この記事をまとめると
■ホンダの電気自動車Super-ONEにワインディングで試乗
ジャジャ馬だけどパワー感にシビれた! 今じゃあり得ないドッカンターボの国産モデル5選
■電気自動車としての完成度は非常に高い
■速さを追い求めるのではなく走る楽しさを追求した味付け
見た目はブルドッグをオマージュも走りにジャジャ馬感なし!
ホンダが投入した新型「Super-ONE」は、軽自動車規格のN-ONE e:をベースに開発されたスポーツEVだ。軽自動車由来のコンパクトなボディにオーバーフェンダーを組み合わせ、トレッドも拡大。軽規格を超えた普通車登録とすることで、デフォルトの最高出力47kW状態から70kWまで出力を引き上げるブーストモードを実装している。
搭載される駆動モーターや19.5kWhのバッテリーはN-ONEe :と共通で、最大トルクも162Nmと同値だ。ただしSuper-ONEは、そこへスポーツモデルとしての遊び心を与え、外観的にも走行性能面でも魅力を付加したといえる。
まず走り始めて感じたのは、BEV(電気自動車)としての完成度の高さだ。デフォルトのノーマルモード47kW状態では静粛性が高く、アクセル操作に対する反応も穏やか。市街地を流している限りでは、軽EVとしての日産サクラや三菱eKクロスEVなどと同様な扱いやすさがある。
しかし、ボディ剛性の高さや足まわりのしっかり感には明確な差がある。今回試乗したワインディングや荒れた舗装路でも、入力を受けたときの振動収束が際立っていい。高級車という表現は大げさかもしれないが、少なくとも従来の軽自動車ベースのEVとは異なる上質感をもっている。
その背景には、単なるドレスアップでは終わらないメカニズム変更がある。フロントサスペンションは出力向上とトレッド拡大に合わせ、ロアアームをアルミ鋳造製へ変更。左右不等長ドライブシャフトの剛性も最適化され、トルクステアを軽減している。
実際、強めにアクセルを踏み込んでも、FF(前輪2輪駆動)の高出力車でありがちな加速時にハンドルを取られるトルクステアが非常に少ない。電動パワーステアリングも軽快で、キックバックをうまく抑え込んでいる。かつてのホンダ・シティターボII ブルドッグを知る世代からすると、ここはもっとも印象的な違いだろう。
1980年代のシティターボIIブルドッグは、強烈なトルクステアとボディ剛性の低さに起因したジャジャ馬感が特徴的だった。そして、それをベースに開催されたワンメイクレース仕様ではスリックタイヤによるグリップ限界とシャシー剛性のアンバランスさでドライビングは難しかった。レースでは、スタート直後からマシンがトルクステアで左右に暴れ、接触やクラッシュも多発していた。
実際に参加した僕自身も大クラッシュに巻き込まれ空中3回転を経験している。しかし、Super-ONEは見た目こそブルドッグをオマージュしているが、走りの質感はまったく異なっていた。ジャジャ馬感は皆無で現代的に洗練されたスポーツEVとして完成された走りなのだ。
ブーストボタンを押せば31馬力の出力アップ!
ドライブモードはECON、NORMAL、CITY、SPORTを備える。CITYではアクセルオフ時の回生が強まり、ワンペダル感覚が強くなる。市街地ではアクセルとブレーキの踏み替え回数を減らせるため、扱いやすい。ECONではさらに出力特性が穏やかになり、航続距離重視の制御へと変わる。メーター表示によると、96%充電時の航続可能距離はNORMALで203km、CITYで203km、ECONで216km、SPORTでは202km表示だった。因みに満充電時のWLTCモード航続距離は275kmだ。
SPORTへ切り替えた瞬間、このクルマの性格が変わる。室内では低音の効いた仮想のエンジンサウンドが流れ、7速を仮想したシフト制御も作動。3連メーター表示に切り替えた際には仮想エンジンの回転計が表示される。さらにブーストモードを選択すると、最高出力は70kWへ上昇する。ステアリング左右にはパドルシフトも備わり、左パドルでシフトダウン、右パドルでシフトアップを演出。減速Gや加速感まで含め、7速DCT車のような感覚を再現している。
興味深いのは、その演出方向だ。ホンダらしい高回転型スポーツエンジンではなく、大排気量V8のような低中速トルク型の味付けになっている。実際に走らせると、V8+ATのアメリカンマッスルカーを思わせるようなトルクフルで重厚な加速感がある。もちろん実際の速度域は法定速度内だが、トルク感や変速演出によるG変化が加わることで、体感速度は十分高く感じる。
一方で、このクルマに速さそのものを求めてはいけないとも感じさせられた。ブーストモード時でも70kW、約95馬力相当であり、最大トルクは162Nmで変わらない。高回転まで最大トルクを持続させることを可能としたものだ。絶対的な速さを競うクルマではない。むしろ、軽量な1090kgのボディと電動トルクのピックアップのよさ、そして仮想シフトやサウンドを組み合わせ、速度域を問わず運転そのものを楽しませる方向へ振っているわけだ。
サーキットへもち込めば、速くはないが一定のポテンシャルは見せるだろう。筑波のコース1000やミニサーキットなら十分遊べるはず。しかし、19.5kWhのバッテリー容量でスポーツ走行を続ければ、電力消費は大きい。サーキットで全開走行すれば、満充電でも30分もたないのでは、とエンジニア氏は語る。そもそもサーキットを全開で走りまわる前提のようなヒュンダイ・アイオニック5Nなどとは性格が違うのだ。
ブレーキはフロント/ディスク、リヤ/ドラム。回生ブレーキを積極的に使う制御のため摩擦ブレーキへの負担は比較的小さい構成だ。
このSuper-ONEは、シティターボII ブルドッグを知る世代に向けた懐古主義だけのモデルではない。当時を知る50~60代に加え、若い世代とも共有できる現代的なスポーツEVとして成立させることを狙っている。
かつてのブルドッグは、危うさも含めて異端児的な魅力をもっていた。しかし、Super-ONEは違う。暴れない。破綻しない。静かで上質で、しかも遊び心がある。そこに現代のホンダらしさがある。
速さを追い求めるクルマではない。しかし、走らせることそのものを楽しませてくれるEVとして非常に完成度も満足度も高い1台だった。
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みんなのコメント
東京都在住で駐車スペースもあったため、買っても損はしないと思い即決しました。
確かに補助金がなければ検討すらしませんでしたが、大人のオモチャが安く買えて良かったです。今は納車を楽しみにしているところです。
納車が来年3月だって、補助金も怪しいって言われたから買うのやめました。
セカンドカーに欲しかった。