マツダ一人応援団の筆者が、現在市販されているすべてのマツダの車種に乗る無茶な企画。今回はマツダの売れ筋CX-30である。
「CX-30って発表からもう5年もたつのかぁ」今回試乗するにあたって、CX-30のことをちょっとだけ予習しながらそう思った。今現在、街で見かけるマツダのクルマで一番多いなと直感的に思うのはCX-5かCX-30である。どちらもデビューから結構な年月がたっているのだが、全く古さを感じないばかりか、良いデザインだなぁ、と思うことが多い。別に忖度しているわけではまったくなく、できるだけ客観的に見てもやはりいいデザインだと思う。そんなCX-30に今週は乗ることとなった。色は実に素敵なグレーである。
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スポーティーなSUVの最右翼がCX-30だ。これもお世辞抜きで言うが、マツダのクルマは全体のデザインと同じくらい、そのカラーリングが素敵だといつも思う。内外装を含めたカラーコーディネートが実に絶妙で、日本自動車界のおしゃれ番長的な存在ではないだろうか。
今回のCX-30も絶妙におしゃれな青みがかったグレーでおしゃれだなぁ、とつい口に出てしまう。こういうグレーは実に難しく、一歩間違うとポリバケツみたいになったり、金曜日の官庁街の飲み会みたいな雰囲気になりがちだが、このマツダのカラーは都会的というのか、今を感じる色と言えよう。
ドアを開けて乗り込もうとするとドアトリムなどにも絶妙にブルーの色彩を使った素材が用いられ、ますますおしゃれな高揚感が高くなる。よほど色の総括担当者のセンスが良いのだろう。とにかく今まで内外装のコーディネートでがっかりする広報車は一台もなかった。
CX-30もインテリアのデザインは秀逸。特にドアオープナーのデザイン処理は素敵だ。さてロータリーハイブリッドのMX-30から今回はディーゼルエンジンモデルのCX-30に乗り換えて走り始めると、実に自然で気持ちがふんわりしている自分に気づく。やはりロータリーハイブリッドという特殊なパワーユニットをはじめ、観音開きのドア、他のマツダとはちょっと異なった雰囲気のセンターコンソールをはじめとするしつらえなどなど、MX-30の醸し出す雰囲気や乗り味は、他のマツダを含めた世の中のクルマと大きく異なっていることを改めて実感した。言うまでもなくそれは良い悪いではなく、MX-30ロータリーハイブリッドという自動車自体の特性だし、それが好きな人にとっては唯一無二の魅力でもあるのだが。
前後のシートはデザインに統一感がある。座り心地も良い。という話はさておきCX-30だが、実はあの話題となった今回スカイアクティブX搭載のモデルに乗ってみたかったのではあるが、いつの間にか話題沸騰のエンジンを積んだモデルはひっそりとラインナップから外され、今は2リッター直列4気筒エンジンのガソリンモデルと、1.8リッターのターボディーゼルエンジンモデルのみの展開となっていたのであった。蛇足ながら、設定されていたはずのマニュアルミッションモデルもカタログ落ちし、今は全車6速オートマティックトランスミッションモデルのみの設定となっている。
確かにスカイアクティブXは価格がとびぬけて高いことを筆頭に、ハイオクガソリンを要求したり、ちょっと燃費が想像よりも悪かったりして、なかなか難易度の高いモデルではあったのだが、あれだけ苦労して生み出したエンジンがいつの間にか世の中から消えていたことはやっぱり寂しい。
ラゲッジスペースは奥行きがあって広い。もう少し内外装やグレード展開を工夫することで、特別感をあのエンジンモデルに与えるなどやり方はあったように思えるし、あまりに地味でアンダーステートメントな売り方もいけなかったのではなだろうか。
あと数年後にあの血尿が出るほど苦労して生み出した技術は、スカイアクティブZという形で昇華し、技術陣は報われることになるのだろうか……。とにかくこのまま消えてしまってはスカイアクティブXに注いだエネルギーがもったいなさすぎる。今後の展開を注視して暖かく見守りたい。
さて今回の試乗車は4輪駆動の1.8ディーゼルエンジンモデルのCX-30、一言で言って実に普通で自然でよろしい。そのサイズ感もあるのだろうか、走り始めた瞬間に馴染みの店を訪れた感じの居心地の良さである。けっしてうるさくなくなめらかに回る、のどかなエンジン音を聞きながら街中を走っていると、普通の生活で使う実用車というのは、これぐらいが上限でいいのかな、とも思う。
