マツダのコンパクト・ハッチバック「マツダ2」のMTモデル(15S)に今尾直樹が試乗した。
マツダの思想を具現化
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2021年6月、マツダ2の小改良が行われた。「Sunlit Citrus(サンリット・シトラス)」、“太陽に照らされた柑橘類”という意味の特別仕様車が新たに登場し、ワイヤレス充電とアップル・カープレイのワイヤレス接続がオプションで設定されるなど、装備の細かい変更を主としていたわけだけれど、同時に1.5リッター・ガソリン・エンジンに高圧縮比バージョンがくわわっている。
従来の12.0から14.0という、ガソリン・エンジンとしては限界ともいえる高い圧縮比を、ダイアゴナル・ボルテックス・コンバスション(Diagonal Vortex Combustion:斜め渦燃焼)という独自のテクノロジーを採用することで実現、これにより、燃費がWLTCモードで6.8%向上しているというのだ。
EV(電気自動車)、ハイブリッドが話題になるなか、マツダはガソリン・エンジンの可能性をひたすら信じ、さらなる高効率化に地道に取り組んでいる。その成果を、早速、基幹モデルのひとつであるマツダ2に投入したのだ。
ちなみに、現行マツダ2は2014年に4代目デミオとして登場し、モデル名をグローバルで統一するというマツダ自身の方針によって、2019年に現在の名称に変更している。現行世代になって今年で8年目を迎える、フツウに考えればモデル末期ということになる。
しかも、車両価格で200万円を切る、ごくフツーの小型FWD車に、異例に高圧縮比のエンジンを搭載してきたのである。
おそらく、こんなことはトヨタならやらない。もちろん、だからマツダはナントカだとか、トヨタはナントカだとか、申し上げたいわけではない。トヨタにはトヨタの、マツダにはマツダの道がある。地味ながら、この1.5リッターのガソリン・エンジン高圧縮バージョンは、ガソリン・エンジンに賭けるマツダの執念の賜物、といってよいのではあるまいか。
今回の試乗車は、しかもマニュアル・トランスミッション(MT)である。これも、自動車の運転は人間を解放し、人生を豊かにする、というマツダの思想を具現化したものだ。MT好きならご存じのように、マツダは国内向けのモデルにもあまねくMTを用意している。そのことを筆者も知識として知ってはいても、GQで試乗のチャンスを得なければ、触れることはなかったかもしれない。
つまるところ、マツダ2の15Sの6MTは、新車で買えるピュア・ガソリン・エンジンの小型車、しかもマニュアル! ということで、トラッドな自動車愛好家にとっては、じつに興味深い、エンスージアズムの対象になりうるモデルなのである。
マニュアルでも扱いやすい
で、筆者が試乗車と初遭遇したのは、横浜・大黒PAだったのですけれど、Black Tone Edition(ブラックトーンエディション)だったのは意外だった。目に入らなかったのは、赤とかを探してしまっていた、からかもしれない。
だけど、ブラックトーンエディション、マツダが2020年末にマツダ2、マツダ6、CX-5、そしてCX-8に設定した特別仕様のメイン・カラーである「ポリメタルグレーメタリック」は、なかなかオシャレなボディ色である。艶ありブラックのドア・ミラー・カバーとフロント・グリル、それにブラック・メタリック塗装のアルミ・ホイールもシックにきまっている。
おなじブラックトーンエディションでも、この色以外に、エクストラ・コストを支払えば、広島カープのヘルメットの色を思わせる「ソウルレッドクリスタルメタリック」、ようするにメタリックの赤や、「マシーングレープレミアムメタリック」という名のグレーのメタリック、「スノーフレイクホワイトパールマイカ」というホワイトも選ぶことができる。ご参考までに。
1496ccの4気筒DOHC直噴自然吸気、スカイアクティブG1.5(高圧縮)は、最高出力110ps/6000rpm、最大トルク142Nm /3500rpmを発揮する。従来の圧縮比12.0版もカタログに残されており、そちらの最高出力はそっくりおなじ、最大トルクは141Nm/4000rpmと、ちょっとだけ異なる。高圧縮のほうが500rpm低いところで最大トルクを生み出しており、すなわち中低速トルクが厚くなっている。そのおかげで、だろう、マニュアルでも扱いやすく、エンストする気配はほとんどない。楽々とスタートできる。
