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“道具”としての美学──新型ルノー グランカングー試乗記

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“道具”としての美学──新型ルノー グランカングー試乗記

日本に上陸したルノーの新型「グランカングー」は、完成度の高い7人乗りだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。

新型ルノー グランカングーの特徴

移動そのものを楽しむためのツール──新型ルノー グランカングー試乗記

1.プロの道具っぽい風情がたまらない2.使える3列目シート3.走り出して気づくガソリンエンジンならではの魅力1.プロの道具っぽい風情がたまらない

神奈川県横浜市にある日産グローバル本社の車寄せに、異質な存在感を放つ1台が鎮座していた。それが新型ルノー グランカングーだ。

対面して驚かされるのは、やはりサイズだ。全長は標準ボディのカングーより420mmも長い。シトロエン「ベルランゴ」のロングボディすら凌駕するサイズだが、不思議と威圧感はない。それは、カングー特有の柔らかな面構成と、今回試乗した「クルール」が纏う「ベージュサハラ」のボディカラー、そして何より前後の無塗装ブラックバンパーが醸し出す"道具感"のおかげだろう。

日本の高級ミニバンが、クロームメッキをふんだんに使い、"押し出し"を競うのとは対極にある。グランカングーは、まるで使い込まれたツールボックスのように、そこに在るだけで豊かなライフスタイルを予感させる。

特筆すべきは、リヤの「ダブルバックドア(観音開き)」だ。本国のグランカングーは跳ね上げ式が標準だが、日本仕様はあえてこの観音開きを採用している。

狭い日本の駐車場で、巨大なテールゲートを開け閉めする苦労から解放されるだけでなく、何よりこの扉を開け放ったときのプロの道具っぽい風情がたまらない。

2.使える3列目シート

スライドドアを開ける。電動ではなく、ズシリと重い。日本なら軽自動車でさえ当たり前のパワースライドドアがなく、手動ドアが設定されている。

しかし、その重みのなかに剛性を感じ、ガチャンと閉まる音に信頼を覚えるのが、欧州車好きの性(さが)だろう。

乗り込んでみると、そこには広大な空間が広がっていた。運転席から振り返ると、まるでひとり広い野原にいるかのような、清々しい孤独すら感じる広さだ。

2列目、そして注目の3列目に座ってみる。身長170cmの筆者が3列目に座っても、頭上、膝まわりともに十分な余裕がある。体育座りを強いられる緊急用シートではない。独立した7つのシートすべてが、大人が長時間過ごせるよう設計されている。

床面はやや高いが、そのぶん見晴らしが良く、閉塞感がない。

日本のミニバンがリビングルームを目指し、豪華なキャプテンシートやオットマンで乗員をもてなそうとするなら、新型グランカングーはさながらベースキャンプだ。飾り気はないが、機能的で、タフ。汚れたワークブーツで乗り込んでもさまになる懐の深さがある。

3.走り出して気づくガソリンエンジンならではの魅力

エンジンを始動する。搭載するのは1.3リッターの直列4気筒ガソリンターボエンジンだ。

「この巨体に1.3リッター?」と懐疑的だったが、走り出した瞬間にその不安は消し飛んだ。

印象的だったのは、静かさだ。ディーゼルエンジンと違い、特有のガラガラ音や微振動が一切なく、回転フィールも滑らか。街中を流している限り、黒子に徹してくれる。

アクセルを踏み込めば、ターボが効いて必要十分なトルクが立ち上がる。もちろん、スポーツカーのような鋭さはないが、7速EDC(デュアルクラッチ)が巧みに変速し、痛痒なく車速を乗せていく。パワー不足を感じさせないセッティングは、さすがダウンサイジングターボの先駆者ルノーだ。

なぜ先駆者なのか? それは1977年のF1参戦にまで遡る。当時のF1は、3.0リッターの自然吸気(NA)エンジンが主流だった。そうしたなか、ルノーはレギュレーションで認められていたものの、誰も手をつけていなかった1.5リッターターボという極小排気量のエンジン(V6)をひっさげて参戦したのだ。

当初はトラブル続きで「イエローティーポット」と揶揄されたが、1979年のフランスGPで初優勝を飾ると、流れは一変。小排気量でも過給機を使えば大排気量NAに勝てることを証明し、F1にターボ時代を到来させたのである。

この技術はすぐさま市販車へフィードバックされた。「5(サンク)ターボ」や「18(ディズユイット)ターボ」など、1980年代初頭から積極的に小排気量ターボ車を市販化し、ノウハウを蓄積してきた。現代のダウンサイジングコンセプトとは時代背景や目的(当時はパワー重視)こそ異なるが、技術的な礎を築いたのは紛れもなくルノーである。

そのルノーが、現代の環境性能と走りの要求に応えるために送り出したのが、現行カングーに搭載されている1.3リッター直列4気筒直噴ターボエンジンだ。

このエンジンの最大の特徴は、「ルノー・日産・三菱アライアンス」と「ダイムラー(メルセデス・ベンツ)」による共同開発であるという点だ。

実用車であるカングーのボンネットの下には、メルセデス・ベンツの「Aクラス」や「GLA」などにも搭載されるものと素性を同じくする、ハイスペックなユニットが収まっている。

たとえば日産GT-Rのエンジンにも使われている「ミラーボアコーティング」技術を採用し、シリンダー内壁の摩擦抵抗を極限まで減らすことで、エンジンの効率と耐久性を向上させている。さらに、250barという高い圧力で燃料を噴射し、燃焼効率を高めている。

最新の成果であるカングーの1.3リッターエンジンは、単なる実用エンジンの枠を超え、ダイムラーとの協業やGT-Rの技術までもが注ぎ込まれた、贅沢で洗練されたパワーユニットなのだ。

▲次ページ:「移動そのものを楽しむためのツール」

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文:GQ JAPAN 稲垣邦康(GQ)
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