乗用車がトラックの車体の下に潜り込む「アンダーラン事故」は、乗員がトラックと乗用車のフレームに挟まれ深刻なダメージを負うため重大事故になりやすい。これを防ぐための「後部突入防止装置」が義務化されており、国連が定める国際規格もある。
ところが、ユーロNCAPが実際に衝突試験を行なったところ、国際規格に準拠したトレーラで装置がほとんど機能していなかった。国際規格に欠陥があることが疑われるため、当局に対して米国の任意規格相当に改正するよう呼び掛けている。
【画像ギャラリー】国際規格のアンダーラン防止装置に疑問符? ユーロNCAPの衝突試験(13枚)
また、これと関連して乗用車のADASが特定のトレーラを検知できないケースがあった。自動ブレーキが作動しない可能性があり、後部アンダーラン事故防止のため乗用車ドライバーも意識を高めなければならない。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Euro NCAP
国際規格のアンダーラン防止装置に欠陥か?
トラックの後部へ乗用車が追突する事故だけで、欧州では年間数百人の死者が発生している。
大型トレーラなどに乗用車が突っ込むと、車高の違いから乗用車が下に潜り込み、乗員スペースが切り裂かれる。「アンダーラン」と呼ばれる事故で、両方の車体がハサミの刃のように乗員スペースをせん断する形となるため、ドライバーや同乗者に深刻なダメージを与える。
こうしたアンダーラン事故を防止するため、世界の多くの国と地域でトラックに対する後部突入防止装置(RUPD=リア・アンダーラン・プロテクション・デバイス、あるいはRUPと呼ぶ。以下「RUPD」と表記する)の装着が義務化されている。
もちろん日本や欧州でもRUPDは法に基づく強制装着であり、自動車関係の国際規格を制定している国連欧州経済委員会(UN ECE)の「R58.03」(協定規則第58号第3改訂版)が2026年現在の最新規格となっている。
しかし、ユーロNCAPが実際に衝突試験を実施したところ、R58.03に対応する欧州製トレーラでRUPDがほとんど機能しておらず、EU加盟国と英国で毎年400人が命を落としている可能性があるという。ユーロNCAPは義務的なRUPDはその目的を果たしていないという結論を下した。
また、乗用車側の先進運転支援システム(ADAS)の一部にもトレーラを正しく検知できないという問題があり、両方に存在する重大な脆弱性が、アンダーラン事故死者数高止まりの要因になっているという。
ただし前者については既に技術的な解決策が存在し、北米市場の任意規格に準拠したRUPDは、衝突試験でも致命的な事故を防ぐことができると評価された。
旧型ADASにトレーラを認識できない「死角」
安全装備としてADASの普及が急速に進んでいるが、電子の眼には一部のトレーラシャーシを車両として認識できないという欠陥があるようだ。
これは、ユーロNCAPが自動緊急ブレーキ(AEB)の性能を測定するため実際の条件下で行なっている試験で明らかになったもので、試験対象の乗用車は全て、カメラとレーダーの両方による(比較的高性能な)ADASの搭載車だった。
メーカーが車両性能を試験するための標準的なターゲット(GVT:グローバル・ビークル・ターゲット)に対しては、ユーロNCAPの試験でも対象車両のADASは有効に機能した。
しかしGVT外の大型車、とりわけトレーラの検知率が低く、欧州の貨物輸送で最も一般的なカーテンサイダーのほか、海コン業界で「ホネ」と呼ばれるスケルトントレーラ(海上コンテナを載せていない状態の海コンシャーシ)、道路工事などで現場に車両が突っ込むことを防ぐ衝突保護車両などを検知できないケースがあった。
また、最新型のADASと旧型のADASでは性能に大きな隔たりがあることもわかった。トレーラの検知に失敗したのは旧型のシステムで、新しいADASはトレーラにも対応できるとはいえ、車両の平均車齢は上がり続けており、現役車両のほぼ全てがトレーラを検知できるようになるまで15年はかかるという。