6速マニュアルのシフト・ゲートも明確で、シフトの感触にもうちょっとタイト感があると、なおいいのに……とは思ったけれど、それは望みすぎというもので、実用車としては文句のないレベルにある。
走り出して印象的なのは、乗り心地がいい点だ。熟成期間が長いおかげか、記憶のなかのトヨタ「ヤリス」の1.5のMTより、フラット感で勝っているように思う。足まわりがぜんぜんバタつかない。ソフトではないけれど、さりとて硬いということもない。筋肉質というと、ちょっと大袈裟で、軟骨というには硬すぎる。50ぐらいの扁平率が当たり前になりつつあるなか、185/60R16という控えめなサイズのタイヤを履いていることも好ましい快適さにつながっているにちがいない。
車両価格200万円を切る小型ハッチバックゆえ、エンジン音、ロード・ノイズ、ともに元気よく、活発に聞こえてくる。だから小型車というのは楽しいのである。ボディの剛性感もしっかりある。
車重は1060kgと、マツダ・ロードスターのいちばん重いモデルと同程度。これで、ロードスターみたいにカチカチ決まる6MTがついていたら……とは思うのはバチ当たりである。さっきもつい書いてしまいましたけれど、ロードスターは車両価格が260万円以上することを忘れてはならない。
昔ながらのトラッドな小型車
ちょっと気になったのは、高圧縮比化によるものか、1.5リッターのこの4気筒DOHC直噴エンジン、なんだかモッサリしているように感じられることだ。
ダイアゴナル・ボルテックス・コンバスションは、e-SKYACTIV X(イー・スカイアクティブ エックス)のエンジン制御技術を応用したもので、シリンダー内への燃料噴射の吹き方によって空気と燃料の斜め渦状態をつくり、その斜め渦に向かってもう1回燃料を噴射したところで、プラグで着火して急速燃焼をさせる。これにより、エンジンパフォーマンスを維持しつつ、環境性能を向上した、というのがマツダの主張だけれど、私の個人的な感覚だと、燃焼スピードが遅いというか、フライホイールがいつまでもまわっているような……というか、回転落ちが遅く感じる。
そのせいなのか、あるいはまた別の理由なのか、シフトダウン時に中ぶかしを1発入れて、回転数を合わせてやろうとしても、なかなかうまくいかない。ま、筆者の操作がヘタクソなことはあるとして、そのヘタさをエンジンのレスポンスが上まわれば、ヴオンッと回転が上がって、スパッと決まるはず。せっかくMTがあるのにもったいない……。
ただ、これも慣れの問題、もしくは純粋にテクニックで解決できること、のはずだ。マツダがとりわけロードスターで主張する“人馬一体”とは、馬が人に合わせるにあらず。人が馬とひとつのからだになったかのように、巧みに乗りこなすことをいう。
3速で、3000rpm以上まわしてやると、ヴウウウウウンッという活発なエンジン音を軽く轟かせ、さらにアクセルを踏み込むと、4000rpmからもうちょっと音が大きくなる。風切り音は、空力がいいのか、意外と静かで、前述したように乗り心地が、ユルユルではなくて、ある程度締まっていながらも快適で、ボディがコンパクトだから、動きがヴィヴィッドで俊敏、そういう意味ではレスポンスがいい。
MTを使って、比較的非力なエンジンを目一杯歌わせつつ、フラットアウトでぶっ飛ばす!というのは、忘れがちではあるけれど、間違いなく自動車を運転する楽しみのひとつである。
考えてみたら、1.5リッター・クラスの自然吸気エンジンを搭載する小型ハッチバックの6MT車なんてのは、日本ではヨーロッパ車にもあまりない。ほとんど小排気量ターボのATになっているからだ。
そういうわけで、昔ながらのトラッドな小型車がなくなってしまった、とお嘆きの諸兄、ヤリスもあるけど、マツダ2のマニュアルという選択もありますぞ。
MTの小型車には、いつ乗っても楽しい、プリミティブな魅力があるのだ。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
いやヤリスのダイナミックフォースエンジンはとっくに圧縮比14なんですが?
こんな初歩的なことロクに調べもせず適当なイメージで書いてるのは今尾直樹ね、覚えたわ