2021、2022年に全日本スーパーフォーミュラ選手権を連覇した野尻智紀(TEAM MUGEN)。チームとの来季以降の複数年契約を発表して臨んだ2023年“最後の仕事”、鈴鹿での合同/ルーキーテストは、総合10番手タイムで2日間の走行を終えた。
2日目午後のセッション終了後、メディア・ミックスゾーンに現れた野尻は開口一番「僕がニュータイヤを履くと赤旗が出る、という謎のスパイラルに陥っていまして……」と苦笑い。
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「6セットあるニュータイヤのうち4セットくらいは赤旗が出たなっていう感想で、ニュータイヤでのアタックに関しては不完全燃焼なところがありましたけど、新しい共通ダンパーについてはいろいろと性格を知ることができたので、収穫は多かったテストだったなと思います」
野尻も言及するように、今回のテストではどのチームも新たに導入されるオーリンズ製の共通ダンパーを理解することに主眼が置かれていたようだ。今回は1台あたり1セットがデリバリーされたが、使用は任意。従って、2台体制の陣営では初日の走り始めは1台に2023年までの従来のダンパーを、もう1台には新たな共通ダンパーを装着し、各種の比較などをこなしていったところもあったようだ。
今回の共通ダンパー採用では、とりわけピッチング方向の動きを抑制するサードエレメントの実質的な簡素化により、マシンの挙動やセットアップ、ひいては全体の勢力図に変動が起きるかどうかがひとつの焦点となっている雰囲気がある。
野尻はマシンの挙動について「体感はものすごくあります」と大きな変化を感じたことを認めた。
「ただ、それはそれぞれのチームの財政事情などを鑑みての(コストダウンという)決断でしょうから、我々はそれを受け入れるしかないと思います。でも、もうちょっとタイム出したいですよね、本音を言えば。(全体のベストタイムが1分)36秒前半でしたが、これだけ寒い時期であれば、本来なら35秒台に普通に入ってくるコンディションだと思うんですよ、ひと昔前のマテリアルなら。その辺はちょっと物足りないのかなと思ったりもしますけど、とはいえ(このルールのもとで)レースは行われるわけなので、そこで我々のパフォーマンスをしっかり出せるように取り組むしかないですね」
野尻は「収穫が多かった」と総括した一方で、今回のテストの舞台が鈴鹿であったことに、ある種の懸念も示している。ハイダウンフォース・サーキットである鈴鹿では、ダンパーが共通化されたことによる“真の影響”が見えにくい可能性がある、というのだ。
「イナーターが禁止になったことなどもあり、いまのクルマはすごく動きやすいんです。その中でダウンフォースがそういったものを誤魔化して、つまりは(マシンを路面に)押さえつけてくれてしまうので、良くも悪くも、新しい共通ダンパーの“弱点”みたいなものを、ダウンフォースが補ってしまっているという可能性も充分に考えられます。ですので、端的にいうと開幕まで(勢力図は)分からない、という感じです。
「なので、参考になるテストなのかどうかはいまいち分かっていないのですが、タイムもある程度出せましたし、まぁ良かったテストだったのではないかと思います」
開幕前の公式テスト、そして2024年シーズンは第1戦も鈴鹿での開催となる。これが来季の勢力図にどう影響してくるのか。今回のテストのリザルトだけを見れば、若干の勢力変動はすでに始まっているとも感じられる。
なお、2日間の総合リザルトで7番手までをトヨタエンジンユーザーが占めたことについて野尻は、「ホンダのエンジンも例年このテストでそこまでパワーを出して……というのはやっていないはずなので、そんなには気にしていません」と語っている。
「ただ、僕個人としてはその(きちんとアタックできた)タイミング的には、しっかりタイムシートの上位にいたので、大丈夫かなという感覚です」
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