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【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 前編

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【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 前編

機運を逃さなかったジェンセンとモーガン

執筆:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)

【画像】 ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 C-V8にエアロGT、プラスフォーも 全105枚

撮影:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


一般的に、モーガンはスポーツカーでジェンセンはグランドツアラー、というカテゴリーに属するとお考えではないだろうか。両ブランドを多少でもご存知の読者なら、どちらかといえば。

でも、今回の2台は少し違う。ワインレッドが眩しいオープンのモーガン・エアロ8は、グランドツアラー的。メタリックブルーのジェンセンS-V8は、スポーツカーに該当するように思う。

2台ともにV8エンジンを搭載し、21世紀初頭に似たようなパフォーマンスを誇示した。1990年代に立案され、新車当時の英国価格も4万5000ポンド前後で遠からずだった。

1990年代の10年間はミレニアムを目前に、特別な空気感に包まれていた。自動車メーカーの中には再生の時期として行動し、成功したブランドもある。結果が伴わなかった例も多かったけれど。

定評を獲得していたメーカーにとっては、繁栄の時期でもあった。英国最後の主力メーカー、ローバー・グループでさえ、復活を遂げつつあるように見えた。数十年ぶりに。

マツダMX-5(ロードスター)の成功が、拍車をかけたのだろう。英国の自動車メーカーは、絶滅危機に瀕するブリティッシュ・スポーツカーを復活させるため、協力することさえあった。

ジェンセンとモーガンも、その機運を逃さなかった。そして今回の2台が誕生する。

ジェンセンS-V8を眺めると、オースチン・ヒーレー100へヒントを求めたように思えてくる。扇形の特徴的なフロントグリルや、全体のプロポーションをご覧いただきたい。

ヒーレー100を想起させるスタイリング

フロントフェンダーの後ろにはワークスマシンのようなスリットが入り、ボディカラーはドアのエッジを越えて車内に回り込んでいる。ダッシュボードのドライバー側には4眼メーター。ヒーレー100のミニマリズムを感じずにはいられない。

21世紀のクルマとして、能力は高い。スピードメーターは170mph(273km/h)まで振られ、レブカウンターは7000rpmでレッドラインが切られている。

V8エンジンを載せたジェンセンが、ヒーレー100と似ていることには理由がある。何しろ本来は、ヒーレーとして生まれる予定だったのだ。しかし、プランAはうまく進まなかったらしい。

アメリカで1997年に量産されたホットロッド、クライスラー(プリムス)・プロウラー。その成功を見たハワード・ガイとゲイリー・ドイという2人は、独自のスポーツカーを販売したいと考えた。そこで設計されたのが、後のS-V8だ。

当初はプロジェクト・リオという名前でスタート。スチールのモノコックシェルに、アルミニウムのボディパネルを被せ、GM社製のV6エンジンを搭載するロードスターという計画だった。

だが顧客の反応では、V6エンジンの最高出力、210ps以上が望まれていることを知る。そこでフォードのトリトン・ユニットへスイッチ。4.6LのV8エンジンが選ばれ、バルカンへプロジェクト名も変更された。

バルカンのプロトタイプは1998年と1999年の英国モーターショーでお披露目され、沢山の興奮と、300件もの前払金を獲得。固定ルーフのジェンセンC-V8として、2000年に正式発表された。

わずか23台で生産終了となったC-V8

翌2001年に発売がスタート。英国東部、マージーサイド州リバプールに工場が新設され、ジェンセンは見事な復活を遂げるかに思えた。しかしクルマの納車が始まると同時に、いくつもの不具合が発覚する。

毎週3台という生産体制で、工場の経営は急速に悪化。損益分岐点を下回り、2002年までに23台のC-V8が工場を離れた段階で投資者が手を引いてしまう。ジェンセンが真新しいスポーツカーを開発するには、当時900万ポンドでは足りなかったのだ。

残りのボディや部品はSVオートモーティブ社が買い取り、さらに10台ほどのC-V8を製造するが、ギブアップ。バルカン・プロジェクトには、優れたリーダーや品質管理、労働力が不足していたのだろう。

一方でバーミンガムの南、マルバーンに工場を以前から構えていたモーガンには、そんな悩みはなかった。エアロ8は1963年の+4プラス以来となる新生モーガンと考えたくなるが、実際はそこまで新しくもない。

目新しいグラスファイバー・ボディで身を包んでいるが、その内側のシャシーはオールドスクール。起源は1936年の4/4にまでさかのぼる。少し不釣り合いな+4プラスと、プロポーションはだいぶ異なるが。

2000年に登場したエアロ8は、それまでの+4プラスとは異なるアプローチが取られている。ボディはモーガンらしいカタチではあったが、遥かに優れた動的性能が与えられていた。最新技術を採用し、ブランドの魅力を拡張させていた。

BMWのV8エンジンを積むエアロ8

エアロ8の発端は創業者の息子、チャールズ・モーガンが1996年からモータースポーツに参戦させていた+8レーサー。金属加工を専門とするラドシェイプ社の協力を借り、モーガンの技術者たちによって開発された。

フラットフロアのアルミニウム製シャシーは接着剤で組まれ、シングルシーターのレーシングマシンに影響を受けた、ダブルウイッシュボーン式のサスペンションが備わる。フロントのコイルはインボードタイプ。トップウイッシュボーンは、片持ち式だ。

モーガンの伝統を巧みに受け継いだボディは、アッシュ材のフレームを採用。エンジニアのクリス・ローレンスとチャールズの手によるもので、アルミ製ボディパネルはスーパーフォーム技法を用いて成形されている。

V8エンジンはBMW由来。最高出力290psを発揮する、4.4LのM62ユニットを搭載する。トランスミッションは6速MTが組まれた。

モーガン・エアロ8の発表も暖かく迎えられた。寄り目だと揶揄された、ヘッドライトの処理を除いて。後年に目元の整形手術を受け、第5世代まで進化を重ね、エアロ8は2018年まで製造が続けられている。

その間、同じシャシーは復活した+8にも登用。実ることはなかったが、2015年のブリストル・ビュレットにも採用されている。

今回ご登場願った2台のうち、メタリック・ブルーのジェンセンは、長年のエンスージァストであるアラン・ロブソンがオーナー。6番目に製造されたS-V8で、走行距離は6500kmにも届いていない。過去のオーナーは、新車で購入した1人だけだという。

この続きは後編にて。

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