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もうコリゴリ!?「虎の子」機を喪失したロシア軍 代わりに高性能戦闘機を前線へ「でも明らか力不足」その理由は

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もうコリゴリ!?「虎の子」機を喪失したロシア軍 代わりに高性能戦闘機を前線へ「でも明らか力不足」その理由は

「虎の子」軍用機を立て続けに失ったロシア

 2024年1月14日、ロシア空軍にとってひとつの悪夢が現実のものとなりました。A-50「メインステイ」早期警戒管制機が、ウクライナ軍の地対空ミサイルによって撃墜されたのです。

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 この機体はロシア空軍の空中指揮統制の中枢を担い続けた、いわば「空飛ぶ司令部」であり、その喪失は、戦術的損失にとどまらず、戦略的にも空軍の「目」と「耳」を失ったことを意味していました。

 加えて、この衝撃的な事件からわずか1か月後の2月23日には2機目のA-50がウクライナの攻撃により同様に撃墜されます。これらは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ロシア空軍が受けた最大の痛手といっても過言ではないでしょう。なぜなら、ロシアが保有するA-50の稼働機数はせいぜい数機と見られており、そのうち2機を一挙に失うことは、海軍に置き換えれば艦隊における旗艦を立て続けに沈められたに等しいからです。

 こうした相次ぐ喪失の結果、ロシア空軍はA-50の行動範囲を大幅に後退させざるを得なくなります。ロシア本土の奥深くから遠距離レーダーで監視を続けるしかなくなり、ウクライナ周辺でのリアルタイムの戦術統制能力は著しく低下したのです。こうしてロシア空軍は、戦場の「目」を失い、地上レーダー網や戦闘機搭載レーダー頼みの状況に追い込まれました。

 ロシア空軍はこのA-50喪失という大事件への対抗手段として、Su-35戦闘機を早期警戒機の代替として運用し、A-50の抜けた穴をカバーしているという情報があります。これはロシアの「背に腹は代えられない」切羽詰まった苦悩の一端だと言えるでしょう。

 Su-35は、ロシア空軍において最も高性能な多用途戦闘機であり、機首に搭載する「イルビス-E」フェイズドアレイレーダーの最大探知距離は公称400kmに及びます。さらに、その走査角度はおおむね240度、すなわち戦闘機としては破格の広い視野を有し、現代戦闘機の中では傑出した索敵能力を持っていると考えられます。

 この高性能レーダーにより、Su-35は従来の戦闘空中哨戒任務にとどまらず、一定の「空中警戒」的役割を担うことが理論上可能です。つまり、A-50の代わりに前線近くに滞空し、僚機や地上部隊に敵の接近情報を伝達する「即席の空飛ぶレーダーポスト」として用いられているのです。

中東の大国も40年前、同様に使っていた

 しかしながら、この運用には致命的な限界があります。早期警戒管制機には、同時多目標の対処能力やデータリンクによる広域的な情報共有能力が備わっていますが、Su-35にはそれらがありません。根本的な部分でA-50とは大きな性能差があり、よってSu-35で空域全体の指揮統制を行うことは不可能です。

 それでも、ロシア空軍はこのような「疑似早期警戒機」運用を選ばざるを得ない可能性が高くなっています。A-50を再び最前線に送り込むことは、3機目の損失を覚悟しなくてはならないからです。

 興味深いのは、このSu-35による暫定的な早期警戒任務の発想に、かつてあった戦争の歴史が重なる点です。1980年代に起きたイラン・イラク戦争の最中、イラン空軍はF-14「トムキャット」を早期警戒機の代わりとして前線上空に配置し、味方に対してイラク軍機に関する情報提供を行っていました。これができたのは、F-14「トムキャット」が当時としては卓越した高性能レーダーであるAN/AWG-9を搭載していたからです。

 専用の早期警戒機の導入が困難な国情の中、苦肉の策としてイランが生みだしたこの戦術は、それから40年経った21世紀、ウクライナ戦争において再び蘇ったといえるでしょう。

「戦闘機による早期警戒」という運用は、本質的には応急処置であり、恒久的な解決にはなりません。高空から広域を一望する能力、各部隊にリアルタイムで戦術情報を分配する能力、敵の電子攻撃に耐える通信・管制能力、これらを満たすには、やはりA-50のような専用早期警戒管制機が不可欠です。

 しかし、ウクライナ戦争の激しい対空戦環境下においては、その専用機こそ最も「危うい」存在となることが露呈したのです。このことは、E-767早期警戒管制機やE-2C/D早期警戒機を多数運用する日本にとっても、学ぶべき点が大いにある事象だと言えるのかもしれません。

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みんなのコメント

36件
  • tuk********
    重要な兵器をどんどん失って弱体化してくれる分には日本人は何も困りませんので、どうぞその調子で。
  • 6490
    中国から買って来るやろぉ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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