MotoGP第7戦サンマリノGP(サンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGP)でフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)がMotoGPクラス初優勝を飾った。2020年シーズン7戦目で5人目のウイナーの誕生。今シーズンの混戦ぶりを表している。
モルビデリは1994年12月4日生まれの26歳のイタリア人ライダー。イタリア人の父親は1980年代にイタリア選手権で活躍したレーシングライダー、母親はブラジル出身で、ヘルメットにブラジル国旗が描かれているのは母親の母国であることがその理由だ。
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モルビデリ自身はローマで生まれ、10歳までローマで育った。父親はバイクのワークショップを経営しており、その影響から幼いころよりモルビデリはバイクに乗るようになったという。そして、モルビデリが10歳になったころ、一家はエミリア・ロマーニャ州ペーザロ・エ・ウルビーノ県にあるバッブッチェに引っ越すことになる。バッブッチェはミサノサーキットやバレンティーノ・ロッシのホームタウン、タブリアにもほど近い小さな街だった。
モルビデリはローカルレースで頭角を現し、父親は息子をグランプリライダーにすべく奔走。2006年にはMotoGPクラスに参戦していたダンティーン・チームの育成ライダーに選ばれた。そして、15歳となった2009年にはスペインのライダー育成シリーズ、ライダーのゆりかごを意味するクーニャ・デ・チャンピオンズのプレGPエボクラスでランキング3位を獲得。
次のステップは、当時、すでに世界グランプリへの登竜門となっていたCEV(スペイン選手権)の125ccクラスへの参戦だった。ところが、このころにはダンティーン・チームは世界グランプリから撤退。CEV参戦の資金を準備できなかったモルビデリは、グランプリへの最短ルートに乗ることができず、プロダクションレースのストック600クラスにスイッチすることになる。
2011年にはイタリア選手権のストック600、SBK併催のヨーロッパ選手権スーパーストック600クラスに参戦。2012年にはイタリア選手権で3勝を記録してランキング2位を、ヨーロッパ選手権では3位表彰台に立ちランキング6位を獲得。そして、2013年にはヨーロッパ選手権に専念。イタリア人ライダー育成チームのサンカルロ・チームイタリアに起用され、ロッシが主宰するVR46アカデミーのメンバーにも選ばれた。
そして、モルビデリは2013年のヨーロッパ選手権スーパーストック600クラスで、3勝、2位2回と10戦中5回表彰台に立つ活躍を収めチャンピオンを獲得する。こうした活躍が認められ、この年のシーズン後半にはチームグレシーニからMoto2クラス参戦のオファーを受け、サンマリノGP、日本GP、バレンシアGPの3戦に参戦。入賞こそできなかったものの3レース全てを完走し、続く2014年にはイタル・トランスレーシングチームよりMoto2クラスレギュラー参戦のシートをつかんだ。
■どのクラスでも着実な成果を残してきたモルビデリ
2014年はランキング11位を獲得。2015年にはインディアナポリスGPでグランプリ初表彰台となる3位に入賞し、ランキング10位。2016年にはマークVDSにチームに移籍し、ランキング4位と躍進。そして、2017年に開幕戦カタールGPでグランプリ初優勝を達成すると、通算8勝を記録してチャンピオンを獲得する。
そして、2018年にはついに最高峰クラスのMotoGPクラスに到達。マークVDSチームよりホンダRC213Vで参戦すると、ランキング15位となり、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。2019年にはペトロナス・ヤマハSRTに移籍。
2019年をランキング10位で終え、MotoGPクラス3年目となる2020年のチェコGPで初表彰台を獲得。そして、グランプリ通算112戦目、MotoGPクラス通算41戦目となるホームレースのサンマリノGPでついにMotoGPクラスの初優勝を達成した。モルビデリは初優勝の喜びを以下のように語っている。
「魔法のような一週間だった。全てがうまく行った。サーキットに着いたとき、もしかしたら、何かいいことができるかもしれないと考えた。結果は最高だった。ホームレースで一度も勝ったことがなかったし、MotoGPクラスで勝つことは、人生も最も偉大な成果だ。そう言えることを誇りに思う。ボクと一緒に働いている全ての人たちに感謝したい」
「この勝利は、チームワークの成果。今日だけの成功でなく、全てのことを誇りに思う。7年前、ボクはここでスーパーストック600のレースに参戦していた。そして今日、MotoGPクラスで勝った。シンプルに驚きだ。今シーズン、観客が初めて入ったミサノのレースで、彼らにあいさつができたことは最高だった。ボクたちは、彼らのためにレースをしている。だから、ファンと一緒に優勝を祝うことは最高だ」
才能を持ちながら、少し遠回りしてグランプリへとやって来たモルビデリ。地道な努力は回りにいる人間を動かし、どのクラスでも着実な成果を残してきたライダーが、ついに最高峰クラスの表彰台の頂点に立った。
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