今季、アルピーヌからF1フル参戦デビューを果たしたジャック・ドゥーハン。だが当初から、彼のシートが危ういことは昨年の11月から噂されていた。
後任となりそうなドライバーの名前も、その時点で知られていた。フランコ・コラピントだ。昨シーズン後半、ウイリアムズでその実力をアピールしたルーキーは、アルピーヌのリザーブベンチを磨くためにウイリアムズを去ったわけではないだろう。すぐにでもアルピーヌの服を着て、アルピーヌA525のコックピットに乗り込むよう言われてもおかしくない。
■アルピーヌF1に激震。オークス代表の離脱を発表……昨年夏に加入したばかり
アルピーヌは5月6日欧州時間夜にチーム代表のオリバー・オークスが辞任したことを明らかにした。エグゼクティブ・アドバイザーのフラビオ・ブリアトーレが、今後は暫定的にチーム代表の職を引き継ぐため、一時的にその権限が大きくなることになる。
こうした動きも、ドライバー交代の前兆なのだろうか……。しかし、ドゥーハンをクビにするのはまだ早いのではないか? 2025年シーズンの彼のスタートは、わずか6戦で交代に値するほど悪かったのだろうか?
motorsport.comの各国ライター陣が意見を述べた。
ドゥーハンは失敗する運命にあった。なぜ待つ必要が?— Fabien Gaillard
ドゥーハンはアルピーヌのフルタイムドライバーになった当初からプレッシャーにさらされており、そのプレッシャーはチーム上層部のあいまいな発言によって煽られてきた。
アルピーヌが彼の後任を検討するのが正しいかどうかは、ほとんど関係ない。問題は常に「もし」というより「いつ」なのだ。
ドゥーハンに残された時間は最初から残り少ないように思え、サイコロはコラピントに有利に振られているように見える。ドゥーハンがそれに気づいていなかったはずがない。しかし、彼がコース上でチームメイトのピエール・ガスリーに匹敵するようなパフォーマンスを見せることはほとんどなく、コストのかかるアクシデントをいくつか引き起こした。鈴鹿での大クラッシュがその最たるものだ。
ゆえにドゥーハンのシートが長く確保されると思えなかったのも事実。また、昨年のウィリアムズでの短い任期中にコラピントが見せたような活躍もなかった。(コラピントもクラッシュはしていたが、少なくともポイントを獲得する速さがあった)
端的に言えば、このドライバー交代は大きなリスクを伴うものではなく、コラピントの母国アルゼンチンからのサポートを得られる可能性もあるため、金銭的にも魅力的な機会となる可能性があるのだ。
彼は少なくとも6レース、自分の力を証明するチャンスを与えられた— Federico Faturos
アルピーヌが正しいかどうかではなく、結果が問題なのだ。オーストラリアでシーズンが始まってからまだ2ヵ月も経っていないが、最近のF1ではドライバーが結果を残せるかどうかを知るには6戦で十分だ。
事実を見てみよう。ドゥーハンは1ラップでの速さという意味で光を見せたこともあった。しかしガスリーに対して予選でここまで6勝2敗(スプリント予選を含む)、2人の平均タイム差は0.367秒だ。これがドゥーハンのベストカードだとしたら、あまりいい印象はない。
レースに関しては、ガスリーは6レース中5レースでドゥーハンを上回っている。どのグランプリでドゥーハンが勝ったかというと、中国GPでガスリーがドゥーハンを大きく引き離す11位でフィニッシュした後、技術的な違反で失格となったときだ。つまり、実際のところはドゥーハンの全敗となる。
一方、アルピーヌにはフランコ・コラピントというドライバーがいる。彼はウイリアムズでレースキャリアをスタートさせたときに明らかだったように、底が深い池に放り込まれても泳げることをすでに証明している。
わずか2戦目のバクーでQ3進出を果たし、ポイントを獲得。オースティンでもポイントを獲得している。最初の5戦での平均フィニッシュ位置は10.6位。マシンが違うとはいえ、ドゥーハンは15.6位だ。
コラピントはブラジルとラスベガスで大きなクラッシュを喫しているが、前者はインテルラゴスでの非常にトリッキーなウエットコンディションでのことで、後者はQ3進出のために全力を尽くしていたときに起きたもの。また、アレクサンダー・アルボンは後に、この年のウイリアムズFW46はドライビングが難しくなったとコメントしている。
もしこれが本当にアルピーヌでの生活の終わりを意味するのであれば、ドゥーハンには本当に同情できる。コラピントが控えていなければ、おそらく彼の状況は違っていただろう。
しかし、F1に参戦する時期を選ぶことはできないし、F1は誰も待ってはくれない。結局のところ、彼は6レースで自分自身を証明することができた。それは今季、全員に与えられたチャンスではないのだから……
ブリアトーレは今、”ブルツ”と同じことをするのか?— Christian Nimmervoll
ジャック・ドゥーハンとフラビオ・ブリアトーレの話を聞くと、オーストリア人の私はアレクサンダー・ブルツとフラビオ・ブリアトーレの話を思い出す。
1998年、ブルツはF1に参戦した次なる大器だった。ほんの数ヵ月間だが。しかし、ブリアトーレとのマネージメント契約を拒否し、その後人気を失ったことで、彼のキャリアは急降下した。
