現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【日本車黄金時代】ニュル8分の壁を破りスーパースポーツの新基準を提示した「1995日産スカイラインGT-R(R33型)」の進化の本質

ここから本文です

【日本車黄金時代】ニュル8分の壁を破りスーパースポーツの新基準を提示した「1995日産スカイラインGT-R(R33型)」の進化の本質

掲載 30
【日本車黄金時代】ニュル8分の壁を破りスーパースポーツの新基準を提示した「1995日産スカイラインGT-R(R33型)」の進化の本質

カタログでは「マイナス21秒ロマン」と記載。実力が大幅アップ!

 「こいつの速さは並じゃない!」。新型GT-Rのステアリングを握っての第一印象がこれだった。そして、試乗を終えた後の印象もまた同じだった。

【時代の証言_日本車黄金時代】1989年日産スカイラインGT-R(R32型)、ニュルブルクリンク・チャレンジの興奮 by岡崎宏司

 「GT-R」のバッジを付けたクルマは、いつの時代でも並外れた速さと強い刺激性を持っていた。GT-Rが、日本車としては珍しい「神話に彩られたネーム」になった理由もそこにある。GT-Rが、新しい性能の基準を創造し、他の高性能車はその基準を追い越そうと努力する……これは日本の高性能車を育ててきたひとつのパターンといっていい。日本の高性能車の歴史のなかでGT-Rが果たした役割は本当に大きなものだ。そして新しいR33型GT-R、とくにVスペックは、再び日本の高性能車の基準を引き上げる役割を担うことは間違いない。

 試乗したのはイメージ色、ミッドナイトパープルのVスペックだ。走りだしてすぐ感じたのは「ずいぶん洗練された」ということだった。先代R32型のような粗削りなところは影をひそめ、街中を流すだけなら普通のクルマと大差はない。

 エンジンは静かに回るし、パワーステアリングも軽い。乗り心地は固いといえば固いのだが、決して粗くはない。あくまでもしっかりとした感触と滑らかな動きに支えられた固さである。不快感を感じることはまったくない。この走り味、乗り味なら毎日の足としても、なんら負担はない。

 ハイウェイに入ると、快適性はさらに印象的になってくる。100km/hは5速ギアで2400rpmだ。このゾーンでのクルージングは静粛そのもの。105km/h(2600rpm)を超えるあたりからエンジン音は心地よいハミングを奏で、高性能車の片鱗を感じさせはじめる。だが100km/h以下のクルージングの静粛性はまるで快適なサルーン並みである。そして舗装の段差を超えるたびに「しっかりしたクルマだなぁ」と感じる。

 ハイウェイクルージングの平穏を見出す唯一の要素はワンダリングだ。轍などでステアリングが取られ、すっと流れる動きには気を使わされる。が、これもある意味では、数少ない「楽しい刺激」といったとらえ方もできる。

 実際、ハイウェイを流れに乗って走るときのドライバーが受ける刺激といえば、時折の追い越しとバックミラーに映り込むリアスポイラーを眺めること、そしてワンダリングに対してうまく「当て舵」を当てることくらいしかない。

ワインディングロードで本領を発揮。素晴らしい走りに感動

 あの高性能車の聖地、ニュルブルクリンク・サーキットで磨き込まれ、8分の壁を切るという素晴らしい仕事をすでに成し遂げているVスペックが、その真価を最高に発揮するのは、やはりワインディングロードだろう。ニュルで8分を切るということは大変な快挙であり、スポーツカーにとっては最高位の勲章だ。R33型GT-Rのオーナーは、高性能とともにその輝かしい勲章も手に入れることができるわけだ。一度でも空いたワインディングロードにVスペックを連れ出し、鞭を当ててみれば、勲章の重みはすぐにわかる。

 しかし、あまりにもあっけなく異次元のスピード域に達してしまうことに戸惑いと、ある種の恐れを抱く人もいるかもしれない。いや、きっといるだろう。ワインディングロードでのVスペックは「とにかく、速い!」。R32型も超一級品の速さを持っていたが、新しいR33型GT-RのVスペックに乗ると明らかに次元の違う速さを体感できる。

 そしてその速さは、肉体的にずっと楽なかたちでもたらされる。全開領域に入っても、音が鼓膜を強く刺激し圧迫することはないし、ステアリングが腕と肩の筋肉に大きな負担をもたらすこともない。操作系で重さを感じるところといえば、全力で踏み込む場合のブレーキ踏力だけである。

 2586ccの排気量から280ps/6800rpm、37.5kgm/4000rpmのパワー/トルクを発揮するRB26DETT型エンジンは従来の改良版。いちばん大きく変わった点は中速域のトルクだ。

 結果的に、R32型より高いギアを使える範囲がずっと広くなった。「どちらかと迷ったら、高いギアを選べばいい」とは日産のエンジニアのコメントだが、そのとおりである。

 新しいRB26DETT型エンジンは、だいたい3500rpmを超えたあたりからぐいぐいと力が盛り上がってくる。このトルクバンドの広さとともに、スロットルのレスポンスのよさも素晴らしい。

