■ダイハツの「“超・低燃費”な軽自動車」がスゴすぎた!
2025年10月29日に「ジャパンモビリティショー2025」が開幕しました(一般公開は31日から)。
【画像】超スゴい! これがリッター60km走る「ダイハツ車」です!
各メーカーがさまざまな車両を出展していますが、なかでも注目を集めているのが新型コンセプトカーです。
過去のモーターショーを振り返ると、大きな反響を呼びながらも、市販化されることなくその役割を終えたものの、後のクルマづくりに大きな影響を与えたコンセプトカーが存在しています。
その1台が、2003年の第37回東京モーターショーで世界初公開された、ダイハツの「UFE-II(ウルトラ・フューエル・エコノミーII)」です。
UFE-IIは「リッター60km」(10・15モード走行)という、当時の市販ハイブリッドカーの2倍近い驚異的な燃費目標を掲げて登場し、会場は熱気に包まれました。
同時に展示されたオープンスポーツ4WDの「D-BONE」が「楽しさ」を象徴する一方、UFE-IIは「環境性能」を突き詰める存在として、ダイハツの二つの戦略的メッセージを発信。
多くのメディアはこぞってその先進性を報じ、「軽自動車の枠を超えた未来のファミリーカー」として、ダイハツが示したエコカーの新たな可能性に期待を寄せました。
その衝撃は一過性ではなく、発表から20年以上が経過した現在でも、SNS上では「この性能なら高くても買う」「なぜ市販化されなかったのか」と惜しむ声が後を絶ちません。
UFE-IIが生まれた背景には、2000年代初頭のダイハツが掲げた「スモールカーの可能性の追求」という明確な目標がありました。
そして、環境性能、安全性、そしてスペース効率というスモールカーに求められる要素を、未来技術でいかに高い次元で両立できるかを示す、壮大な実験車でもあったのです。
UFE-IIの革新性は、軽量化・空力・パワートレインといった要素を個別に高めるだけでなく、車両全体で最適化する「ホリスティック(全体的)なアプローチ」にありました。
エクステリアは「カットテール・ティアドロップシルエット」として知られる流体力学的に理想的な形状を追求。従来のドアミラーを廃して突起物を極力減らしたツルっとしたスタイリングや、床下の完全フラット化により、空気抵抗係数(Cd値)は0.19という驚異的な数値を達成しています。
特徴的なガルウィングドアは単なる意匠ではなく、側面の分割線を最小限に抑え、気流を乱さないための機能的選択でもありました。
インテリアは、インパネ中央に大型インフォメーションモニターを配置し、大人4人がしっかり乗れる室内空間を確保。心臓部には、660cc直噴アトキンソンサイクルガソリンエンジンに2基の電気モーターを組み合わせた高度なハイブリッドシステムを搭載していました。
また、徹底した軽量化によって車重はわずか570kgに抑えられ、転がり抵抗を大幅に低減する大径かつ幅の狭い専用タイヤの採用など、細部に至るまで燃費向上の工夫が凝らされていました。
しかし、これほどまでに完成度の高いクルマが市販されることはありませんでした。その裏には、いくつかの高い「現実の壁」が存在したのです。
その最大の壁となったのはコストだったと推測されます。Cd値0.19を実現する特殊なボディ形状や専用開発のハイブリッドシステムは、当時の市販化にはあまりにも高価でした。また、軽量化のため多用した特殊素材も量産には不向きといえるでしょう。
UFE-IIは市販化を前提としたモデルではなく、あくまで未来技術の可能性を示す「実験車」としての役割が大きかったのです。
UFE-IIの姿はショーの舞台からは消えましたが、そのDNAは幻で終わりませんでした。徹底した軽量化、空力性能の追求、そしてパワートレインの地道な効率改善という哲学は、「e:Sテクノロジー」のエンブレムを掲げるすべてのダイハツ車に受け継がれています。
その思想が最も色濃く反映されたのが、大ヒット作「ミライース」でした。また、その流麗なデザインは、後の「ソニカ」にも意匠面での影響を与えたといわれます。
なお、ミライースのデビュー前に、UFE-IIの後継コンセプトカー「UFE-III」が披露されています。
UFE-IIは、後のミライース開発における「北極星」の役割を果たし、スモールカーの未来を本気で考えたその情熱は、形を変えて現代の私たちの暮らしの中に息づいています。(佐藤 亨)
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