アンドレッティが最初にF1へのエントリーを表明してから767日間、紆余曲折のプロセスを経て、2026年にF1参戦を開始するキャデラック。まさに今、ファクトリーでは時間との戦いが繰り広げられている。
チームはインディアナポリス州フィッシャーズに90エーカー(約36ha)の広大な本拠点を建設中だが、アンドレッティがシルバーストンに構えたファクトリーでF1参戦への準備が進められているのだ。
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motorsport.comはそのシルバーストンのファクトリーを案内するツアーに参加した。
最終的にキャデラックのF1参戦が承認されてから、グリッドにマシンを並べるまで11ヵ月あまりの時間しかない中で、そのシルバーストンのファクトリーでゼロから設計、製造、テストを行なわなければならない。
ファクトリーを案内したチーム代表のグレアム・ロードンは「現在のカレンダーに基づくと、フリー走行に参加するまでの期間は実際には1年より1日少ないことになる」と語った。
「そして、ここを歩き回ればお分かりの通り、やるべきことが山積みなんだ」
彼はファクトリーに設備が搬入されるのを横目にそう話した。多くの設備はまだパッケージに入ったままだった。
「自分たちはアメリカのチームだ。オフィスの本部はインディアナポリス近郊のフィッシャーズにある。シルバーストンで見てもらったものは、グリッドに立つために必要な基本的な要素と言えるだろう」
「しかしチームには、もうひとつ重要なファクトリーができる。適切なタイミングで皆様にご紹介できることを楽しみにしている」
「チームを構築する上で最大の課題、あるいはチームにおける最も重要な要素は、当然ながら人材だ。このプロセスは現在109日目を迎えている。最初のレースまでにはまだ約250日ほど残っている。つまり、すでに約3分の1の段階まで進んでいる。しかし、チームメンバーの約67%が既に配置されている」
「そういったチームで実際にレースに携わる人数という点では、開幕戦までに約600人必要だ。現在、その目標の3分の2に達している状況であり、おそらく現時点でもF1グリッドで最も小さなチームではないだろう」
新興チームの様々な部門を収容するシルバーストンの施設は、ハブ拠点となるだろう。メインの拠点はあくまでフィッシャーズであり、それがキャデラックのF1オペレーションにおける長期的なホームとなる。
「ここには現在6つの建物があるが、最終的に4つの建物に統合され、そのうち3つが主要な施設となる」
「イギリスの技術センター、生産センター、物流センターだ。これがここでの3つの主要な施設であり、小さな機械工場も設置される。すでに約6000枚の図面を作成し、10000個の部品を製造している」
「フィッシャーズは将来的には当社の製造拠点となる予定だが、その実現には時間がかかる。建物を建設し、機械を設置し、人材を採用し、訓練する必要がある」
「そのため、当社は第三者サプライヤーに大きく依存している。参考までに、今週は30社の新規サプライヤーと合意した。これが求められるペースなんだ。サプライヤー管理だけでも大きな課題だ。将来的にはその多くを内製化していく予定だ」
「IT部門では、425台のノートパソコンを配布した。これだけでは大した数に思えないかもしれないが、既存のチームでは単に更新作業を行なうだけだ。このような大規模な配布を一括で行なうと、その規模の大きさに驚かされる」
「IT部門だけで、6000件の発注をしている。そして現在、CFD(コンピュータ流体解析)のデータとして5ペタバイトを保存している」
「そのデータを保存するインフラがなかったことを忘れないで欲しい。そのインフラを構築する必要があった。そして、それはここにいなかった人々が担当している。なぜなら、我々も彼らを雇用する必要があったからだ」
アメリカとイギリスでのファクトリーに加え、2028年からはミシガン州シャーロットのファクトリーで生産されるゼネラルモーターズ製のパワーユニットも使用することになるため、ロードンは多くの異なる部門を統合し、機能させられるような管理構造を構築する必要があると語った。
その一環として、キャデラックはNASAがアポロ計画で月面探査を実施した際に採用した手法を活用しているとロードンは明かした。
「我々が考案した管理構造について、あなたを退屈させられるほど話せるよ」
