過剰最適化する宅配網
2025年7月1日、Amazonは日本国内に新しく全国6か所のデリバリーステーションと16か所の即日配送拠点を設けることを発表した。これにより、EC物流の仕組みがこれまでにない規模で再編されつつある。
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今回の計画では、23時59分までに受けた注文を、翌日に届ける体制を全国に広げようとしている。物流網をさらに細かく整え、対応の速さを高めることで、日本の宅配市場における影響力を一段と強めようとしている。
しかし、本当にすべての人が「翌日配送」を求めているのだろうか。
利便幻想が生む供給主導型消費
多くの消費者は、欲しいものをできるだけ早く手に入れたいと考える。それはごく自然なことのように見える。たしかに、子育て中の家庭や、急に生活必需品が必要になるような状況では、すぐに届くことが重要である。そのようなニーズに対応できる仕組みが整えられること自体を否定する理由はない。
しかし、日常的に買われる商品――例えば書籍、文具、日用品の多くは、翌日に届かなくても特に問題はない。それにもかかわらず、翌日配送のサービスが当たり前になると、消費者の行動も変わっていく。「急ぎではないが、早く届くならその方がよい」と考えるようになり、即達を前提にした消費が広がっていく。ここには、需要が先にあったのではなく、
「整備された配送インフラに人々の期待が合わせられていく」
という逆転現象がある。
配送スピードが上がれば上がるほど、人は待つことへの耐性を失っていく。その結果、本来は急がない消費者までもが、急がざるをえない状況に取り込まれていく。もしこれが利便性という名目のもとで進んでいるとすれば、問いが浮かび上がる。
「このスピードは、誰のためのものなのか」
「スピードの呪縛ではないのか」
Amazonが行う物流への投資には、単に利便性の向上だけでなく、市場再編という意図も含まれている。他のネット通販業者との差を広げ、模倣が困難な配送網を築くことで、消費者を囲い込もうとしている。スピードという優位性を確立すれば、価格や商品の魅力で勝負する小規模な競合は、選ばれにくくなる。
とりわけ重要なのは、急がない商品に対しても過剰なスピードでの配送が行われた場合である。そのような状況では、他社もそのスピードに追従せざるをえなくなる。たとえ他社が「ゆっくり配送」によって物流コストを削減し、価格を下げようとしても、多くの消費者が翌日配送を当然と考えてしまえば、その戦略は届かなくなる。こうしてスピード競争が進むことで、市場の多様性は失われる。
本来、配送の速さはサービスのひとつにすぎない。しかし、それが最低限の前提のように扱われるようになると、競争の軸は一方向に偏る。その結果、市場の流動性は損なわれ、支配的な企業の立場はより強くなる。
拡大する即配の副作用
スピード配送の広がりは、都市の消費者にとって便利になるという話だけでは終わらない。地方都市や過疎地域でも「都会と同じ速さで届くこと」が当然とされれば、物流を支える側は大きな負担を抱えることになる。大量の移動や人手が必要となるからである。過去には、宅配業者の一部で再配達や夜間配送の負荷が限界に達し、社会問題として注目された例もある。
Amazonはロボット技術や自動の仕分けシステムを導入している。作業を効率化するのが目的である。しかし、運転手や倉庫での作業員が必要なくなるわけではない。むしろ即日や翌日といった厳しい時間制限のなかでは、正確で速い人の作業がより求められる。その結果、物流業界では働き手が足りなくなり、不安定な雇用がさらに広がるおそれがある。
また、エネルギー効率のよい設備や再生可能エネルギーの導入も進められている。これだけを見ると環境に配慮した取り組みに見える。しかし、実際にはそうとは限らない。配送の回数が増えれば、たとえ一部の車両が電気で動くとしても、全体としての輸送の負担は大きくなる可能性がある。省エネと高速配送は、必ずしも両立しない。
今のネット通販の仕組みは、
「欲しいときにすぐ買える」
ことを当たり前にした。そして今、すぐ届くことがさらに加速している。この変化を支えているのは、多くの配達員や倉庫で働く人々、そして夜間も動き続ける物流のしくみである。
だが、こうした人々の働きは十分に見えているだろうか。正しく評価されているだろうか。スピードばかりが強調され、その裏にある苦労が見えなくなっているのなら、その利便性のあり方を見直す必要がある。
消費者にも選ぶ余地はある。例えば
「配達は3日後でよい」
とあらかじめ設定しておけば、急ぎではない人の存在がはっきりと見えるようになる。こうした多様なニーズが見えるようになれば、物流のしくみも調整できる可能性がある。
配送競争が生む依存構造
配送の高速化は、消費者にとって好ましい進化であることは確かだ。ただし、それが
「唯一の正解」
として扱われるとき、他の課題が見過ごされるおそれがある。ネット通販の便利さは、時間に余裕のある生活を可能にする。一方で、配送の速さに対する無自覚な依存も生み出している。
今後、物流の仕組みがさらに変化すれば、スピード以外の価値――例えば環境への配慮や、働く人々にとって持続可能な職場環境――がどれだけ大切にされるかが問われる。その中で、すぐ届くことの意味を改めて考え、「あえて待つこと」を選べる社会のあり方が注目される。
誰もが急がされない社会をつくること。それこそが、これからの経済を支える新たな基盤となる。(猫柳蓮(フリーライター))
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