シリーズ恒例ル・マンのブガッティ・サーキットで争われた2023年ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第7戦は、今季も破竹の快進撃を続けてきた王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が、開幕からの連続ポールポジション獲得記録をさらに更新して土曜レース1と日曜レース3を制覇。この結果、自身5度目のシリーズチャンピオン獲得を決めている。
終盤戦の天王山でありながら、今月早くも3戦目となった9月23~24日の週末は、いつものとおり土曜予選から選手権6冠の“帝王”ことヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)やシュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)らを退け、キスが僅差となったスーパーポールのセッションで“定位置”を確保した。
6冠の“帝王”ヨッヘン・ハーンが待望の今季3勝目も、王者キスがハットトリック/ETRC第6戦
迎えたレース1でも真紅のマンはライバルを寄せ付けず、チェッカー時点で7秒ものギャップを築いて“ライト・トゥ・フラッグ”を達成。後続からの突き上げにディフェンスを強いられたハーンやハルムを差し置き、自身3連覇となるFIA ETRCタイトル獲得に近づいていく。
続くリバースグリッド採用のレース2では、シーズンを通して勝利を目前としていたプロモーターズ・カップ登録のジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/マン)が奮起。その一方で、陽が沈むサーキットでダンロップシケインを通過する際、ハルムとアンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イベコ)がワイドになり、コーナーカットのまま復帰し「アドバンテージを得た」として5秒加算ペナルティの判断が下る。
混乱のなか、集団の先頭に位置する好機を捉えたアンダーソンは、キスやハーン、アントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)といった総合勢がグリッド後方から上がってくることを予見し、背後にハルムを従えて必死の逃げを打つ。
さらにカップ登録の首位に立つホセ・エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/マン)も、総合登録の上位進出を阻む快走を披露したことから、アンダーソンが初の総合優勝を手にすることとなった。
■王者キス、5レースを残して3連覇を決める
明けた日曜の予選でも、前日レース1でフロントアクスルの損傷により唯一のDNFとなっていたサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)や、同じくドイツ人のハーンを退けたキスは、タイトル確定に向け完全に準備を整えてレース3をスタート。
このまま前日同様の“ライト・トゥ・フラッグ”と行きたかったハンガリーの英雄だが、ここでクルシムのイベコがトラブルで止まり、レースは赤旗中断となる。
そのリスタートで一矢報いようと奮起したのはレンツで、ダンロップブリッジ下でインサイドを死守して通過すると、キスの前に出ることに成功。好調な走りでブガッティ・サーキットを周回して1周のリードを保っていく。
しかし、レンツのリヤバンバーに張り付いたままだったキスがすぐさま首位奪還に成功し、そのまま今季19回目のトップチェッカー。これでシリーズ3連覇、自身5度目となるグッドイヤーFIA ETRCタイトルを獲得すると同時に、残り5レースの時点でチームタイトルまで確保した。
タイトル決定の余韻が残る週末最後のレース4で主役を演じたのは、こちらもカップ登録のルイス・レクエンコ(ルイス・レクエンコ/イベコ)で、前戦のベルギー・ゾルダーで開催されたレース3にて、壮絶なエンジンブローにより大きなダメージを負った自身のトラックに代わり、この週末はチーム・ハーン・レーシングからトラックを拝借しての参戦としていた。
普段は“レース・バイ・レース”登録でヨッヘンの息子ルーカスがドライブしていた個体をシーズンの残りの期間で走らせることになったレクエンコは、土曜予選から首位と0.6秒差のラップを刻むと、日曜のレース3でも完璧なレース運びでカップ初勝利を達成。この最終ヒートに向けリバースポールを手にした。
その“レンタルトレーラーヘッド”の速さとパフォーマンスを大いに気に入ったスペイン出身ドライバーは、借主のハーンやアルバセテ、新チャンピオンのキスらを抑え切り、そのままクロームドライバーが「わずかしか成し遂げたことのない」こと、つまり総合優勝を果たした。
これでチャンピオンシップの行方が決まった2023年のETRCだが、最終ラウンドとなる第8戦は2週連続開催となり、この週末となる9月30日~10月1日にスペインのハラマで争われる。
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