「現在のタスクを見れば、動かせないデッドラインがある。そのため、スタッフが相互作用をする必要があるんだ。エンジニア同士が直接コミュニケーションを取る必要がある」
「具体的にはここにいるエンジニアがシャーロットやミシガン州ウォーレンのエンジニア、または最終的にフィッシャーズのエンジニアと会話できるような仕組みが必要だ。そのため、非常にフラットな管理構造を採用している」
「これはアポロ計画をモデルにしている。非常に似ているんだ。我々は月面に人間を送り込むわけではないが、時々そう感じるよ!」
「レースチームはしばしば軍事用語で表現される。レースチームは『ピラミッドのような構造で、頂点に1人がいる』と言う人もいるだろう。典型的な軍事構造はコマンド&コントロール(指揮&統制)だ。つまり誰かが命令を出し、人々が実行するんだ」
「我々のような多拠点体制では、それが大きな課題となる。エンジニアがピラミッドの階層を上下に移動し、全く違う国に移動して、また上下に移動しなければならない状況は避けなくてはいけない。そのため、コマンド&コントロールではなく、ミッションコントロールのような構造となっている」
オペレーションの大部分をアメリカで構造化することで、ロードンはキャデラックに優位性をもたらすことができると確信している。またシルバーストンのファクトリーを少なくとも10年間維持する方針を採っており、これによりイギリスの経験豊富な人材を惹きつけることができる。
そしてアメリカでの人気拡大にも対応し、ファンだけでなく、スキルを持つ人材を獲得するのにも役立つだろう。
「我々はアメリカの人材を採用する予定だ」
「その一部は、特定の分野のトレーニングを受けるためにここに来るかもしれない。しかしF1の人材は、イギリスやヨーロッパでしか獲得できないという認識があると思う」
「だが私は常に、『アメリカでは本当に高度なエンジニアリングが数多く行なわれており、文字通り月面に人間を送り込んだんだ』と考えている。GMとのプロジェクトで既に確認したように、エンジニアリングのレベルと基準は本当に、本当に高いんだ」
「(イギリスやヨーロッパとは)法律が異なり、そうした事業を設立する任務は本当に難しい課題だ。だが優秀な人材の採用と確保に関しては、私の心には全く疑いはない。実際、これは競争上の優位性になると考えている」
キャデラックのF1参入に関する疑問のひとつは、同ブランドが選手権に何をもたらすかだった。GMのフラッグシップブランドであるキャデラックは欧州での市場シェアは小さいものの、ロードンはスポーツフランチャイズ大手であるTWGグループがプロジェクトを支援しているため、それが問題になるとは考えていない。
「我々は多くのモノをもたらすことができると思う」とロードンは付け加えた。
「規模の大きい、GMの支援を受けていることと同時にTWGが参画していることも重要だ。なぜなら、スポーツを理解する投資家がいることを認識できるからだ」
「チームの構成を見てみると、多くの経験豊富な人材がいる。我々が彼らに提供できるのは、間違いなくこのフラットな組織構造だ。多くの責任を委ねることができる」
「そのクルマが初めてホイールを回転させた時、ここにいる全員が『自分がやったんだ』と言えるだろう」
だがキャデラックのドライバーラインアップは依然として不明な点が残っている。10度のF1優勝経験があり、現在メルセデスのリザーブドライバーを務めているバルテリ・ボッタスの獲得が強く噂されている。一方、2024年末にレッドブルのシートを失ったセルジオ・ペレスも候補に挙がっている。
ロードンはドライバー選択について口を閉ざしているが、経験はチームに役立つだろうと明かした。
「現場を歩き回っていた人が、起こっていた状況を見て『ああ、あのドライバーが最優先事項ではない理由がわかるよ』とコメントしていた。だが、まだ何も決まっていないよ」
「市場に誰がいるか知っているし、必要なものが何なのかも大体把握している。しかしその段階に達するまでにはまだ時間がかかる。新チームがF1での初年度に、F1経験豊富な人材を擁することで大きな恩恵を受けるという主張は、非常に説得力があると思う」
キャデラックのF1プロジェクトはまだ始まったばかりであり、やるべきことは山積みだ。だがロードンが正しいのであれば、そしてNASA式のビジネスモデルがうまく機能すれば、キャデラックが月を目指さない理由はないだろう。
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