ポンティアック、カンバーック!
アメリカにおける自動車の歴史は、淘汰の歴史でもあった。と言っても、どこの国でもそうではないかという声がありそうだが、アメリカでのそれは特に際立っている印象がある。戦後も数社があったインディペンデントのメーカーは1980年代までにビッグスリーに飲み込まれ、それと並行しつつ現在に至るまで、ビッグスリーの擁するブランドも減少の一途を辿っていった。
回転対座シート登場前夜!バリエーションを拡大した「C120型系 日産チェリーバネット」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第6回
【画像11枚】黄金時代そのままのフィーリングと新時代の感覚がぶつかり合う1985年版カタログを見る!
GMのポンティアックなども、そうして消えたブランドのひとつとして挙げることができるだろう。ビッグスリーのブランドに多くある、吸収されて傘下になったというケースではなく、1926年にGM内に創設されたポンティアックだが、その業績悪化から2010年をもって消滅している。戦前から1950年代にかけては大人しい上級大衆車であったポンティアックだが、1960年代からはスポーツイメージを高め、GTOやファイアーバードなどの名車を送り出してきた。
ここでお見せしているのは1985年版のポンティアックの総合カタログである。と言っても本国版ではなく、わが国で輸入販売を行っていたヤナセによるもの(カタログの表記は「ポンテアック」)なので、掲載されているモデルは多くない。ファイアーバード、6000、グランプリの3種である。同年本国でのポンティアックのラインナップにはこのほかに、1000やサンバード、グランダム、ボンネビルにパリジェンヌ、そしてフィエロなど、大小様々のモデルがあった。
話を日本版カタログに戻すと、サイズは295×209mm(縦×横)、表紙を合わせて24ページとなっている。写真はもちろん本国版と同じものが使われており、いかにもアメリカでの撮影らしい雰囲気を感じさせてくれるが、そういった絵面と、見出しの文字を斜体にしたり、かすれさせたりといった、いかにもこの頃の日本らしいデザインとがぶつかり合って、独特の世界を作り出しているようだ。以下、掲載の各モデルについて述べていこう。
1985年、ヤナセが販売した3種類のポンティアックとは
ファイアーバードはフォード・マスタングからの刺激によって誕生した所謂ポニーカーのひとつで、この世代は1982年型からの三代目にあたる。ベースのファイアーバードにその上級版のSE、そしてエアロパッケージなどを装備したトップモデルのトランザムという3種類でラインナップを構成していたが、カタログにはトランザムのみが掲載(表記は「ファイヤーバードトランザム」)。つまりヤナセが販売していたのはトランザムのみだったようだが、資料不足から他の年がどうであったかは不明である。
トランザムの名は知っての通り、SCCAのトランザム・レースにちなんだネーミングであるが、このカタログでは「トランスアメリカン=大陸横断」「ロングツーリング」といったイメージと結び付けて語られている。アメリカのレースそのものが日本人には馴染みの薄いものであったためであろう。また、その名称使用料をSCCAから請求され、GMが支払いに合意したことで訴訟を回避したという逸話もあり、そうしたことも理由かもしれない。
6000はインターミディエイトに属するモデルで、ル・マンの後継にあたるFF車である。三代目ファイアーバードと同じく1982年型で登場しており、ボディは2ドア・クーペと4ドア・セダン、そしてワゴンがあった。6000の4ドア・セダンにはSTE(スペシャル・ツーリング・エディション)と呼ばれるモデルがあり、トランザム同様にヤナセが販売していたのは(すくなくともこの年は)これのみのようだ。その名の通り固められた足周りが特徴で、この年からは2.8L V6のMFI(電子制御インジェクション)付きエンジンを搭載。前年までこのエンジンはキャブ仕様であった。
これぞ1970~1980年代のアメ車! と思わせるルックスのグランプリは、シボレー・モンテカルロの兄弟車にあたる、ミッドサイズのパーソナルクーペ。この1985年型は、1978年型で登場した世代の後期にあたるモデルだ。1981年型で比較的大きなデザイン変更がされ、前後オーバーハングを延長して従来よりも滑らかなルックスとなっており、1985年型は、1960年代から長らく受け継がれてきた縦線基調のフロントグリルを、格子状のものとしたのが特徴である。ベースモデルのグランプリ、その上級版のグランプリLE、そしてトップモデルのグランプリ・ブロアムがあったが、掲載されているのはグランプリLEのみだ。
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