最高傑作のホモロゲーション・ロードカー
シリーズ作の完成度は、初作がベストか。映画でもクルマでも、しばしば話題になるテーマだと思う。それでは、BMW M3はどうだろう。最新型のクーペはM4へ名前を変え、第6世代へと進化を果たしている。
【画像】BMW M3 初代E30型と最新G80型 M4とコンバーチブルも 全60枚
M3として初作となるE30型は、1985年に発表。AUTOCARでは1987年に初試乗しているが、「恐らく、これまでで最高傑作といえる仕上がりのホモロゲーション・ロードカーでしょう」。と絶賛している。
当時のモータースポーツのレギュレーション、グループA規定に合致させる目的で、M3は2+2というシートレイアウトの2ドアクーペで誕生した。大きく膨らんだフェンダーラインに、前後へ追加されたエアロキットが、見た目の特長だった。
何よりM3の目玉といえたのが、最高出力202psを発揮した、自然吸気の2.3L直列4気筒エンジン。1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの5速MTと組み合わされ、ノーマルの3シリーズを遥かに上回る勢いで加速した。
M3は市場の強い支持を集め、発表初年度に公道用モデルの規定台数、5000台を販売。1991年の生産終了までに、さらに1万台以上を生産している。
その人気を強力に後押ししたのが、ツーリングカー・レースでの活躍。ニュルブルクリンク24時間レースでは5度、スパ24時間レースでは4度も優勝している。追ってラリー・マシンとしてもM3は投入されているが、こちらは期待ほどの成果を残していない。
初代M3の真骨頂はハンドリング
端正なルックスに不足ないパフォーマンス。確かな歴史を残してきただけあって、走りも痛快だ。遥かに大きく成長した、最新のM3とは別次元のドライビング体験が得られる。
初代M3の車重は約1200kg。直列4気筒は極めて回りたがりで、7250rpmのレッドラインへ勢いよく飛び込む。特徴的な4気筒のノイズを放ちながら。
0-97km/h加速は7.0秒、最高速度は234km/h。現代の基準でいえばハッチバックでも達成可能な数字だが、初代M3の真骨頂はハンドリングにある。
出色の後輪駆動シャシーは挙動の予測が容易で、ドライバーの操作に対し正確に反応。サスペンションの煮詰めにも不足なく、高速コーナーや不意の凹凸にもうろたえない。
ドライビングポジションも優秀で、操作系を通じたクルマとのコミュニケーションも取りやすい。真のドライバーズカーといえる内容を備えていた。
そんな初代M3は、毎年のように限定仕様が登場し、改良が重ねられている。モデル末期の方が、より速く能力も高い。
日本へは正式導入されなかったが、1989年に登場したスポーツエボリューションの場合、4気筒エンジンは2.5Lへ排気量を拡大。最高出力は241psへ引き上げられている。600台の限定モデルだった。
特に珍しい初代M3といえるが、25台しか作られなかったラヴァグリア・エディション。その希少性から、最近では6万ポンド(約930万円)から15万ポンド(約2325万円)と、非常に高い価格で取り引きされている。
高い価格は優れた評価の証
希少モデルでなくても、E30型BMW M3はクラシック・スポーツとして高い人気を保っている。以前は手頃な価格帯から探すことができた時期もあったものの、現在は上昇傾向。残存台数も減っており、今後も高めの価格を維持するだろう。
その価格こそ、歴代モデルでの評価を証明しているともいえる。E30型のBMW M3は、史上最高傑作の1台といっていいだろう。
シリーズ作の完成度は、初作がベストか。BMW M3の場合なら、自信を持ってイエスと答えられると筆者は思う。
新車時代のAUTOCARの評価は
このホモロゲーション・スペシャルは、公道用モデルとしての実用性と、レーシングカーらしい能力とを見事に融合させている。濡れた路面でも乾燥した路面でも、挙動は予想しやすく扱いやすい。
サスペンションは引き締められ、扁平率55のタイヤを履いている。乗り心地が犠牲になっているかと思いきや、快適性が大きく損なわれていない点も特長だ。 (1987年4月15日)
専門家の意見を聞いてみる
ダン・ノリス氏:ミュンヘン・レジェンド社代表