乗用車のドライバーが世代によるADASの性能差を認識し、安全装備を過信せず、事故防止のための意識を高めていくことも重要だ。
人命を奪う「安全規制」の欠陥
ドライバーとADASの両方がトレーラの検知に失敗したら、衝突は不可避だ。RUPDは致命的なリアアンダーランを防ぐための最後の砦となる。
その性能を試験するため、ユーロNCAPは安全性評価で5つ星を獲得している人気の乗用車(つまり、最も安全性が高いと評価された人気車種で、具体的にはテスラ「モデル3」が選ばれた)によるトレーラへの衝突試験を実施した。試験はドイツ、英国、スウェーデン、米国の国際パートナーの協力のもとに行なった。
欧州ではRUPDの国際規格であるUN ECE R58.03への準拠が2022年に義務化されており、英国とドイツではこれに準拠したトレーラで衝突試験を行なった。米国では自主的な規制であるIIHS(米国道路安全保険協会)の「タフガード」規格を満たすトレーラで試験した。なお、実際に衝突させる試験であるため車両のADASは無効化した。
乗用車の助手席側30%を時速56kmで衝突させる30%オフセット衝突試験では、シュミッツ・カーゴブル製のトレーラ後部が助手席を直撃し、ダミー人形の頭部および頸部に致命的なダメージを与えた。
また同じ速度での75%衝突では、クローネ製トレーラのRUPDのバーが破損し、運転手と乗員に対する保護が全く行なわれなかった。
シュミッツとクローネはいずれも欧州のトレーラ大手で、当然ながら法規に準拠したトレーラを販売している。それにも関わらずRUPDが所定の性能を発揮しなかったのは保護構造の耐衝撃性が不足しているためで、規格自体の欠陥が疑われるという。
ユーロNCAPは現行のR58.03規格は目的に合致しておらず、大幅な改善が必要と指摘している。
いっぽうで米国で自主的に制定されたIIHSのタフガード規格に準拠したトレーラは、時速56km(35mph)オフセット衝突でも乗用車の安全構造が設計通りに変形し、乗員を保護した。この規格は2017年に導入されたもので、今では米国市場の新車トレーラの70%に装着されている。
ユーロNCAPによると欧州トレーラも補強材を追加することでこの基準を満たすことができるという。
国際規格の見直しなら日本にも影響
こうした結果を受けて、ユーロNCAPはEU及び英国の当局に対して制度の改正を求めている。具体的には欧州の域内法の改正ではなく、国際規格のR58.03を米国規格(相当)に準拠するよう改正することを求めており、国際規格が改訂されれば日本メーカーにも一定の影響があるだろう。
国内では、国際規格を引用する形で保安基準が規定されており、日本自動車車体工業会が検査・取り付け等の基準を定めている。このため海外事例を根拠に国産車にも欠陥があると判断するのは早計だが、国産メーカーがRUPDの安全性を自主的に再チェックすることは歓迎すべきことだ。
ユーロNCAPはトレーラメーカーに対して人命保護に繋がる自主的な改修と、既存車両に後付けできるソリューションの導入を強く求めている。さらに、トラックのユーザーとなる運送事業者に対しても、不適切な装置を交換できるようトレーラメーカーに要請することを呼び掛けている。
ユーロNCAPの戦略開発ディレクターを務めるマシュー・エイブリー氏は次のように話している。
「国際的な調査によりトラック・トレーラ後部に装着するアンダーラン防止用ガードに深刻な欠陥があることがわかりました。この種の事故は死亡率が非常に高く、到底容認できるものではありません。欧州の法規制は致命的な事故を防ぐために緊急に更新しなければなりません。幸いなことに技術的なお手本となる規格が米国に存在します。改訂が早いほど、多くの命を救うことに繋がります」。
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みんなのコメント
突入防止装置を義務化しているが、ほとんどの
大型ダンプはそれを取り外して短い丸パイプに交換して
走行している。大手リース屋の4t車ダンプも同様。
理由はよくヒットして曲げるかららしい。
車検のときだけ戻すそうだ。
何で摘発されないのか不思議だわ。