130PSの1.8Lターボディーゼルは必要十分の出力で、日常使用にはぴったり。ここ一番のパワーや迫力が足りないなどと言われることの多いこのエンジンだが、少なくとも昔のディーゼルエンジンモデルの自動車を知っている者にとっては驚くほど滑らかで、パワーが不足などということはない。日常使いをしている限り、これで十分。実用車は日々、無理なく乗っていることが心地よいことが大切なわけだし、何も遠慮せず乗って16km/lを記録した燃費など、いずれも文句はない。
ただし、積極的に運転しているとかなり好印象のCX-30 も、乗り心地に関しては不満点も多い。運転に集中している時はさておき、のんびりと脱力方向の運転(?)で流していると、路面のざらつきが妙に気になったり、路面の状況によっては結構大きなショックを正直に拾い乗員に伝えることがある。
センターコンソール、ダッシュボードなどのブルーの配色がお洒落。ピアノブラック仕上げでなければなお良いのだが。
さらに運転手以外の乗員として受動的に座っている場合、ひょこひょこと落ち着かない感じを覚えるし、スペースは十分ながらリアシートでは突き上げもかなり感じることが多い。しっとり感を感じるような乗り心地には程遠く、その点ではヨーロッパのライバルと目される車にまだ及んでいないと思う。だがそれも正確なステアリングフィールや、一歩リードした内外装のスマートさでなんとなく相殺されるような気さえするのだから、やはり格好や色というのは実に大切な要素なのである。
結局1週間普通の生活でCX-30を乗り、乗り心地の面以外ではこれが困るというような部分はなかった。むしろサイズ感を含めた使いやすさと自然な感覚は、実に心地よく快適な日々であった。そして乗っているとなんだかこれはあの、一時代を風靡した赤いファミリアの2025年版なのかもしれないとも思う。スタイリッシュでちょっと都会的で、決して時代に乗り遅れない雰囲気を持ち、毎日付き合えるマツダの主力車種、そういう位置づけと考えればわかりやすいのではないか、と思う。
メッキ処理されたエアロパーツは個人的には好きになれない。さて今回、価格のことを最後まで記してこなかったのは、理由がある。文中にも記した通り、今回の試乗車であるCX-30 は2.0Lのガソリンエンジンと1.8Lターボディーゼルエンジンの2種類がある方のディーゼルエンジンモデル(130PS /270 Nm)に2輪駆動と4輪駆動があるうちの4輪駆動を組み合わされたXD ツーリングというモデルである。
トランスミッションは6速のオートマティックトランスミッション、そこにオプションとして345,791円のシグネーチャースタイル(アンダーガーニッシュセットというエアダムスカート、サイドスカートなどのセット。個人的にはいらないと思う。と、18インチの黒く塗られたアルミホイール。こちらはかっこいいので欲しい)が追加され合計で3,876,791円の仕様であった。
これがCX-30 の最上級グレードのようだが、レトロスポーツエディションというグレードがカタログに載っており、こちらには今回の試乗車についていなかったBOSEサウンドシステムやテラコッタ・ブラックの合皮のシートなどが装備され、その価格は3,685,000円(4輪駆動モデル)となっている。さらにブラックセレクションというグレードもあり、そちらは3,510,100円である。金額的には試乗したXD ツーリングが最上級グレードなのだが、いまいちその差異の判別が難しい。まあ、欲しい装備で選んでくださいということなのだろう。
前後バンパー、ホイールアーチがブラックアウトされて強い印象を与える。なんともちょっとわかりにくいグレード展開ではあるが、とにかく最上級モデルならば、諸経費込みこみで400万円というのがCX-30 の価格のようで、正直込みこみ300万円くらいがCX-30 の価格だったけなぁ、と甘い現実を考えていた者にとっては、なかなか容易に手が出しにくい。
もちろん小さな高級車を目指すという目標は心から応援したいが、それにしては乗り心地が正直あともう一つだし、これだけ出せば兄貴分のCX-5買えなかったっけ、と思いながら1週間付き合ったCX-30をマツダ横浜研究所に返却し、その兄貴分であるところのCX-5に乗り換えることにした。
Text&Photo:大林晃平
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みんなのコメント
試験に留めて、初めから販売すべきじゃ無かった。只単に、マツダのイメージを貶めただけ。