「E30型BMW M3のオーナーです。このクルマを経験していなければ、BMWの専門ショップとはいえないでしょうね。歴史的にも重要なモデルです。E30 M3が存在しなければ、モータースポーツでの高い評判をBMWは掴めなかったかもしれません」
「わたしが最も好きなポイントは、その操縦性。クルマと一体になっているような感覚があります。現実的な速度で、不足ないスリルも味わえます」
「機械的な信頼性は高いといえます。エンジンはツーリングカー・レースに出ていたマシンのものと、ほぼ同じ。走行距離が24万kmを超えても、力強く走るM3を何台も見ています」
購入時に気をつけたいポイント
トランスミッションとデフ
クラッチペダルが重い場合、交換が必要。クラッチが摩耗すると、レリーズベアリングに負荷がかかり、余計に高価な修理へつながる場合がある。
試乗が可能なら100km/h前後まで加速して、アクセルペダルを放して聞き耳を立てる。ディファレンシャルから唸りが聞こえてくるようなら、ピニオンベアリングの交換時期のサイン。
サスペンション
姿勢制御が緩く感じたり、ふらつくようなら、サスペンション・ブッシュの摩耗が原因かもしれない。ボールジョイントやロワー・ステアリング・カップリングと同様に、リア・サブフレームのブッシュもヘタる。
ブッシュ類の価格は、それほど高くない。交換作業も難しくはない。
エンジン
アイドリングが不安定な場合は、吸気マニフォールドからエア漏れしている可能性がある。エンジンオイルのにじみは珍しくない。サンプ周辺とヘッドガスケットから、盛大に漏れていないか確認はしたい。
ボディとインテリア
サンルーフやリアライトのラバーシールが劣化し、雨水がボディ内部へ侵入することがある。車内や荷室のフロアが湿っていないか確かめたい。フロント・スカットル部分のドレインホールが塞がっていないかも、確認ポイント。
知っておくべきこと
S14型と呼ばれる2.3Lエンジンは、基本的に堅牢でチューニングの許容範囲も大きい。鋳鉄製のブロックは、F1マシンに搭載されたM10型4気筒ユニットとも設計を共有しており、こちらはクオリファイ・モードで1400馬力にも耐えることが可能だった。
また2.3Lユニットには、M5が積んだS38型直列6気筒エンジンから派生した、4バルブヘッドも搭載されている。その結果、S14型エンジンは高回転が大好き。レース用チューニングを施せば、ターボを追加せずに350馬力の発揮も可能だった。
英国ではいくら払うべき?
6万ポンド(約930万円)~7万9999ポンド(約1239万円)
初期型のE30型BMW M3を英国では探せる価格帯。走行距離は10万kmを超えている場合が多い。ノーマル状態のものも含まれるが、チューニングされた例も少なくない。
8万ポンド(約1240万円)~9万9999ポンド(約1549万円)
エボリューション2など、特別仕様のM3を英国では探せる。通常のM3なら、ノーマル・コンディションで走行距離が短い例も狙える。欧州では、コンバーチブルも稀に売りに出ている。
10万ポンド(約1550万円)~12万4999ポンド(約1936万円)
50台限定だったエボリューション1が射程に入る価格帯。走行距離は長めだが。
12万5000ポンド(約1937万円)以上
エボリューション1やスポーツエボリューションなど、希少なM3が選べる。ノーマルでも走行距離が非常に短い極上のM3なら、この価格帯まで奮発する必要がある。
英国で掘り出し物を発見
BMW M3 2.3 登録:1989年 走行距離:10万7800km 価格:7万4995ポンド(約1162万円)
走行距離が10万kmを少し超えた程度で、現在の相場では合理的な価格の付いた、初期型のE30 M3。限定モデルではないものの、かなり状態は良いようだから、検討する価値は充分にあるだろう。
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みんなのコメント
ポルシェの古いのとBMWの古いのでは少しニアンスが違うのは確か
当時の325に乗っていたので、あの6気筒のフィーリングが欲しかった。
個人的にはE36のM3 3.2で6気筒が積まれてこれに憧れて最終型を買ったが本当によかった。
スタイルも大人しく、321馬力と6MTのマッチングは最高だった。
当時の993にも負けないくらい早かった。