この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツがEV専用モデル「VLE」を発表し高級ミニバン市場へ参入
VWのID.Buzzって何と比較検討すべき? じっくり考えてみたけどアルファードもVクラスもライバルにならない孤高の存在だった
■31.3インチ8Kスクリーンなど後席のデジタル体験を重視した設計
■もし日本市場に導入されればアルファードの強力なライバルになるだろう
メルセデスが高級ミニバン市場に挑む
メルセデス・ベンツが、完全電動となるの新型車「VLE」を発表した。同社はこのモデルを「グランドリムジン」と呼ぶ。商用バンをベースとしたVクラスの延長ではなく、最初から高級乗用車として設計された、メルセデス・ベンツ流のミニバンであり、日本でいえばレクサスLMやトヨタ・アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジのような、ショーファードリブンとしても人気を博している高級ミニバンに真っ向から挑むモデルということになる。
VLEの最大の売りは、後席の体験だろう。格納式の31.3インチパノラマスクリーンを装備する「MBUX Rear Space Experience」は、アスペクト比32:9、8K解像度という圧倒的なスペックを誇る。画面は分割表示が可能で、複数の乗員がそれぞれ異なるコンテンツを楽しめる。800万画素のカメラも内蔵しており、ビデオ会議にも対応する。エンターテインメントだけでなく、移動オフィスとしての機能も想定されているわけだ。
31.3インチという画面サイズは、自動車の後席ディスプレイとしては異次元の大きさだ。家庭のテレビに匹敵するサイズの画面が、移動中のプライベート空間で使えることの価値は、VIP送迎や長距離移動の多いユーザーにとって大きい。
先代のVクラスは、商用バンのスプリンターと同じプラットフォームを共有していた。そのため、乗り心地や静粛性の面で、乗用車としては物足りない部分があった。VLEは、完全に新規開発されたEV専用プラットフォーム「VAN.EA」を採用する。バッテリーを床下に配置することで低重心化を実現し、エアサスペンションと組み合わせることで、リムジンにふさわしい上質な乗り心地を追求している。
欧州流の新しいショーファーカー
EVであることの利点も大きい。エンジンがないため、車内は極めて静かだ。ロードノイズや風切り音は残るが、エンジン音と振動がないことで、後席の快適性は非常に高いレベルになっていることが想像できる。航続距離は700km以上を確保しており、急速充電も15分で355kmぶんの充電が可能だ。実用面での不安は少ないといえるだろう。
車内は最大8人乗りの3列シート仕様で、両側に電動スライドドアを装備する。この点は、日本の高級ミニバンと同じパッケージングだ。ただし、ボディサイズは全長約5309mm、全幅1999mm、全高1916mm。全幅は2m近く、アルファードの全幅1850mmはもちろん、LMの1890mmと比べても100mm以上広い。これは欧州や米国の道路事情を前提としたサイズで、日本の都市部での使用を考えるとやや厳しい数値だ。
日本市場でLMやアルファード/ヴェルファイアが圧倒的な支持を得ているのは、後席の豪華さと実用性の高さにある。オットマン付きのキャプテンシートで移動できる快適性は、一度体験するとほかのクルマには戻れないという声も多い。VLEは、そこにデジタル体験という新たな価値を加えようとしている。
興味深いのは、メルセデス・ベンツがこのセグメントに本気で取り組んでいるという点だ。このVLEに続いて、さらに上級の「VLS」も予告されている。欧州メーカーは長年、ミニバンを商用車の延長、あるいはファミリーカーとして扱ってきた。それを高級車として再定義しようとする動きは、アジア市場、とくに中国での高級ミニバン需要の高まりを反映している。
VLEは2026年後半から欧州、米国、中国市場で発売される。価格は未発表だが、装備内容を考えると相当に高額になることは確実だ。日本市場への導入については発表されていないが、事実上の先代モデルとなるVクラスが販売されていたことを考えると、VLEも国内発売される可能性はある。
ただ、もし日本に導入されれば、国産モデルとは異なるアプローチの高級ミニバンとして、一定の需要は見込めるかもしれない。デジタル体験を重視するユーザー、EVならではの静粛性を求めるユーザーにとって、VLEは魅力的な選択肢となるし、日本におけるメルセデス・ベンツのブランド力には相当なものがある。アルファードが日本的な「おもてなし」の象徴だとすれば、VLEは欧州流の「モダンラグジュアリー」の体現だ。高級ミニバン市場に、新たな選択肢が加わる可能性は十分にある。
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