「Sクラス」の“S”とは、真の高級車「SUPER」の頭文字をグレード名にしました。それゆえ常に革新技術を開発することによって、自動車の未来を切り開き、絶対的な存在感、威厳を示して今日に至っているのがSクラスであり、そのグレード名を名乗るには非常に高いハードルがありました。その歴史を振り返ります(1951年発表の220/300シリーズや1963年発表のW100型600リムジンは除く)。
マツダ「ルーチェ」が「広島ベンツ」と呼ばれたのはなぜ? サウンドセレクターに「演歌」を用意し「Sクラス」の上をいってた!?【カタログは語る】
1953-1961年:Ponton(W120/W180/W128型) Sクラスの真の原点となった中型セダン
1953年に中型セダン180/W120型を発表し、その上級版が1954年に発表した220/W180である。この220/W180はフロントに当時最新の85HPを発揮する2.2L直列6気筒エンジンを搭載。一気にモダンな「フラッシュサイド」スタイルの3ボックスデザインとなり、Ponton(ポントン)の愛称がつけられた。この「フラッシュサイド」とは、それまで前後のフェンダーが独立していたが、ドアとボディサイドパネルが同一面となった現代スタイルの基本となった。さらにキャビンは堅牢に造り、ボディ前後は衝撃を吸収する世界初の衝撃吸収構造のセミモノコックボディとした。このポントンはSクラスの原点といえるモデルである。
1959-1971年:フィンテール220シリーズ(W111/W112型) パワステや2系統式ブレーキシステムなど新技術を積極採用
1959年に登場した220シリーズW111型/W112型は、ボディ前後に衝撃吸収式構造を備えたフルモノコックのボディを採用し、頑丈なキャビンも衝撃を受け止める内装材を多用した画期的な安全設計であった。縦目のヘッドライトやフィンテールを採用したスタイルが特徴で、通称「ハネベン」と呼ばれた。1961年に追加した3Lエンジンを搭載した300SEは、Sクラス初の4輪ディスクブレーキ、パワーステアリングや4速オートマチックトランスミッションにエア+コイル式サスペンションなど新技術を積極採用。後に世界の主流となる2系統式ブレーキシステムも搭載し、安全性がさらに進化した。
1965-1972年:250シリーズ&300シリーズ(108/W109型) “S”の名は使っていたが真のSクラスではなかった
1965年にフィンテールを持たないスマートなスタイルにフルモデルチェンジしたW108型/W109型250S/SE、300S/SE/SELをフラッグシップモデルとして発表。全長4900mmの標準ボディとホイールベースを100mm伸ばしたロングボディ(300SEL)を用意した。エンジンは当初2.5Lと3Lの直列6気筒でスタート。さらに1968年に2.8Lの280シリーズが登場すると、最高峰リムジンの600/W100型から6.3LのV8エンジンを移植した300SEL 6.3も追加。最高出力250HPを発揮し、最高速度は220km/hを実現。そのパフォーマンスは他の追従を許さない圧倒的なセダンだった。
奇しくも同年にジャガーがXJシリーズをデビューさせた。さらにBMWも高性能モデル開発の声も聞こえてきた。そこで、メルセデス・ベンツはこれら競合車種を向い討つべく、超高性能モデルの開発を進めたのであった。
先代フィンテールのW111型/W112型および、フィンテールを持たないスマートなW108型/109型のSシリーズは、メルセデス・ベンツがいう真の意味でSクラスではなかったのだ。
1972-1980年:初代Sクラス(W116型) Sクラスの車名を正式に与えられた
1972年に登場したW116型でSクラスの車名が正式に使われるようになった。これが事実上の初代Sクラスである。じつは筆者が同年にメルセデス・ベンツの輸入車会社に入社したこともあって、とくに愛着があるモデルだ。
最大の特徴は横長ヘッドライトを採用し、安全性の追求がより徹底された。一気に進化したボディの前後衝撃吸収式構造や大型ダブルバンパー、キャビンは頑丈だが衝撃を柔らかく受け止める内装材の採用。当時、社会問題となった自動車の安全性について先進的な回答を示した。ラインナップは280SE、350SE、450SE/SEL(ロングホイールベース)と変わり、エンジンは2.8L、3.5L、4.5Lの3タイプだった。1975年には280HPを発揮する6.9L V8エンジンを搭載した450SEL 6.9も追加された。新Sクラスの450SE/SELは「1973年ヨーロッパのカーオブ・ジ・イヤー」を獲得。1978年には乗用車としてABS(アンチロック・ブレーキシステム)を世界初装備した。
ちなみに、ロールス・ロイスは1965年に高級ビジネス市場に向けて同社としてはコンパクトな「シルバーシャドウ」を投入していた。じつは、初代Sクラス/W116型はそれに対するメルセデス・ベンツの解答だった。
1979-1991年:2代目Sクラス(W126型) ABSやSRSエアバッグの世界初標準装備化などトピックス満載
オイルショックの1970年代の最後に登場した2代目のSクラスは、全幅を50mm狭めて1820mmとし、空力性能を追求したスタイルや軽量化が注目を集めた。これはもちろん燃費低減が目的である。また、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)や運転席SRSエアバックを標準装備するなど、世界初となる革新的な技術を次々と投入して、安全性がさらに進化。最終的に5.6L V8エンジンを設定して圧倒的な動力性能も合わせ、まさに世界のクルマの頂点に君臨した。サスはフロントが変則的なダブルウィッシュボーン(ゼロ・スクラブのステアリング・ジオメトリー)、リアはセミトレーリング・コイルの独立懸架にも一層の磨きが掛かった。
