憧れのマエストロが来日!
去る2025年4月11日~13日、幕張メッセで「オートモビル カウンシル2025」が開催された。第10回目を迎えた今回のカウンシルは、ある意味歴史に残るものだったと言えるだろう。
「この記念すべき回に相応しく、皆様に喜んでもらえるようなことがやりたかった」と語ったCG代表の加藤氏だったが、筆者にとって、それは想像を遥かに超えていた。
なんと、あの巨匠ジウジアーロ氏がこのイベントのために来日し、2日間にわたって講演会を行うというのだ。
筆者は学生時代、カーデザインを学び、大きな影響を受けた。そして、氏の作品の美しさに魅せられ、いすゞ ピアッツァを購入。こうして今、筆を走らせているように、数々の出会いをもたらしてくれた(言い過ぎか? 笑)。
そんな御大の話を、日本で聞けるチャンスがあるなんて……。
2日間とも講演会に参加することを決めた筆者が、実際にジウジアーロ氏を目の前にし、何を感じ、何を想ったのか、ここに記したいと思う。
生活ってアートだ! 三軒茶屋のギャラリーで暮らしのヒントを見つける。世田谷区エリアをシティガイド【生活工房編】<span>━━</span>連載|CCGとクルマでどうする?<第5回>
今もなお美学を感じるジウジアーロ氏の作品たち
今回のイベントでは特別展示として、ジウジアーロデザインの作品が並ぶエリアが設けられていた。
そこにはベルトーネ時代の代表作「アルファロメオ ジュリア」をはじめ、イタルデザイン時代の思い出の作品と語る「フィアット パンダ」、さらに、ご子息のファブリッツィオ氏と立ち上げたGFG Styleによる最新車両「バンディーニ ドーラ」などが展示されていた。
が、筆者として注目すべき車種は、愛車ピアッツァのコンセプトモデルである「いすゞ アッソ・ディ・フィオーリ」であろう。これは、いすゞの広報の方から伺った話だが、当初は別の車両を展示する予定だったものの、ジウジアーロ氏本人がアッソの展示を熱望したことで、急遽差し替えたのだとか。
何度も日本に足を運び、いすゞとともに打ち合わせを重ねた思い出深いクルマなだけに、感動の再会を果たしたかったに違いない。
ジウジアーロ氏の来日のタイミングで、筆者も40年以上前にスタイリングされた作品を拝めたことに、ピアッツァ乗りのひとりとしてその喜びを噛み締めた。
それだけでも胸が熱くなる話だが、長年のお仕事を共にしたいすゞさんが、ジウジアーロ氏に贈り物を渡すという話を耳にした。
一体何を贈るのかと思えば、アッソと117クーペが一緒に写った写真を額装したものと、当時のいすゞ自動車で117クーペやピアッツァのスタイリングの打ち合わせをする、若かりし頃のジウジアーロ氏と社員たちが映った写真のデータだった。なんとも粋な計らいである。
いすゞ車に限らず、「今もなお日本で自分がデザインしたクルマが走っているのは嬉しい」と笑顔で語ったジウジアーロ氏。
今回展示されていたアッソは、2000年にいすゞの有志によりレストアされた個体で、当時企画を立ち上げた社員たちの魂がこもった車体だという。ジウジアーロ氏も「ほんとにいいの?」と驚きつつも、ボンネットにサインを入れたのだった。
この記念すべき瞬間に立ち会えたことは、私の人生における宝物になった。
パワフルなジウジアーロ節を目の当たりにした講演初日
さて、いよいよ2日間の講演会が始まる。この歴史的瞬間に立ち会うためか、ステージ前に設けられた観覧席は開演1時間前にはほぼ満席だった。
御年86歳とは思えない軽やかな足取りで登壇したジウジアーロ氏は、「まず日本にありがとうと言いたい。日本という国を理解する機会を与えてくれた」と、日本への感謝を述べ、自らのデザイナーとしての歩みを語り始めた。
ここではあえて、ジウジアーロ氏のデザイン人生の生い立ちに深くフォーカスを当てることはしないが、これを本人の肉声で聞けたことが、筆者にとっては何より感慨深かった。
さらにこの初日講演では、当時の自動車デザインを大きく変えた、フェンダーやライトの関係性の進化について、「アルファロメオ2000 スプリント」のフロントマスクをライブドローイングするというサプライズもあった。
憧れのデザイナーが目の前でスケッチするのを間近で見られる。これがどんなに感動的なことか、デザインを学んだ人なら誰しも共感してくれるハズだ。筆者はまさにオーバーヒート気味で、目頭から冷却水が少し漏れていたかもしれない。
その後、東洋工業(現マツダ)との出会いや、いすゞとの繋がりから、再び日本への感謝の気持ちを述べ、初日の講演は終了した。……のだが、ここまで約1時間をほぼ一人で喋り通したジウジアーロ氏に、CGの加藤代表は「私は2つしか質問してないんですけどね」と笑った。これが“ジウジアーロ節”というやつなのだろう。
中村史郎氏とも対談した講演二日目
講演二日目は日本を代表するカーデザイナーのひとりである中村史郎氏も登壇。ベルトーネ、ギア時代を経てイタルデザイン設立から、日本との関わりについて語った。
1台のクルマに対して、デザイナーの名を冠することが少なかった当時、「ベルトーネはデザイン画にサインをすることを許してくれた」とジウジアーロ氏は回顧。これをきっかけに、彼の名前が世に広まり、独立にも繋がったそうだ。
さらに、日本での接点として重要な役割を担うマツダルーチェのプロトタイプである「S8P」と、「いすゞ 117クーペ」についても言及。なんと今回、会場内にこの2台が展示してあった。
講演会で話題になった車両を、すぐその場で見ることができる。ある種とんでもないイベントだったと、そこで気づくことになった(笑)。
これからカーデザイナーを目指す若者へ
講演も終盤。中村氏が「これからクルマのデザイナーになりたいと思っている若者にメッセージを」と問いかけると、ジウジアーロ氏はこう語った。
「デザイナーはそれぞれ、自分のデザインの創造性を持っている。これを守るためには、デザインに説得力が必要で、どう車が作られているのか、ガラスはどういう風に作られるのか、どんなプレスをされているのかなど、多くのプロセスを学び、自分の創造性にそれを満たす価値があるのかを知ることが大切。生産できる事をしっかり想像してデザインをしてください。多くを学ぶことは妥協ではなく、自分の創造性を守るためなのです」
この言葉はクルマに限らず、あらゆるジャンルのデザイナーを志す人にとって大切な考え方だと感じた。
筆者はカーデザイナーにはなれなかったが、今も形は違えどデザインの世界に身を置く者として、深く心に刺さるものがあり、“デザイン”という行為に対して探究心がさらに深まったと思う。
今回のオートモビル カウンシル2025はイベントとしてはもちろん、筆者にとって人生のターニングポイントとなる2日間だったように思う。
それは、ただ憧れのデザイナーに出会えたということだけでなく、「デザインとは何か」を今一度見つめ直す機会となった。モノの作りやプロセスを深く理解することで、自ずと創造性が見えてくる。
そしてそのアウトプットが、誰かの心を動かすものになりうる可能性を秘めているのだ。少し生意気なことを言っているのは承知しているが、デザイナーが目指すべき本質は、まさにそういう事なのだろう。
私もそんな、ジウジアーロ氏に心を動かされた一人なのだ。
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