 大小のコーナーが連続するワインディングロードを熱く攻めるドライバーが、最も強く求める条件のひとつ――それは幅広い領域でアクセルのオン/オフに対する鋭くリニアなトルクの追従性だ。新しいRB26DETT型は、そこが大きく進化している、走りやすさと速さがともにレベルアップしているということだ。

 カタログ数値上は最大トルクが1.5kgm引き上げられたにすぎないが、実際に走ってみての違いは相当に大きい。この違いはR32型GT-Rをよく知るドライバーほど強くはっきりと感じるはずである。

驚くほどのシャシー完成度。高性能車の新たな基準を構築

 新型GT-Rはエンジンだけでなく、シャシーの完成度も驚くほどのレベルに到達している。速く走るということは、エンジンの力をいかに巧みに無駄なく路面に伝えるかということ、そしてその限界がいかに高いところにあるかということにかかっている。新しいシャシーのレベルは文句なく高い。ニュルで8分を切った殊勲者もシャシーのはずである。

 さまざまな要素をシステムの中に封じ込めたアテーサE-TSプロ、スーパーHICAS、ハイグリップなエクスペディアS-07タイヤ、サスペンション改良とボディ剛性の大幅な引き上げ……。Vスペックのシャシーは、速く走るためのチューニングを確かなかたちで実施している。そのレベルは高度なものであり、高性能車の新たな基準を書き換える域に達した。

 中でもトラクションレベルの高さは印象的だ。これが旧R32型に対していちばん進化した部分かもしれない。それも、あくまでFRが基本という印象のトラクションである点が素晴らしい。パワーの多くは後輪側から路面に伝えられ、前輪はそのぶん、ドライバーの意図した方向を正確にトレースする余裕が増えている。

 R32型は、横剛性にしてもキャンバー剛性にしても、とくに前輪側の能力の余裕度はそれほど大きくはなかった。それがコーナリング限界に枠をはめてしまっていたところがあった。

 R33型にしても天井知らずというわけにはいかないが、前後ともに絶対的能力はレベルアップしている。同時に、前後バランスも引き上げられている。具体的には、コーナー通過速度もコーナーから立ち上がっていく速度も大幅に速くなっているのである。

 何しろちょっとしたストレートさえあれば、あっけないくらい簡単に180km/hに到達する。たとえ、上り勾配であってもだ。新型GT-Rは、ただ「いつの間にか」といった感じで、高次元のスピード領域へと突入する。その速さはこのエンジンが本当に280psしか発生していないのかと、疑問に思うほどだ。

 R33型はドライバーの意識の中のスピードと実際のスピードとの間にはかなりのギャップが生まれがちだ。だから、中高速コーナーが連続し、周囲の景観が開けたような道路では、うっかりするととんでもないスピードが出ていることに気づかずにアクセルを踏み込み続けるといったことも起きやすい。Vスペックのオーナーは「自分は思ったより速く走っているかもしれない」ということをつねに念頭に置いたうえでステアリングを握る必要がある。

 ところで、Vスペックはターンイン部分で少しオーバーステアサイドというか、インに速く切れ込むような動きを見せる傾向にある。手応えの比較的軽いパワーステとオーバーステア方向の速い動きとのコンビネーションは、中高速コーナーをシビアに攻めるような場合には緊張度を高める要素だ。「速さ」にポイントを絞ったとはいえ、市販モデルなら、このあたりはもう少し穏やかな動きの方向に設定した方がいいのではないか。

 それと、タイヤ温度が低いときと十分に上がったときとでは、グリップ力に比較的大きな差が出る点も頭に入れておいたほうがいい。ブレンボ製のブレーキはタフで、ABS作動領域の性能も高い。いつでも安心して踏み込める。

 カタログには「Vスペックは、楽しさを味わい尽くすという点では多分、一般的ドライバーの手に余る……」というコピーが誇らしげに書かれている。確かにそんなキャラクターのクルマである。優れた日常性を持ちながらも、本当の力を引き出すためにはタイトロープの上を平然と渡れるような高度なテクニックと、冷静で繊細な神経が要求されるといった側面をも持つクルマだ。

 R33型が「ハコの量産車ベース」という大きなハンデを背負いながら、ニュルで8分を切る偉大な成果を上げたのは、それほどギリギリまで「速さ」を追求したということにほかならない。なかでもVスペックは「GT-R神話を絶対に守り抜く」という開発スタッフの執念にも似た思いが生み出したクルマといえる。
※CD誌/1995年2月26日号掲載

文:カー・アンド・ドライバー 岡崎宏司
【キャンペーン】お得に給油!第1・3金土日はガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

