国内ホンダSUVの中核を成す最重要車種
ZR-Vは、ホンダSUVのド真ん中に投入されるまったくのニューモデル。縦桟グリルの個性的なフロントフェイスが特徴だ。まずは概要紹介から。ZR-Vは、ホンダのまったく新しいSUVラインである。ボディサイズはシビックに近く、2種類のパワートレイン(ハイブリッド、ガソリン)ともに、シビックと共用する。現在ホンダSUVとしてはヴェゼルが好調なものの、新型CR-Vの国内導入が見送りとなったことで、日本向けSUVは、ヴェゼルとこのZR-Vのみが担うことになったため、ホンダの国内市場向けSUVとして、まさに“肝煎り”の最重要車種というわけだ。
谷口信輝 ホンダ・シビックe:HEV初試乗!エンジン音がするモーター!? 不思議なハイブリッド、シビックe:HEV
タフネスよりも流麗さを感じさせるスタイリング。軽快な走りを予感させる。グランドコンセプトは「異彩解放」。まずはそのデザインが「異彩」である。SUVと言ってもタフネス一辺倒ではなく、スポーティさを融合したクロスオーバーデザイン。でありながら、ホンダ得意の低床パッケージを活かした抜群のユーティリティなど実用価値も怠りない。さらに、デザインや実用性以上に力を入れたと感じられるのが、ダイナミクス性能の追求である。
パフォーマンスと運転の楽しさで定評あるホンダの2モーターハイブリッド“e:HEV”では、モーター最大トルク315Nmの余裕を意のままに操るために活用。さらに、シビックには採用のないリアルタイムAWDは、リヤトルク配分をアップし、四輪のタイヤ利用率を最適化することで、ドライ路面においてもより積極的かつ安心、安全な走りを実現している。そもそも走りに相当の自信がなければ、「群馬サイクルスポーツセンター」というクルマに厳しい環境で報道試乗会を行わないはずなのだ。
新開発の2.0L直噴エンジンをSUVとして初搭載したe:HEVシステム。そのポテンシャルはシビックでも実証済み。そんな走り自慢のSUV、ZR-V試乗会でそのポテンシャルを試したのは、スーパーGT、スーパー耐久、D1などのモータースポーツフィールドに止まらず、2022年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー」選考委員も務めるなど、ますます活躍の場を広げる谷口信輝である。さっそく、用意されたZR-V3仕様を試した谷口に印象を聞いた。
狙ったラインを狙ったように行ける
パンチングメッシュのインパネモチーフはシビックとも共有。一方、ブリッジ形状を採るコンソールはSUVとしての遊び心がある。今日は、群馬サイクルスポーツセンターのクローズドコースでの試乗です。3仕様(ガソリン4WD、ハイブリッドFF、ハイブリッド4WD)のうち、まずはガソリン 4WDから。1.5L直噴ターボで、電動アシストはなしという一台です。
「なかなか走れるクルマだね。ちゃんと舵が効いているし、舵角も少なめでいける。とっても安心だね。路面がハーフウエットだからところどころグリップしない状況だけど、コーナーに入る時に、今からここ通るな、とか自分が狙ったラインを狙ったとおりに行けるのはとっても大事で、そういう意味では、ここ“群サイ”を走っていても、安心できる」
2台目は、ハイブリッドのFFです。ZR-Vの本命はやはりハイブリッドで、一番、売れる仕様でもあると思います。
静かでかつ、ハイブリッドの重さからくるマイルドな乗り味を示すハイブリッド(FF)。「やっぱり静かでいいね。出足がとっても静か。今これはモーターで走っていて、エンジンは掛かってないのかな? 掛かっていても、エンジンでは駆動してないんだね。まるでエンジンで走っているかのようなエンジン音がする。発電側のエンジンを合わせるセッティングをしているからかな。普通に、エンジン回転が同調していて、エンジンで走っているような回転感がある。
完全にウエットになっちゃったけど、ハンドリングはいいですよ。自然で。さっきのガソリン車よりも、足の硬さを感じない。ウエイトが100キロ近く重いせいかな。どちらかというとこの足は、ハイブリッドの車重向けなのかもしれないね。車重の重さもあって、全体にマイルドに感じる。
e:HEVの印象としては、やはりモーターで走るクルマだから、トルクがすぐに欲しいだけ立ち上がってくれて、ボク的にはすごく好きですね。モーターのレスポンスはすごく好きなんです。モーターで走るクルマなんだけど、下面にバッテリーを敷き詰めているような、重たいピュアEVとは違いますよね。そういう意味で、乗り味は普通のクルマだけど、モーターのレスポンスがあるという意味で、すごくいいなと思います。
大要量のバッテリーを下面に敷き詰めている重量級のピュアEVは、やっぱりちょっとポンポンポンポン跳ねるような動きがあるんですね、独特の。レーシングカーのごとく重量物を下に持ってくることって、低重心のメリットと引き換えに、デメリットとして動きが細かく出過ぎるというのがあるんです。ヒョコヒョコという感じかな」
減速、旋回、立ち上がりの繋がりがいいハイブリッド4WD
「良く曲がり、タイヤがちゃんと使える」と谷口が評したハイブリッド4WD。「3台目はハイブリッドの4WD? これはめちゃめちゃいいね。間違いなく今日のベストだね。4WDのSUVというと、どうしても生活四駆みたいなイメージがついて回るけれど、このクルマは、全然、そんな範疇に収まってないね。むちゃくちゃ走るの楽しいですよ。
良く曲がるし、タイヤがちゃんと使える。この仕様が一番いいね! 四駆というと、ただ単にトラクションがいいというイメージがあるかもしれないけれど、やっぱりそうじゃないんだね。このクルマは、減速から旋回から立ち上がりが全部いい。一連の繋がりがとても上手くまとまっている感じ。四輪がきちんと使えているというか、駆動の制御が上手く出来ていないとこうした印象にはなかなかならないよ。
ZR-Vの小野修一開発責任者。操安に関しては、NSX Type Sの担当者をプロジェクトに引っ張り、限界領域まで追い込んで「やり過ぎ」と言われるほどテストを繰り返したという。谷口信輝のドライビング理論に共感する谷口ファンでもある。群馬サイクルスポーツセンターというのは、コースもコーナーもタイトな上に、アンジュレーションや凸凹もスゴい。足がストロークしたりクルマが不安定な時に、ABSやトラクションコントロールがどうやって入るのかということも、確認できるんですよ。
たとえば、低速コーナーや勾配のある急カーブで駆動を掛けると、前輪駆動だと内側が空転してしまう。四輪駆動は、空転もせずに前に転がしてくれる、というところも群サイだと良くわかる。クルマの総合的な運動性能だったり、制御の仕方、足の収まりなんかが良くわかるんですね。日本のちっちゃいニュルブルクリンクみたいな感じだね。
ポーンと跳ね上げられたところでブレーキングが入ったり、曲がりながらアンジュレーションがあったり、アスファルトなんだけど悪路だったり。クルマが不安定な中での挙動を見ることができますね。狭いので、狙ったところに行けるかどうかも大事だし。人馬一体になれるかどうかがすごく見やすいのが群サイという場所なんで、ここでこれだけ走れるというのは、ZR-V、なかなかまとまりのいい一台ですよ」
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