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997型のポルシェ911が欲しい【清水和夫のポルシェに乗らずに死ねるか】

掲載 更新 27
997型のポルシェ911が欲しい【清水和夫のポルシェに乗らずに死ねるか】

今、改めて997型911が欲しくなっている理由

COVID-19(コロナウイルス)の感染問題で自宅にいる時間が長くなり、私自身もネットサーフする時間が増えた。そこで気になるWEBサイトはポルシェの中古価格サイトである。家でグタグタしていると、スポーツカーに乗って遠出をしたくなる。そんな時のお供はポルシェ 911がいい。前に所有していた996型カレラ4を手放してからかなりの時間が経ったが、やはり手元に置いておきたいと思うこの頃だ。いま、欲しいのは997型911カレラ。997型は後期からPDKを採用したが、前期モデルの6速MTかティプトロ(トルコンAT)でもいいと思っている。

997型のポルシェ911が欲しい【清水和夫のポルシェに乗らずに死ねるか】

ここ十数年の間、911カレラは大きく変化してきている。991型は後期からターボになったので、自然吸気を味わうなら997型から991型前期までに限る。つまりストレート6とフラット6は完全バランスのエンジンなので(もちろんV12が極上であるが)、ノンターボの自然吸気のフラット6は私にとってのレクイエム(安息)なのである。

997型911カレラは2004年に発表されたが、996型で不人気だったティアドロップ型のヘッドライトが空冷時代の丸形のように復活した。車体はすこし大きくなり、フロントのラゲッジルームは中型のバッグがすっぽりと入るほど実用性が高まったのは嬉しいと思った。当時私は996型を所有していたので、997型はかなり魅力的に思えたのである。

初めての997型をアウトバーンとニュルでテスト

初めて997型911に出会ったときのことを思い出す。今から15年くらい前に新型ポルシェ 911カレラ(997型)を徹底的にテストするためにドイツへ乗り込んだことがあった。ポルシェ本社が用意してくれたのは真っ赤な911カレラ。996型からのシャシーとエンジンを踏襲しているが、新型911カレラはどこまで洗練されたのか? ロングドライブを敢行した。真っ赤なポルシェはイタリアではご法度だが(フェラーリがいるから?)ドイツでは構わないらしい。

フランクフルト空港には夕方に着いたが、晩秋のドイツはすでに周囲が暗い。ターミナルビルから溢れるライトで、目の前に用意された997型は真っ赤なポルシェだと気がついた。さっそくコクピットに乗り込み、アウトバーンを疾走する。合法的に200km/hアベレージで高速移動できるのはドイツだけだが、さすがに夜は他車のスピードも低い。

走行前にタイヤの残溝をチェックしドラポジを整える

そうそう、ステアリングを握る前にタイヤの溝をチェック。この行為は私がプロとして修行していたチームスバル時代に叩き込まれた習慣だ。パンクはしていないか、減り具合はどの程度なのか。ホイール(ハブ)のガタはないか、タイヤごと揺すってみる。そして手のひらでタイヤを触り温度も確認するが、気持ち的には「しっかりといい仕事をしてくれ!」という願いを込めた愛情表現。

この997型カレラはすでに1万7000km走行しているので、タイヤの溝はすこし厳しい。指をタイヤのメインの溝に入れてみると半分程度しか残っていない。雨には気をつけようと自分に言い聞かせる。しかし、997型はタイヤの耐摩耗性能が伸びている。996型の時代なら1万5000kmが限界だったが、ポルシェはタイヤメーカーに摩耗性能を高めるように要求し、さらにタイヤサイズを大きくしたことが耐摩耗性能がよくなったひとつの理由であろう。

走り出す前にドライビング・ポジションを決める。997型からステアリングのチルト機構がついた。ステアリングホイールの上端がダッシュボードの上端と一致するようにセットし、シートポジションは最も低い位置を選ぶ。前後の間隔はできるだけ遠くというのが俺流だ。マカオGPで壁にクラッシュしたときに悟った。近いと怪我をしやすいのだ。

