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カローラらしくないカローラ!? 異端児ルミオンに課せられたものとその顛末【偉大な生産終了車】

掲載 更新 16
カローラらしくないカローラ!? 異端児ルミオンに課せられたものとその顛末【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ カローラルミオン(2007-2015)をご紹介します。

文/伊達軍曹、写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】箱型・2ボックスタイプの「カローラ」!! カローラルミオンをギャラリーでチェック!

■ユーザーの高齢化を打開するため登場した「箱型カローラ」

 代を重ねるごとにユーザーが高齢化していた「カローラ」ブランドに新たなファンを取り込むため、北米から呼び寄せられたトールワゴン。

 その魅力は一部の層には伝わったものの、「カローラのブランドイメージとユーザー層を激変させる」という大活躍をするまでには至らず、1代限りで消えていったモデル。

 それが、トヨタ カローラ ルミオンです。

 2007年10月に発売されたトヨタ カローラ ルミオンは、北米ではサイオン(北米トヨタの若年層向けブランド)の2代目xBとして販売されたトールワゴン。

トヨタ カローラ ルミオン。全長×全幅×全高は4210mm×1760mm×1630mm。カローラの系譜としては初の3ナンバーサイズモデルとなった

 2003年に北米で発売となった初代サイオン xBは、初代トヨタ bBを北米向けデザインに仕立て直したバッジエンジニアリング車でしたが、2代目サイオン xBは、2代目トヨタ bBのバッジエンジニアリングはなく、トヨタ オーリスのプラットフォームを使ったやや大きめな小型トールワゴンでした。

 その2代目サイオン xBを、冒頭で申し上げたとおり、高齢化が進むカローラブランドユーザーの若返りを図るために「カローラ」の冠を付けて日本で発売したのが、トヨタ カローラ ルミオンです。

 全体的なフォルムは2代目bBとよく似ていますが、ボディサイズは全長4210mm×全幅1760mm×全高1630mmですので、2代目bBより41cm長く、7cm幅広です。

ピラー(柱)の角度を立てたこともあり、空間効率は優れていた。「ルミオン(RUMION)」は、「ROOMY(広々とした)」と「UNIQUE(独自の)」をかけた「広い室内スペースと個性的なスタイルをもち合わせたクルマ」の意味を持つ造語

 カローラ ルミオンは要するに「広いカローラ」または「デカいbB」というのが基本コンセプトですので、居住空間はきわめて広く、bBにあったシートの「マッタリモード」は付きませんが、チップアップ可能なリアシートや、10種類以上の収納スペースを設けるなど、利便性には十分な配慮がされていました。

 搭載エンジンは最高出力110psの1.5Lと、同136psとなる1.8Lの2種類のガソリン直4で、トランスミッションはすべてCVT。

 駆動方式はFFが基本ですが、4WDも用意されました。

リアビュー。1.5Lエンジンを搭載する1.5Gが178万円(2008年当時)と、他のモデルに比べ割高だったことも低迷の要因かもしれない

 北米のサイオン xBは2.4Lエンジンを搭載する車でしたので、日本仕様の1.5Lまたは1.8Lは「エンジンより速い」といえるシャシーの余裕が魅力であり、また前述のとおり居住性や利便性も十分以上ではあります。

 しかしカローラ ルミオンの人気は今ひとつ盛り上がりませんでした。

「圧倒的な人気薄車」というほどではなかったかもしれませんが、販売は低空飛行が続き、結局2015年11月には生産終了となり、同年12月には販売のほうも終了となりました。

■「トヨタだから発売できて、トヨタだから初代限りで潰えた」ルミオン

 前項で述べたとおり、トヨタ カローラ ルミオンは「デカいbB」ですので、居住性や利便性は良好でした。

 しかし今ひとつ人気車にはならず、1代限りで消えてしまった理由。

 それは、細かく各論を言うなら下記のとおりとなるでしょう。

●「カローラ」なのに3ナンバーというのは、(当時は)受け入れづらかった。

●「カローラ」なのに、(当時の感覚としては)車両価格がやや高かった。

●「ワイドなハッチバック」は、そもそも日本では売れづらかった。

●その売れづらいモデルを売るための大きなセールスポイント(ハイブリッドであるとか、先進安全装備がすごいとか)が、特になかった。

●走りは決して悪いわけではなかったが、ステアフィールなどがとにかく希薄で、「運転の楽しさ、あえて車を所有することの歓び」的なものを、ユーザーに感じさせることができなかった。

 ほかにもあるかもしれませんが、主だったところはこんな感じでしょうか。

 以上はカローラ ルミオンが「あまり売れなかった理由」なわけですが、筆者としては、カローラ ルミオンが「生産終了になった根本的な理由」は、また別の部分にあると考えています。

 カローラ ルミオンが1代限りで生産終了となった理由。

 それは、「ナンバーワン自動車メーカーであるトヨタだったから」です。

 超伝統のブランドである「カローラ」のユーザー層を広げるためのモデルとして、やんちゃなイメージが強い2代目トヨタ bBとよく似たデザインの車を起用するのは、普通に考えて無理があります。

トヨタトヨタ bB(2000-2016)※写真は初代

トヨタ カローラ(9代目・2000-2017)

 しかし物事には「やってみないとわからない」という側面もあります。そのため、もしかしたら「ルミオンの登場が、カローラブランドの歴史を大きく変えた!=若年層にもバカ売れするブランドになった」みたいなことになった可能性は、決して0%ではなかったのです。

 とはいえ普通の自動車メーカーは、勝算が高くはない題材にお金やリソースを突っ込むことはできません。新型車1モデルを大ハズしするというのは、経営的にかなりの痛手を伴うからです。

 つまり、トヨタ カローラ ルミオンという、普通に考えて「……これでカローラブランドを再び盛り上げるのは、正直ちょっと難しいんじゃね?」と思える一台を、「でも、売ってみないとわからないし!」ということで発売できたのは、大トヨタだからこそできたことだった。

 そして逆説的ではありますが、発売されたからこそ、生産終了になったのだ――という話です。

 どこまで本気だったかは知りませんが、ある時期のトヨタは「こういう箱型の車によって、カローラブランドに再び若い人を呼べるのではないか?」と考え、いちおうチャレンジしてみた。でも、やっぱりダメだった。

 カローラ ルミオンの敗退とは、そういうことだったのではないかと思います。

■トヨタ カローラ ルミオン主要諸元
・全長×全幅×全高:4210mm×1760mm×1630mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1310kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1797cc
・最高出力:136ps/6000rpm
・最大トルク:17.8kgm/4400rpm
・燃費:15.4km/L(10・15モード)
・価格:195万円(2007年式 1.8S)

【画像ギャラリー】箱型・2ボックスタイプの「カローラ」!! カローラルミオンをギャラリーでチェック!

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みんなのコメント

16件
  • 本文でもあるように単にbbの二匹目のドジョウを狙っただけ
    bb自体がメーカーすら想定外の人気となったのだから当然と言えば当然である
    まあ就業前の若者の文化など頭の固いおじさんが理解出来るはずもないからね
  • 『USマリン Kai Hei Tai』のように、リフトアップしてヘビーデューティな感じの外装にすれば
    売れたんじゃないかと思う。
    素のままのルミオン買うより、bB買うような気がする。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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