初代フェアレディZのレトロな丸目顔を完全移植。日産Z33型フェアレディZ
初代フェアレディZのレトロな丸目顔を完全移植。日産Z33型フェアレディZ
Auto Messe Web
新型フェアレディZの「温故知新」ぶりに心が騒ぐ【九島辰也】
新型フェアレディZの「温故知新」ぶりに心が騒ぐ【九島辰也】
グーネット
「プレリュード」「パジェロ」と空前の「名車復活ブーム」到来。相次ぐ「リバイバル」の裏にある自動車メーカーのビジネス事情
「プレリュード」「パジェロ」と空前の「名車復活ブーム」到来。相次ぐ「リバイバル」の裏にある自動車メーカーのビジネス事情
WEB CARTOP
佳き日産らしさが濃厚に復活! 新型エルグランド試乗で溢れ出た「感涙モノ」の仕上がり
佳き日産らしさが濃厚に復活! 新型エルグランド試乗で溢れ出た「感涙モノ」の仕上がり
くるまのニュース
「ツインカム」の響きに胸アツ!! おじさんを熱狂させたクルマ語録
「ツインカム」の響きに胸アツ!! おじさんを熱狂させたクルマ語録
ベストカーWeb
「59年前に登場、欧州基準の走りを目指したハイオーナーカー」 旧プリンス自動車から継承された『G型エンジン』と『流れるウインカー』…、先進技術を纏った高級車【初代・日産ローレル】
「59年前に登場、欧州基準の走りを目指したハイオーナーカー」 旧プリンス自動車から継承された『G型エンジン』と『流れるウインカー』…、先進技術を纏った高級車【初代・日産ローレル】
月刊自家用車WEB
【成功と失敗の舞台裏・名車の商品企画室  No.01】ユーザーの期待に振り回され続けた、迷える〝日本初〞のミッドシップカー『トヨタMR2&MR-S』
【成功と失敗の舞台裏・名車の商品企画室 No.01】ユーザーの期待に振り回され続けた、迷える〝日本初〞のミッドシップカー『トヨタMR2&MR-S』
月刊自家用車WEB
「はっきり言ってオヤジグルマ」日本では失敗作…。地味な存在の初代モデルが、2代目でとんでもない大ヒット作に! そして現代に復活した[ホンダ・プレリュード]の変遷をたどる
「はっきり言ってオヤジグルマ」日本では失敗作…。地味な存在の初代モデルが、2代目でとんでもない大ヒット作に! そして現代に復活した[ホンダ・プレリュード]の変遷をたどる
月刊自家用車WEB
「400Rと肩を並べるマニアックな存在」。松田次生が惚れ込み買い直した限定300台のZ33 380RS
「400Rと肩を並べるマニアックな存在」。松田次生が惚れ込み買い直した限定300台のZ33 380RS
Auto Messe Web
結局クルマは見栄なのか!? 隣人に「お高かったでしょー?」と言われる中古車5選
結局クルマは見栄なのか!? 隣人に「お高かったでしょー?」と言われる中古車5選
ベストカーWeb
三菱のスーパーセダン『ランエボ』ついに復活? 400ps超、PHEVの可能性
三菱のスーパーセダン『ランエボ』ついに復活? 400ps超、PHEVの可能性
レスポンス
テインの純正互換高機能ショック「エンデュラ・プロ・プラス」に日産『スカイライン』(BNR32)用が追加
テインの純正互換高機能ショック「エンデュラ・プロ・プラス」に日産『スカイライン』(BNR32)用が追加
レスポンス
外した純正部品をストックし35年維持するスタイル。1972年式ハコスカGT‐R
外した純正部品をストックし35年維持するスタイル。1972年式ハコスカGT‐R
Auto Messe Web
指定空気圧は“絶対”じゃない! 季節や荷物で変えるべき「タイヤ空気圧」究極の0円チューニング術
指定空気圧は“絶対”じゃない! 季節や荷物で変えるべき「タイヤ空気圧」究極の0円チューニング術
WEB CARTOP
本物のレースパーツでル・マン仕様を再現。クラリオン色のR33スカイラインGT-R
本物のレースパーツでル・マン仕様を再現。クラリオン色のR33スカイラインGT-R
Auto Messe Web
シビックタイプRを追撃した「幻の爆速サニー」。1万回転メーターを積んだ日産サニーVZ-Rがわずか300台のたった2年で消滅したワケ
シビックタイプRを追撃した「幻の爆速サニー」。1万回転メーターを積んだ日産サニーVZ-Rがわずか300台のたった2年で消滅したワケ
WEB CARTOP
昔憧れた快適装備全残しの650馬力仕様。MCRが手掛けたBNR34GT-R【オレたちの”改”顧録】
昔憧れた快適装備全残しの650馬力仕様。MCRが手掛けたBNR34GT-R【オレたちの”改”顧録】
Auto Messe Web
完成された純正デザインを崩さない。R34GT-R用インパル製フロントバンパー
完成された純正デザインを崩さない。R34GT-R用インパル製フロントバンパー
Auto Messe Web

みんなのコメント

30件
  • トヨタ、ホンダ、マツダあらゆるメーカーが広報車チューンをやっていましたよね!

    後に某ビデオマガジンにおいて、NSX-Rの特集をやっていた時も、メーカーのホンダから提供された車は異様に速かった!
  • wat********
    排気量は、2568ccですよ。2586ccじゃないです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

167 . 3万円 234 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 9万円 258 . 0万円

中古車を検索
フォルクスワーゲン アップ!の買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

167 . 3万円 234 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 9万円 258 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村