もともとハンドルにしがみついて運転するようなクルマじゃないし、ドライビングポジションが近い名ドライバーは少ないと、あのポール・フレール先生も仰っていた。シートが決まると両手、両足が4本のタイヤと繋がっているような感じになる。自分の体の延長上にクルマがある。この感じはやっぱりポルシェならではのものだ。走り始めてすぐにこの感覚を覚えた。

夜のアウトバーンを平均200km/hで走る

速度無制限のアウトバーンを走るのはポルシェの特権かもしれない。日本の2倍のスピードなので緊張感が漂う。ただし勘違いしてはいけない。ポルシェでも速く走りたくないときはクルージングもできる。スピードはそのドライバーの責任において自由に選べるのだ。といっても、ゆっくり走る時は必ず、走行レーン(右側)を走らなければならない。ドイツでは右側から追い越すことを厳しく禁じている。たとえニュルブルクリンクのパブリック走行でさえ、速いクルマは左から抜くという原理原則が貫かれている。ルールを知らない旅行者が時折事故の原因となっているようだ。

最初は6速ギヤに入れ、120km/hを3000rpmくらいでクルージングする。これくらいの回転と速度で流していても、なんともいえない心地良さがある。この3.6リッター・フラット6は本当に気持ちが良いのだ。パフォーマンスとしてはこれで十分だ。その気になって回すと、一気にレブカウンターは7500rpm近くまで跳ね上がる。強烈なパワーというよりも、スムーズで洗練されたエンジンレスポンスだ。

6速MTはゲトラグでもなければZFでもない。カイエンと同じく日本産のアイシン精機製ギヤボックスだ。新型ボクスターに採用された6速MTはゲトラグ製だが、911カレラは日本製。ゲトラグとはタッチが違う。ボクスターのほうがショートストロークで小気味よく決まる感じだが、カレラのストロークは長めな感じで上質だ。

レインドライブは「第二の目」を使って

小雨が降り出してきた。日本の高速道路と違ってドイツの夜のアウトバーンには外灯がない。前方視界はますます悪くなる。ヘッドライトが照らし出す視界の情報を頼りに走れるのは120km/hくらいまでだ。すでにスピードメーターの針は200km/hを指している。左側の追い越しレーンを走行していたが、ハイドロプレーンが心配で右のレーンに戻り、スピードを150km/hくらいに落とす。タイヤの溝が気になったからだ。

夜間の雨天時にアウトバーンを飛ばすには、視界情報とステアリングから得られるインフォメーションが命。このステアリングフィールが「第二の目」となり、高速走行には欠かせない。997型911のステアリングはセンターフィールがものすごく締まっている。アウトバーンのコーナーでステアリングを15度以上切ることはめったにない。この15度の範囲内でのステアリングフィールも抜群にいい。切り始めの手応えがしっかりしている。ステアリングフィール&インフォメーションという性能は、最新のヨーロッパ車たちが最もこだわっているポイントだ。欧州車はここで勝負している。日本車はここで圧倒的に負けている。

アウトバーンでの直進性は悪くない。仮に両手を離してもまっすぐ走ってくれる。タイヤの溝が減っていることもあって路面のアンジュレーションで多少ステアリングを取られるが、心配したハイドロプレーンはあまり問題はないようだ。しかし、水深によっては油断できない。そうこうしているうち、無事にニュルブルクリンク近郊の宿についた。明日はニュルブルクリンク(オールドコース)を走ることになっている。体調のためにも早く寝ることにした。(続く)

TEXT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)

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みんなのコメント

27件
  • 991.1CSの7MTに乗っています

    911こそNAエンジンのMTで乗って欲しい

    踏み込んだ時の呼砲と突き抜ける快感

    ギヤを己れで選べる贅沢は最高です!!

    PDKは最強ですがMTは最高
  • ラリーだとステアリングは総じて近いし、レースでもステアリングって近目じゃない?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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