とくに、安全性は他の追従を許さないレベルに達した。つまり、能動的安全性の技術的進歩は顕著であり、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)、ASR(アクセレレーション・スキッドコントロール)、そしてリミテッド・デフなどの標準装備化を実現。受動的安全性においてもボティの衝撃吸収能力を一段と向上し、SRSエアバックもドライバー側のみならず助手席側にも装備した。またW126型はとくに走行快適性が重視された。スタートのテールの沈み込みや、制動時のノーズダイブも抑えて常にフラットな姿勢の走行を実現した。
1991-1998年:3代目Sクラス(W140型) ボディサイズが拡大され2重ガラスなど車内環境を向上
12年ぶりのモデルチェンジとなった3世代目Sクラスは1991年に登場した。フラッシュサーフェイス化を徹底し洗練されたスタイリングのボディは全長5120mmまで大型化され、エンジンはついに6LのV12気筒を搭載する堂々たる存在感を持ったモデルとなった。ナビゲーションや電子制御5速AT、ESP(エレクトロ・スタビリティ・プログラム)、SRSサイドエアバック、さらにBAS(ブレーキアシスト機構)と最新の装備が積極的に投入された。サイドウンドウは2枚の3mm厚ガラスの間に空気層を設けた構造で、曇り難くクリアな視界を確保しつつ高い断熱性と遮音性を実現した。相変わらず四方の見晴らしが良いドライビングポジションが確保され、操舵角が大きいため、はた目で見るよりも小回りが楽だったのである。エンジンやシャシーなどすべての技術・装備・安全性はライバルに一段と差をつけて充実している。
1998-2005年:4代目Sクラス(W220型) 高級車ハイパフォーマンス競争に終止符を打った5.5L V12ツインターボ
1998年に登場した4代目は、コンパクト化されたボディにソフトな印象の流麗なスタイリングを与え、Sクラスの新しい方向性を示した先進モデルだ。Cd値0.27の空力ボディと大幅な軽量化、そして排気浄化性能に優れた3バルブヘッドを持つV型エンジンによって、環境性能は飛躍的に向上。一方で最高峰のS600ロングには5.5L V12ツインターボエンジンを搭載して、高級車のパフォーマンス競争に終止符を打った。エアマチックサスペンションや7G-TRONIC(7速AT)など、Sクラスの伝統に則って最新技術を真っ先に採用している。また衝突の危険を察知すると被害を最小限に抑えるべく、各種デバイスを連携させる「プレセーフ」を投入して安全哲学もさらに進化した。
以後のSクラスは周知の通りなので型式/年代だけを下記の通り明記。
2005-2013年:5代目(W221型)
2013-2020年:6代目(W222型)
2020年~:7代目(W223型)
現行7代目Sクラス/W223は2020年に発表され、さらに進化した安全性の集大成であるインテリジェントドライブを具現化。エクステリアは「センシャル・ピュアルティ」と称するデザイン思想に基づきラインやエッジを大幅に削減し、シームレスドアハンドルを採用した。インテリアはインパネセンターに12.8インチのディスプレイを装備し機能を集約している。
また、メルセデスマイバッハSクラスは究極の洗練を具現化した贅沢なサブブランドとなり、メルセデスAMG S 63Eパフォーマンスはハイパーフォーマンスのエキサイティングなモデルである。さらにメルセデスEQSは未来のモビリティのための新たなスタンダードを造り出す革新的なBEVである。メルセデス・ベンツは、Sクラスにも適用される個性ある特別装備の選択可能な「MANUFAKTURプログラム」を外観と内装に導入している。
このようにメルセデス・ベンツのフラッグシップであるSクラスの歴史は、革新技術の歴史ともいえるだろう。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
1.2リッターエンジン搭載で「400馬力オーバー」! 日産の斬新「MRスポーツカー」に反響殺到! 「本当に美しい」「元祖e-POWER!?」の声も! 全長4.4m軽量ボディのインフィニティ「エマージ」米国モデルに熱視線!
なぜ日本のEVバスは「中国BYD」だらけ? 国内企業が勝てない“価格と実績”の壁
購入後「1年以内に売られる新車」トップ10! 早期売却の背景に何が起きているのか?
まだやってるんすか!? 「ナンバープレートの封印にペットボトルのキャップ」取り締まられたら恐ろしいことに
葛飾区長が「失敗」宣言? 「青砥駅」の機能不全と空白30年──交通結節点が立石再開発に飲み込まれる日の現実味
なぜ日本のEVバスは「中国BYD」だらけ? 国内企業が勝てない“価格と実績”の壁
まだやってるんすか!? 「ナンバープレートの封印にペットボトルのキャップ」取り締まられたら恐ろしいことに
4年ぶり復活! ホンダ新型「“5人乗り”SUV」発表! “アコード”エンジン&高性能4WD搭載! “2列目”が広すぎる「6代目CR-V」どんなクルマ?
「やっぱトヨタはすげぇよ…」新型スーパーカー『GR GT』発表にSNSは興奮の渦!「V8ツインターボはあつい!」「会長は国宝」など絶賛
1.2リッターエンジン搭載で「400馬力オーバー」! 日産の斬新「MRスポーツカー」に反響殺到! 「本当に美しい」「元祖e-POWER!?」の声も! 全長4.4m軽量ボディのインフィニティ「エマージ」米国モデルに熱視線!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント