ホンダは21日、モバイルバッテリーをシェアサイクルの補助電源として利用できるシステムを開発したと発表した。充電切れなど電動自転車の課題を解消する技術として、2022年度内にシェアサイクル事業者と実証実験を始める。ホンダは電動アシスト自転車事業を手がけていないものの、公共交通機関による自動運転車を活用した移動サービスの実用化に向けてはラストワンマイルの移動手段としてシェアサイクルが活用されることを見込む。新技術が将来のモビリティサービスにつながるかは不透明だが、ホンダらしい「ひらめき」のアイデアを実用化する。
ホンダによると、シェアサイクルの市場規模は拡大しており、15年に年間約200万回だったシェアサイクルの全国の利用回数が20年には2600万回にまで増えている。手軽に利用できる短距離移動用モビリティとして都市部を中心に定着してきた。
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市場が拡大しているシェアサイクルだが、利用者から使い勝手に不満を感じる声も増えているという。その一つが借りた電動アシスト自転車のバッテリー残量が少ないことだ。事業者にとっても残量が少ないバッテリーを交換する作業は、手間でコスト的にも負担なため、頻繁には実施しないケースもある。
そこでホンダが開発したのが「シェアサイクル用2電源システム」だ。スマートフォン(スマホ)やノートパソコンを充電するモバイルバッテリーを、電動アシスト自転車にも活用するというものだ。
上り坂などのパワーが必要な際には電動アシスト自転車に搭載してある電池とモバイルバッテリーを併用する。低出力時にはモバイルバッテリーの電力で駆動しながら電動アシスト自転車の電池を充電する。標準的なアシスト力で20分間走行した場合、通常では2・3%減少する充電残量を、1・9%回復させることができるという。
ホンダでは今後、実証実験を共同で実施するシェアサイクル事業者を募り、早期に実用化する。
ホンダがシェアサイクル向け事業に参入するのは「車と公共交通機関をスマホで結ぶだけでは便利にならない」(モビリティサービス事業本部eMaaS戦略企画部の友谷浩之氏)ためだ。日本でも移動の快適性を高めるため、自動車メーカーや鉄道会社、バス事業者、自治体など、多様な公共交通機関を一つのプラットフォームで連携するMaaS(サービスとしてのモビリティ)の取り組みを進める。ただ、ユーザーの利便性を高めるには目的地周辺の短距離移動を支えるモビリティとの連携も必要になる。
ホンダは今春から、カーシェアサービスの「エブリゴー」と、シェアサイクルサービス「チャリチャリ」や「ハローサイクリング」と連携している。将来的にはゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発した自動運転車を活用してモビリティサービスを提供することも視野に入れている。「乗り物と乗り物の間にアイデアを取り入れる。それがホンダの考えるMaaS」(友谷氏)。モビリティサービスの連携先を増やすとともに、シェアサイクルの不満を解消する技術を提供し、モビリティサービスの提供に向けて全方位で取り組みを進める。
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