※編注:1997年にベネトンのリザーブとなったブルツは、鼻の手術のため欠場した同郷オーストリアの先輩ゲルハルト・ベルガーの代役として3戦に出場。同年イギリスGPでは3位表彰台を獲得し、翌年のレギュラーシートを掴み取った。1998年は4位入賞5回と健闘したが、以降は低迷。入賞わずか1回に終わった2000年限りでシートを失った。だがこれは、この年にチーム代表となったブリアトーレのマネジメント契約を拒否して不興を買ったことも大きいとされている。
ブリアトーレの全面的なバックアップがない限り、ブリアトーレが率いるチーム内でF1キャリアを維持するのは難しいということだ。
ドゥーハンが将来ワールドチャンピオンになれるかどうかについては議論があるだろう。個人的にはそうなるとは思わない。しかし、フランコ・コラピントとの交代に関する憶測がオフシーズン中、つまり最初のレースが行なわれるずっと前に浮上したという事実は、若いドライバーが潜在能力をフルに発揮するために必要な安定した環境を提供しているとは言い難い。
もし彼の将来が常に問題視されていなければ、ドゥーハンはもっといいパフォーマンスを発揮できただろうか? その可能性は高い。彼のパフォーマンスは、彼の才能と経済的インセンティブを持つコラピントをいつまでもサイドラインに置いておくことを正当化するのに十分だろうか? おそらく無理だろう。少なくとも長期的には。
オリバー・オークス代表が、この噂にきっぱりと終止符を打つチャンスが何度もありながら、そうしなかったのは残念だ。「今のところは……」とつく声明は声明ではない。「はい、でも……」と言って賛辞を贈らないのと同じことだ。これはかつてトト・ウルフが私に教えてくれたことだ。
もしチームが彼に全幅の信頼を寄せていたら、ドゥーハンがどれほどの力を発揮できたか見てみたかった。でも、その船はもう出航してしまった。可哀想なジャックには真剣なチャンスが与えられなかった。
アルゼンチンからのお金は痛くないが、まずはパフォーマンスだ— Filip Cleeren
個人的にはジャックにもっと多くの時間を与えてほしいと思う。なぜなら、私はルーキーには落ち着くのに十分なシートタイムを与えるべきだと信じているし(角田裕毅を参照)、誰の目から見ても彼はいいヤツだ。
しかしF1は言うまでもなく残酷で、パフォーマンスが重要なビジネスである。つまり、ドゥーハンのように一瞬速さを見せるだけでなく、F1史上最も接近した中団争いでチームがトップに立つために頼れる、より安定した、トラブルのないパフォーマンスを見せなければならないということだ。
様々な理由から、ドゥーハンにはまだそれができていない。
今の問題は、その一貫性が良い時期にやってくるのか、そうでないのかということだ。コラピントがシートに座ることになるかどうかではなく、いつ座るのかという問題であることは明らかだ。
そうでなければ、なぜわざわざウイリアムズから彼を引き抜いたのか。もしチームがドゥーハンの適応にあまりに途方もない時間がかかりそうだと感じているなら、あるいはまったく実現しないと考えているなら、避けられない事態を遅らせるよりも、多忙なヨーロッパでの戦いに先駆けて即席の後任ドライバーを投入する理由がわかるだろう。
コラピントの商業的なつながりも悪くないだろうが、まずはパフォーマンスが第一だと思う。
ドゥーハンはシンプルに印象を残せなかった。それはF1では問題だ— Oleg Karpov
ジャックには本当に同情する。彼ほど謙虚で礼儀正しく、親しみやすい男はパドックにはあまりいない。もしマイアミGPが彼のF1での最後のレースだったとしたら、それは本当に悲しいことだ。好きでたまらなかった仕事を失うことは、誰にとっても望むことではない。
とはいえ、彼は自分が結果を出さなければ、事態が急変する可能性があることを認識していたに違いない。そして結局、彼はそれができなかった。
確かにルーキーとして彼は非常に難しい状況に置かれ、すぐにパフォーマンスを求められたが、F1へ至る道でもっと成功していれば、状況は違っていただろう。
キャリアの2つの部分を切り離すことはできない。ジュニアカテゴリーで優秀であることを証明した者は、F1でのボスからより多くの時間を与えられる傾向にある。そしてたいていの場合、彼らは以前の選手権であまり輝けなかった者よりもずっと早く自分自身の力を証明するのだ。
ドゥーハンはF1で素晴らしいチャンスを得た。おそらく、彼はそのチャンスを得るにふさわしかった。結局のところ、そのチャンスをモノにできるかどうかは彼の手にかかっていた。非常に困難な状況、大きなプレッシャーの中で、それでも彼はチャンスをつかんだのだ。
フランコ・コラピントのF1への道もそれほど一筋縄ではいかなかったが、ウイリアムズのシートを手にしたとき、彼はF1パドックが非常に重視すること、つまりその走りで鮮烈な印象を周囲に与えたのだ。
そして、それが結局のところ、知るべきことのすべてなのだ……。
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