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帝王トヨタ一強!! シェア5割超えの盤石体制が国内市場にもたらす功と罪

掲載 更新 64
帝王トヨタ一強!! シェア5割超えの盤石体制が国内市場にもたらす功と罪

 日本国内の新車販売で、トヨタが強すぎる状況が続いている。2020年度の国内販売では(昨年発売されたヤリスが絶好調なこともあり)登録車販売シェアで5割を超えた。

 このままトヨタの一強状態が続くことは、日本の新車販売市場にとってよいことなのだろうか。なんとなくよくないことが起こる気がする…。新車市場にいま何が起こっていて、この状態が続くとどうなるのか。新車販売市場に詳しい渡辺陽一郎氏に伺った。

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文/渡辺陽一郎 写真/トヨタ

【画像ギャラリー】国内新車販売台数上位! トヨタの人気車を画像でチェック

■トヨタは2020年度の国内販売数1位で33%を占める

 2020年度(2020年4月から2021年3月)の国内新車販売状況を見ると、販売1位のトヨタ(レクサスを含む)は、国内販売総数の33%を占めた。

2020年度(2020年4月~2021年3月)新車販売台数

 それが小型/普通車に限定すると、52%に跳ね上がる。2020年度の国内販売では、軽自動車が38%を占めており、ホンダも国内で売った新車の54%が軽自動車であった。日産でも44%を占める。そのために最近は、小型/普通車の売れ行きが下がり、軽自動車をほとんど扱わないトヨタのシェアが半数以上に達した。

 トヨタの販売比率の拡大は、小型/普通車の登録台数ランキングにも影響を与えた。2021年1月の場合、1位:ヤリス(ヤリス+GRヤリス+ヤリスクロス)、2位:ルーミー、3位:アルファードとトヨタが上位を独占して、トップ10車の内、トヨタが8車を占めた。残りの2車はノートとフィットだ。

 2月は上位からヤリス、ライズ、カローラシリーズ、アルファードと続き、トヨタが上位5車を占めた。トップ10車の内、8車がトヨタ車で、残りはノートとセレナであった。

 3月も上からヤリス、ルーミー、アルファードが入り、トップ10車の内、7車がトヨタだ。残りはノート、フリード、フィットになる。

■トヨタ車はユーザーのニーズをバランスよく満たしている

 小型/普通車の販売上位にトヨタ車が並ぶ理由は3つある。まずは商品力だ。

 ヤリスの場合はヤリス+GRヤリス+ヤリスクロスの合計で登録台数が伸びたが、別々に算出しても、2020年3月であればヤリスのみで1万4330台、ヤリスクロスも1万2890台に達した。ヤリスとヤリスクロスは仮に別々に勘定したとしてもトップ10に入る。

ヤリスファミリー(ヤリス、GRヤリス、ヤリスクロス)

 ヤリスは運転感覚が軽快で、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに燃費が優れ、価格は割安だ。ヤリスクロスは外観がSUVらしくカッコ良く、価格はライバル車と比べて20~30万円安い。アルファードやハリアーは、内外装の質と居住性が優れ、ハイブリッドも選べる。

 このように販売の上位に入るトヨタ車は、内外装の質、居住性、燃費など、それぞれのカテゴリーに求められるユーザーニーズをバランス良く満たした。そのために好調に売れている。

 小型/普通車の販売上位にトヨタ車が並ぶ2つ目の理由は、販売網が強いことだ。トヨタの販売店舗数は全国に約4600店舗で、ホンダの約2150店舗、日産の約2100店舗に比べると2倍以上の規模になる。そのために以前から売れ行きが多い。

■2020年のトヨタ販売体制変更で登録台数が急増

 3つ目の理由は、2020年にトヨタの全店が全車を扱う体制に移行したことだ。以前のアルファードやハリアーはトヨペット店、ヤリスも発売時点では東京地区を除くとネッツトヨタ店の専売だったが、2020年5月からは全店で買える。

 その結果、特にアルファードとハリアーは登録台数を急増させた。2020年度の登録台数を見ると、アルファードは前年同期の1.6倍、ハリアーは2020年6月にフルモデルチェンジを受けた影響もあって前年同期の2.8倍だ。

アルファード 特別仕様車 S“TYPE GOLD”(ガソリン・2WD)

ハリアー 2020年6月にフルモデルチェンジをおこなった

 コンパクトカーのルーミー&タンクは、全店が全車を扱う体制になったのを受けて、2020年9月のマイナーチェンジでタンクを廃止した。需要がルーミーに集まり、同年10月以降の登録台数は前年同期の1.5~1.7倍に達する。全店が全車を売る体制になり、売れ行き一層伸びて、販売ランキングの上位に入った。

ルーミー 2020年9月のマイナーチェンジよりタンクを廃止したことにより、需要が集まった

■販売制度の変更でデメリットも..

