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世界一かわいいオフローダー!? 日本に1台のみの「フェルヴェス・レンジャー」ってどんなクルマ?──【世界の名車・珍車図鑑】Vol.18

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世界一かわいいオフローダー!? 日本に1台のみの「フェルヴェス・レンジャー」ってどんなクルマ?──【世界の名車・珍車図鑑】Vol.18

“ボート”や“バケツ”と形容されるミニマムヴィークル

世に名車といわれるクルマは数あれど、ひらがな発音は同じだが意味はまったく逆となる「迷車」、ないしは「珍車」といわれるクルマたちも、130年以上におよぶ自動車史においては少なからず存在している。
でも迷車・珍車と呼ばれるクルマには、不思議な魅力があるのも事実。それぞれにコアなファンが少なからず存在するようだ。
そこでKURU KURAでは、歴史に名を残した迷車・珍車をご紹介するコーナーを企画。今回ご紹介するのは、イタリア生まれの超小型オフロードヴィークル「フェルヴェス・レンジャー」である。
1966年のトリノ・ショーで発表されたフェルヴェス・レンジャーは、簡素を究めたコンパクトなオフロードカー。でも今となっては、いかにもイタリア車らしい可愛らしさも感じさせる、不思議な魅力を持つ一台である。
その創造主となったのは、カルロ・フェラーリという人物。そして彼の興した会社は、珍車好き界隈では名前はそれなりに有名ながら、それ以外の情報は皆無にも等しい小さなコンストラクター、「フェルヴェス」である。
世界のモータースポーツ界、あるいは自動車業界でも最も有名なファミリーネームのひとつとともに生を受けたカルロ・フェラーリは、やはり自分の名字をそのままブランド名にすることには、どこか遠慮めいた気持ちがあったのだろうか、自身のブランドは「フェラーリ・スペシャル・ビークル(FERrari VEicoli Speciali)」のイニシャルをとって「フェルヴェス」と呼ばせることとした。
したがって、フェラーリ社の「カヴァッリーノ・ランパンテ(後脚で立ち上がる仔馬)」を連想させられてしまいそうな、ユニコーンをかたどったエンブレムが付けられてはいるものの、あの「フェラーリS.p.A」社との関連性は一切ない。

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フィアットのコンポーネンツを多用、その理由は?

トリノを拠点にエンジニアとして活動していたカルロ・フェラーリは、イタリアの都市の狭い道や曲がりくねった道にも、あるいは農地やオフロードにも対応できる、手頃でシンプルな小型車をつくりたいと考えていたとのこと。そして、フェルヴェスにとって唯一の生産モデルとなったレンジャーは、同じくトリノを本拠とするイタリアの巨人、フィアットのコンポーネンツを大々的に流用していた。
メカニカル部品の多くはフィアットから供給を受けられるうえに、フィアットの教育を受けたメカニックであれば、簡単にメンテナンスを行うことができるからである。


リヤエンドに搭載され、18psを発生する空冷直列2気筒OHVエンジンは二代目「500」から、4輪独立懸架のサスペンションは「600D」からコンバートされたもの。また、文献などの記述はないが、形状からしてステアリングギアボックスは「600ムルティプラ」と共用と思われる。つまり、フィアットの名車「ヌォーヴァ500(チンクエチェント)」と「600(セイチェント)」の両方の要素を取り入れたモデルということになる。
いっぽうボディは、鋼板とリベット留めのアルミニウム合金を組み合わせたシンプルきわまる構造とされ、「ボート」ないしは「バケツ」とも称されたフラットサイドに、取り外しが可能な左右ドア。同じくフラットな形状の折りたたみ式&取り外し可能なウィンドスクリーン。「ハンカチのよう」と形容される、簡素な折りたたみ式ソフトトップを組み合わせる。


細かいところでは、テールランプはフィアット「850」用のもの。つまりは、あの「ランチアHFストラトス」とも共用ということになる。
また、装備と言えるような装備はほとんどなく、クラシックでミニマルな雰囲気も漂わせるインテリアには、若干狭いながらもなんとか大人4名が乗れるシートレイアウトが与えられている。
くわえて少量生産車ながら、フィアットと同じリヤエンジン+後輪駆動の2WD仕様だけではなく、フェルヴェス独自のドライブトレーンを与えられた4WD仕様もラインナップ。その違いは駆動輪の数と車両重量だけで、4WD仕様は当然ながら若干重くなっていた。
他方2WD仕様は軽いぶん燃費効率に優れ、イタリアや南仏にはありがちな小さな集落やビーチリゾート、ワインやオリーヴの農場、さらにはヴィラ(別荘)内などでの使用に好適だったとのことである。
なお、4WD仕様のオプションにはデフロックと5速トランスミッションなども含まれていたそうだが、実際の装着例はほとんど確認されていない。


なぜフェルヴェス・レンジャーは稀少車に?

いずれにしてもフェルヴェス・レンジャーは、優れた進入角と発進角、適度な地上高と比較的狭いトレッド、そして非常に低いギア比に絶対的な軽さも相まって、オフロードにおける走破性はなかなか優れたものだったとの由。まさに「ジュニア・ウニモグ」や「ミニ・ランドローバー」とも言えるもので、文字どおりどこにでも行ける万能車だった。
たとえばイタリアのワイナリーでは、作業員がブドウ棚にクルマに乗ったまま進入して生育状況をチェックできるなど、ユーザーからは高い評価を得ていたとはいうものの、簡素な内外装のわりには少々高価だったことから、イタリア以外の市場では大きなヒットを得るには至らなかった。
1970年に工場のシャッターが最終的に閉められるまでに、フェルヴェスは約600台のレンジャーを生産したとされるが、そのうち現存するのは一説によると50台以下といわれており、その多くはイタリアやヨーロッパ各地に生息。また、アメリカにも少数ながら存在するという。
そして、日本国内では写真のブルーの個体。ユーモラスなスタイリングからオーナー自ら授けたニックネーム「岩石オープン」とともに、国内エンスー界隈ではすっかり有名になった、唯一現存しているレンジャーと目されているようだ。

文:くるくら
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