 ただしその弊害もあり、売れ行きを下げたトヨタ車も少なくない。筆頭はアルファードの姉妹車になるヴェルファイアだ。現行型が登場した時にはヴェルファイアの売れ行きが多かったが、その後のマイナーチェンジでフロントマスクを変更すると、順位は逆転してアルファードが売れ始めた。

 この販売格差が、全店で全車を売る体制になって拡大した。アルファードは、以前はアルファード&ヴェルファイアを扱わなかったトヨタ店やトヨタカローラ店でも堅調に売られ、以前はヴェルファイアを専門に販売していたネッツトヨタ店でも「アルファードを選ぶお客様が増えた」という。

ヴェルファイア 特別仕様車 Z“GOLDEN EYES”(ガソリン・2WD)

 その結果、2021年3月の登録台数は、アルファードが1万3986台、ヴェルファイアは1183台になり、約12倍の販売格差に達した。基本的に同じクルマなのに、ヴェルファイアはアルファードの8%しか売れない。

 このほか2020年度で見ると、プリウスは前年同期の52%、アクアは53%、C-HRは57%、クラウンは74%の売れ行きだ。特にプリウス、アクア、C-HRは、現行型が登場した時から全店で販売していた。そのために発売当初は全店扱いのメリットで好調に売れたが、2020年5月以降は、その優位性も薄れて売れ行きを下げた。

■販売格差が起こるのも想定されていた⁉

 プリウスとアクアは、以前はハイブリッド専用車の魅力も際立った。環境対応をアピールする企業が、その特徴を表現することも視野に入れ、外観を見ればハイブリッドとスグに分かるプリウスやアクアを営業車に使うこともあった。

 ところが今は売れ筋になるトヨタ車の大半にハイブリッドが設定され、もはや珍しい環境技術でもなくなったから、アクアはヤリスハイブリッド、プリウスはカローラツーリングハイブリッドなどに需要を奪われた。

カローラ HYBRID W×B(スパークリングブラックパールクリスタルシャイン)

 以前のトヨタ店では、クラウンの顧客がアルファードやハリアーに乗り替えると、自社の顧客がトヨペット店に移ることを意味した。これは困るから、サービスを手厚くするなど一生懸命にクラウンを売ったが、今は自社で普通にアルファードを販売できる。

 その結果販売格差が生じるのは、当然の結果だ。

 ただしこの状況が加速してクラウンが廃止されたり(すでにSUV化する話がある)、アルファードの姉妹車であるヴェルファイアが廃止されると、ユーザーの選択肢を狭めてしまう。

 これは、あらかじめ想定されていたことで、全店が全車を売るようになった目的のひとつも、生き残るクルマを明らかにして車種をリストラすることだった。

■販売系列の廃止は高価格車にとってマイナスだ

 同様のことが販売店にも当てはまる。トヨペット店とトヨタカローラ店が隣接する地域など、以前は取り扱い車種が異なるから併存したが、同じになれば販売力の強い店舗が残る。

 トヨタの店舗数は前述の約4600店舗と充実しているが、2010年頃は5000店舗を超えていた。すでにトヨタの販売店は減少傾向にあり、全店が全車扱いになったことで、さらに加速する可能性もある。

 日産やホンダも、2000年前後から2010年頃に掛けて、全店が全車を扱う体制に移行した。その結果、一部の人気車だけが好調に売れるようになり、2020年度のホンダでは、軽自動車にフィットとフリードを加えると国内で売られたホンダ車の80%に達する。これと同様の現象がトヨタにも起こり始めている。

 今のトヨタ車の売れ方は、リストラの範囲内に収まるが、今後は歯止めが掛からずホンダのようになる可能性もある。特にクラウンのような売れ筋カテゴリーからはずれた高価格車は、意識的に力を入れて売る必要があり、系列の撤廃はマイナスに作用する。

クラウン 系列販売制度の廃止により損失を受けてしまった..

 クラウンの開発者は「クラウンは、お客様、トヨタ店の皆様、トヨタが力を合わせて育ててきたクルマだと考えている」と述べた。まさにこの点に、全店が全車を扱うことの損失がある。

■ユーザーのためにもメーカー同士の競争は大切

 ほかのメーカーに与える影響はどうか。ユーザーとしては、小型/普通車登録台数ランキングの上位にトヨタ車が並んだことで、ほかのメーカーが発憤する効果を期待したい。

 ところが実際は逆だ。

 軽自動車に力を入れたり、海外市場を重視する。日産は「2021年からは国内に力を入れる」としているが、今のところは新型エクストレイルやアリアも登場しておらず、本当のところはどうなるか分からない。

 ちなみに大人気のアルファードは、最初は(当時)好調に売れていたエルグランドを販売面で倒すことを視野に入れて開発された。

 シエンタは、ホンダモビリオが燃料タンクを前席の下に搭載して低床設計にしたのを受けて、初代で薄型燃料タンクを開発して2代目の現行型に受け継がれている。ランドクルーザープラドの初代モデルは、絶好調に売れていた三菱パジェロに刺激されて開発されている。

 いろいろなメーカーが優れた商品を開発して好調に売るから、トヨタも対抗して商品力をさらに向上させてきた。今は電動化を視野に入れて、メーカー同士の協力関係が話題になるが、依然として競争は大切だ。

 長年にわたり競うことで商品開発が促進され、ユーザーの利益を高めてきた。この好循環を止めてはならない。日本のユーザーのために、トヨタ以外のメーカーにも、大いに頑張っていただきたい。

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みんなのコメント

64件
  • ホンダは利益のない軽自動車に注力して日産は新車を全く投入しなかった
    ライバルが勝手に自滅したのはトヨタのせいじゃないよね
  • 電気自動車が強くこれからのはずの日産三菱は自滅。マツダはディーゼルでやらかし、本田はDCTで大チョンボ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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